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5万ヒットお礼の小話を書きました。
『雪の女王』という童話のコンユ版パロ(エロもめざしてますが、最後のさいごです)
よかったら、お読み下さい♪
――雪の王――
にじ色の雪
いたずら好きの悪魔が、面白い鏡を見つけました。
その鏡とは、この世の中のすべてのものを正反対に映してしまう鏡なのです。
綺麗なものは、醜いものに。醜いものはまた、綺麗に。
おもしろいものは、つまらなく。つまらないものは、たいそう面白く。
悪魔は、その鏡を天に持ち帰って、神様にいたずらを謀ろう、と考えていたのです。
けれど彼は、その道中で、うっかり鏡を地上に落としてしまったのです。
*****
「ユーリ! あぶないから部屋に戻って」
「コンラッドお兄ちゃん! でも・・・・・・もう少しまって。もう少しでアンニカに手が届くから」
ログハウスの三角の屋根には、白銀の雪が真綿のように降り積もっている。
そのような足場の悪い傾斜面で、ユーリは必死になって猫を助けようとしている。
その猫は、ここの児童施設で飼われている猫、アンニカだ。窓からうっかり脚を滑らせてしまったらしいアンニカは、すっぽりと雪に包まれて、身を震わせていた。
もちろん、アンニカも心配だが、コンラッドはそれ以上にユーリが心配だ。
身寄りの無い子供たちが、集まって暮らすこの児童施設『トイヴォ』で、コンラッドはユーリを実の弟のように可愛がっていた。
ユーリの黒い髪や瞳は、この施設では浮いていた。そのために、彼は度々その容姿を揶揄されていた。
その度に、コンラッドはユーリを護った。そうすることで、彼自身も稀有な目で見られることになるが、そんなことはどうでもよかった。コンラッドは、ユーリの優しさを知っていたから。
だから、彼が悲しい思いをするのは、耐えられなかった。どうしても、放っておくことができなかった。
けれど今回は、優しすぎるユーリの行動に、肝を冷やす羽目になった。庭で薪を集めていた折に、屋根の上で猫と奮闘するユーリを見つけてしまったのだから。
「だめだよ! ユーリ! アンニカは、僕がたすけるから。だから、ユーリはまどから部屋にもどって!!」
「だって、だって、アンニカが寒くて、こんなにふるえてるんだ! はやくたすけなきゃ――・・・・っあっ!!」
ユーリが、アンニカに勢いよく手を差し出したときだった。ユーリの身体は前のめりになり、頭から雪に突っ伏した。
そのまま、彼の身体は屋根の傾斜に沿って、急激に下降した。
「ユーリっ!!」
「―― !」
コンラッドは、必死だった。必死に、ユーリをその手に受け止めようと、意識を集中した。
けれど、彼もまた少年であった。大人の半分ほどの身体では、どうあがいてもユーリを抱き留めることなど不可能だ。
それでも、ユーリは雪を撒き散らしながら、どんどん屋根の上を滑り落ちてくる。
とうとう、ユーリの身体が宙に浮いた。
屋根から粉雪が舞った。
ユーリの身体が信じられないほどゆっくりと、堕ちてくる。いや、ふわふわと舞いおちてくる。
―― にじ色のゆき?!
粉雪に混じって、なないろの透明な固まりが降ってきた。それは、雪がてのひらの上でとけていくように、ユーリの胸のうえに染み込んでいった。
そのとき、ユーリの身体が、青白い光に包まれた。
気がつくと、コンラッドの小さな腕の中に、いつものユーリが横たわっていた。そして、ユーリの腕の中には、真っ白の猫、アンニカが抱えられていた。
―― 何だかよくわからないけれど、ユーリがたすかった!
コンラッドは、夢中でユーリに声をかけた。
「ユーリ! 大丈夫?!」
「ん・・・・・・」
ユーリは、眉根をよせるとゆっくりと瞳を開いた。
けれど、その第一声は、意外なものだった。
「うわっ、どうして猫なんか。しっ、しっ、あっちいけよ」
ユーリは、コンラッドの腕から抜け出して、心底嫌そうに猫を追い払う。
コンラッドは、そんな彼の行動に、ひどい違和感を覚えた。思わずユーリの肩を掴んでその顔を覗きこむ。
「ユーリ?!」
「なんだよ。僕に気安くさわるな」
ユーリは、肩に掛かったコンラッドの手を払いのけた。
乾いた音が、雪のふりつもる庭に響いた。
*****
「どうして?! ユーリ?!」
「もういやなんだよ。あんなとこにいたくないんだ!!」
「まって! ユーリ!!」
あのにじ色の雪がユーリの胸でとけたときから、ユーリはすっかり別人だった。
心やさしかったユーリの面影はすっかり見られない。
ユーリは、施設内でことごとく、他の子どもたちとぶつかっていた。庇いに来る教師にすら、当り散らした。
そのせいで、ユーリはすっかり施設内で孤立した。
それでも、コンラッドはユーリを嫌いになることができなかった。どんなにひどい態度を取られても、避けられても、ただユーリの側にいたかった。
―― 弟のように可愛がってきたから。ユーリが大切なんだ。
ある日、ユーリは施設を飛び出した。だれひとり、後を追いかける者はいなかった。コンラッドを除いて。
施設の庭からは、深い森が続いていた。わたぼうしをかぶった針葉樹の森の中、どこまでもユーリを追いかけた。
しばらくすると目の前に、開けた大地が飛び込んだ。白銀の大地だった。走り疲れた二人は、雪原の大地に佇んだ。白銀の世界に、二人の白い吐息が混ざる。
コンラッドは、浅い呼吸を繰り替えすユーリを胸に抱きしめた。ユーリの冷え切った身体が、少しでも温まるようにきつく抱きしめた。ユーリの柔らかい黒髪が頬をくすぐった。
「僕が、そばにいるから。ユーリはいつだって、ひとりじゃないんだよ」
「そんなこといって、コンラッドだって本当は、僕の髪や目が黒いの、きもちわるいくせにっ」
ユーリは、コンラッドを突き放すと、凍りつくような眼差しで彼を見上げた。
長く濡れた睫毛に縁取られる、アーモンド形の漆黒の瞳。
とてもきれい。けれど、ゾクっとするほど冷たい瞳。
刹那、心臓に鋭い痛みが走り、身体が動かなくなった。話せなくなった。
―― ユーリの黒い髪も瞳も、とてもきれいで、だいすきだよ。
そういいたいのに! どうして? 舌が凍ってしまったみたい。ひとことだって、話せない―― !!
そのとき、深い森の中から、軽快な鈴の音と雪原を走るソリの音がした。
それは、とてもきれいな二頭の白馬がひくソリだった。
優雅なたてがみを振り乱して、白馬が地面を蹴りつけるたびに、粉雪が舞い上がる。そのつど、やわらかな陽射しが反射して銀や金の欠片が散った。
ソリは、二人の前で立ち止まる。ソリを操る人物は、逆光でよく見えなかった。
未だに、コンラッドは身体の自由が利かない。
ソリの上から、降り立ったのは、青年というには少し早い、華奢な美少年だった。
腰までの長いプラチナブロンドが、雪原の大地をきらびやかに飾り立てる。髪と同じ色の瞳には、同じく金色の睫毛が長く縁取っている。皮膚は、白磁のように滑らかで白い。けれど、ゾッとするほどに白い。
人間離れしたその容姿に、コンラッドの背中に冷や汗が伝う。
「はじめまして、ユーリ。私は遠い遠い、雪の国の王サラと申します。貴方の黒い瞳は、心臓を抉るように鋭くて、うつくしい」
くすぐられるように甘くてやさしい声だった。サラと名乗る美少年は、まるでコンラッドなどいないかのように、ユーリにだけ語りかける。サラは、白く細い指でそっとユーリの頬を撫でる。
ユーリを、あいつからはなしたいのに、からだが動かない――。
コンラッドは、ただ二人の様子を隣でみつめることしかできなかった。
じっと黙っていたユーリが口を開いた。
「ほんとうに? ぼくの黒い目が、きれいっておもうの?」
「えぇ、とてもきれいです。私の国に、一緒に来ていただけませんか?」
サラは、そのきれいな顔に人のいい笑みを浮かべた。けれど、コンラッドは見逃さなかった。その瞳が、金色から眼が覚めるようなサファイヤブルーに輝いたのを。
―― 今の眼・・・・・・、魔術使いの目だ。ユーリ!! 目をみちゃだめだ・・・・・・!!
いくら叫んでも、それは音にはならない。
サラが、ゆっくりと手を差し伸べると、ユーリは小さな手で、そっとその手を握り締めた。
そのときだった。
たちまち、視界が真っ白になった。
とつぜん、はげしい季節風が吹き荒れた。
足元の雪は、意識をもっているかのように、コンラッドに襲い掛かった。遠くに鈴の音が聞こえた。その音は、どんどん遠ざかっていき、しだいに聞こえなくなった。
もとの穏やかな雪原があらわれたとき、そこにはユーリもサラもいなかった。
そのころには、ようやくコンラッドの身体が自由になった。
大粒の涙があふれでて、雪原に小さな染みがいくつも広がった。
「ユーリ! 必ず、助けにいくから」
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