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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2011/10/24 (Mon)                  それなんてだいえっと? (3)

「どうしたんですか、二人とも。顔が赤いですよ」

 コンラッドは、相変わらず、涼しげで二枚目な笑顔だった。動揺する二人をよそに、テーブルにユーリ用の茶器を置き、ポットからつやつやとした褐色の紅茶を注ぐ。ため息が出るくらい、そつのない動作だ。そんな優雅な動作の脇で、おれとヴォルフラムは、置物みたいにじっとしていた。

「どうぞ、陛下はまだでしょう? 冷めないうちにお召し上がりくださいね」

 ゆるりと再びテーブルから、ソーサーとティーカップを取り上げると、コンラッドはにこやかに、こちらへと差し出す。余裕が無くて、『陛下って呼ぶな』なんていちいち訂正していられない。

「いや、実はもう飲んだって言うか、鼻から吸引したっていうか……」

「あぁ、ヴォルフラムの紅茶を一緒に飲んだのですね」

「あ、えっ? つっこみ所はそこ? 『鼻から』のくだりは、いいのか? て、いやっ、まぁ、そのそれは、なな、何でもないし、寧ろ突っ込まれたくないしっ」

「ばっ、ばかユーリっ! 余計なことをいうと、コンラートに質問攻めの刑にされるぞ! 僕は、ふおっ、フォンビーレフェルト領に用を思い出した。ちょっと、出かけてくるっ!!」

 紅茶の話で、思わず墓穴を掘りそうになったおれに、ヴォルフラムは顔中を真っ赤にすると、部屋から飛び出していった。

「ヴぉ、ヴォルフ、ビーレフェルト領って、それって、じ、実家じゃん?! 実家に帰らせていただきます! 的な宣言か?」

 照れ隠しも甚だしい、わけのわからない台詞をいうしかなかった。
 けれど、コンラッドはおれの隣にゆっくりと腰を下ろすと、いつもの笑顔で見つめてくる。

「へぇ、そんな台詞をあなたが仰るなんて思いませんでした。少し、意外ですね」

「へっ? お、おれ、そんなすごいこと言った? コンラッド?」

 コンラッドの声が少し沈んで聞こえて、茶色い瞳を覗きこんでしまう。相変わらず、銀色の虹彩がきらきらしていたりする。

「あなたはいつも、ヴォルフラムの婚約者であることを否定するのに、あのような台詞を仰るから。ヴォルフラムの旦那様のようにみえましたよ」

 言われてから、頭の中がすこーんっと真っ白になる。
 その次には、弾丸のごとく言い訳が飛び出した。

「ありえない、ありえないってーっ。あれは、あれは、もうほんっとそんな深い意味で言ってないし。ていうか、あぁ、そうか。コンラッド、おれのことを、からかってるんだろ? 絶対そうだろーっ。普通あんな台詞から、そんな飛躍的な解釈できないだろっ?」

「いいえ、からかってはいませんよ。私も、どうかしていました。失言だから、どうか気にしないで」

「え、あぁ……うん」

 何かがおかしい。普段は、何でもそつなくこなすし、いつも爽やかな彼から少し違和感がする。なんだか歯切れが悪いっていうか……。

 そうだっ、そうだった!! おれは、アニシナさんのおかしなダイエット薬で、世界中の男達から惚れまくるありがたーい(棒読み)運命にいるんだった。
 ていうことは、今、間違いなくコンラッドも俺のことが好きになってる?!
 
 そう思うと、途端に動悸が激しくなってきた。

 グウェンダルやヴォルフラムでさえ、あんなに甘く誘惑してきたんだから、上級者のコンラッドだったらどんなことになるのか……。
 喉が、からからに渇いていく。

「あ、あのさ……コンラッド、おれ…おれのこと、好き?」
 
 ん? あ、あれ?
 緊張しすぎたおれは、なんかとんでもないことを言った気がする。

 耳が痛いくらいに、熱をもって、顔中が火照って熱い。

「ぐぁぁっ…!! 今のなしーっ、なしの方向でおねがいしますっ…! あの全部アニシナさんの薬のせいっていうかっ。おれ、今絶賛、男にもてもて中なんだよ。びっくりな男限定のモテキなんだって! だからさっ、そのそのそのっ…おかしなこと聞いたのは、コンラッドもアニシナ薬に毒されてるのかなぁって思って聞いた次第ですっ…!!」

「そういうわけだったんですね。どうりで……いつにも増して可愛らしいと思いました」

「へっ……、可愛くない、可愛くないって……ん、えっ、コンラッドっ……?」

 恥ずかしい台詞に、あさっての方向を向いてしまう。動揺しながらもなんとか言い返していると、視界が暗くなっていた。暖かな手の感触が、腰にあった。
 気がつくと、ごくごく自然に腰なんかを抱き寄せられながら、優しく顔を覗きこまれていた。

「ユーリ、すみません。薬に毒されているみたいです。それも、ひどく、手遅れみたいです」

「な、なに言って……っ!」

 いつにも増して甘いトーンの穏やかな声に、耳がゾクゾクと痺れてしまう。もとよりスキンシップの多い彼だが、アニシナ薬のせいか、恋人並に密着してくる。同じ男として、コンプレックスを抱いてしまうほどの大きな手に、左から優しく引き寄せられていた。隣に座っているだけなのに、こんなに顔を覗きこめるだけの体格差にも、妙に困惑してしまう。
 そのうえ、見つめてくる薄茶色の綺麗な瞳は、見たこともないくらい熱を帯びて甘い。

「ユーリ……大好きです。あなたのことが、とても愛おしいです」

「ななな、こ、コンラッド……っ、そっ、それそれ、アニシナ薬の錯覚だからっ、も、もうおれっ、やっぱり、迎賓館に立て篭(こ)もることにするっ……っ!」
 
 いや、立て篭もっちゃだめだけど……。
 今まで言われたこともない、甘くて切ない台詞にどう対処していいかわからない。反射的に、この状況から抜け出そうと、ソファを立ち上がった。

 けれど、コンラッドも素早く立ち上がると、おれを長い腕の中に閉じ込めてしまった。

「行かないで、ユーリ。いえ、行かせたくありません。だって、皆ユーリを見たら、好きになってしまうのでしょう? そんな状態で、あなたを一人にはしたくありません……俺だって、あなたが好きなんですよ?」

 コンラッドは、一呼吸を置くと、そっと耳元に唇を寄せ、ため息混じりに囁いた。掠れる様な甘い吐息に、背筋が痺れてしまう。

「貴方にこんなに惚れてしまうのは、俺だけがいい」
 
 きつく抱きしめた腕を緩めると、上から蕩けそうな顔で見つめてくる。左手を腰に滑らせ、右手を甘く、おれの頬に添えてくる。

「俺を、あなたの恋人にしてくれませんか?」

「こ、コンラッドっ……!! お、落ち着いてって……! 全部、アニシナさんの薬の錯覚、錯覚だよ? 口説く相手が間違ってるってーっ!」

「茶化さないで、ユーリ。俺が、あなたの恋人になるのは迷惑ですか?」

 上擦った声の言い訳なんて、すぐに遮られてしまう。透き通るような薄茶の瞳が、息もつけなくなるくらいに見つめてくる。頬に添えられた手が、くすぐったい。その手を時折動かしては、耳の後ろの髪に指を絡めてくる。
 
「め、迷惑とかそんなこと言うなよな。で、でもさっ、だから何度も言うけど、アニシナさんの薬のせいでおれがよく見えちゃってるだけなんだって……」

 真剣に見つめてくる眼差しに、思わず言葉が詰まってしまう。たまらずに、瞳を逸らしてしまった。
 すると、コンラッドがゆっくりと俺を腕の中から解放した。暖かかった熱が消えて、所在なさげに、困ったような顔で彼を見上げた。

「ユーリ、少し喉が渇いたでしょう。紅茶……要りますか?」

 コンラッドは、テーブルからカップを取り上げると、優しく微笑んできた。

「え、あ、あぁ、うん。ありがとう、コンラッド……えっ…ン……っ?!」

 いつもみたいに爽やかに微笑まれるから、つられて微笑み返しただけの筈……なのに。
 唇には柔らかくて暖かい感触がした。
 そして、鼻腔には、爽やかで魅惑的なアールグレイの香りが広がった。口内に侵入してきた、湿った舌の感触に、ドキリ……と身を竦(すく)ませると、紅茶が少しづつ、喉奥に流れていった。
 脳裏では、カップから紅茶を口に含むコンラッドの姿が過(よ)ぎった。

 ―― おれ、コンラッドに紅茶を口移しされてる……?

 あまりのことに、されるがままになっていた。コクンコクン……と何度か小さな音を立てて、紅茶を嚥下(えんげ)し終えると、唇が離された。

「すみません、あなたを見ていたら抑えられなくて。けれど……」

 呆然とするおれに、コンラッドは言葉を濁し、躊躇いがちに続ける。

「ヴォルフラムと様子がおかしかったから、気になっていたんです。彼と、キスしていたんじゃないかって嫉妬していたら……すみません」

「えっ、ヴォルフとは、キ、キスはしてないですっ! そ、そりゃ、その……キスされそうにはなったん……っ!」 

 言い終わる前に、おれはまたコンラッドの腕の中で、ぎゅうぎゅうに抱きしめられていた。

「だから……っ、だから、こんなときにあなたを一人になんてしたくないんです。恋人でなくてもいいです。せめて、アニシナの薬が切れるまででいい。俺とだけ、居てください」

 甘くて蕩けそうな声なのに、少し震えていることに、どうしようもなく惹きつけられた。おれなんかに、拒否されることを、そんなに脅えているんだろうか。そんなに、おれを必要としてくれているなんて。
 
「分かった……暫くの間、あんたとだけいるよ。だから、そんなに心配するなよな」

 照れくさくて、ぶっきらぼうに言うけれど、心がぽかぽかと温かくなってくる。

「ありがとう、ユーリ。あなたのことを、誰よりも大切にしますね」

「いやいやっ、それはプロポーズだって。も、もう、調子狂うなぁ」

 おれは、顔から火が出そうな勢いで、うな垂れる。けれど、そんなおれに、畳み掛けるようにコンラッドは、甘く囁いてくる。

「すべて……あなたのお世話、させて下さいね。この部屋から出られないと、不便ですよね……だから、全て私に任せてくださいね。お食事は運びますし、王室は幸い湯殿が併設されていますし」

「そ、それって監禁っていうんじゃ」

「いいえ、しいて言うなら軟禁ですね。けれど、ユーリの気持ちが一番大切ですから。最終的には、あなたが、俺といるか、ここから出て行くかを選んで下さいね。」

 少し悲しそうに微笑む横顔に、胸が痛んだ。

「ば、ばかっ。何度もいわせるなよな……ずっと、あんたのそばにいるから」

「本当に、ユーリは……無防備だから。こんなときに、そんな台詞を聞いたら、冷静でいられなくなるのに」

 コンラッドは、小さく息を吐くと、覗き込むようにおれを見つめてきた。薄くて端整な唇が、甘くゆっくりと動いた。

「ユーリ、もう一度、キスしてもいい?」

 返事を待たずに、コンラッドは再び甘く唇を重ねてきた。


 ただ、側にいるだけ……なんて状況が守られる筈がない。どこかで分かっていたのに。なにせ、アニシナさんの薬は強力だし。
 それでも、側にいるって言えたのは、やっぱりコンラッドだから。コンラッドのことが、好きだから。


 それが、どういう意味合いの『好き』かは、恋愛経験の少ないおれには、まだよく説明できないけれど。

 


★あとがき★

これ、続くのかな?
というか、こんなんで国は護られるのか? とんだ色ボケな国にしてごめんなさいぃ。そういうサイトなんです^^;うふふ。

でも、みんなユーリに惚れてる状態で、どうやって部屋に二人でいられるんだろう??

なんだか、もう甘甘にしようとしてたら、次男が危ない感じになって別人;;病んデレの領域に、足を踏み入れた気さえします。
かなりお腹いぱいですーっ。糖分かなり高めにしてみました。少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

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