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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2024/09/21 (Sat)                  [PR]
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2009/10/01 (Thu)                  5万ヒットありがとうございます^^

いつも、拍手ありがとうございます!!遊びに来てくださってありがとうございます!!励まされます^^

5万ヒットお礼の小話を書きました。
『雪の女王』という童話のコンユ版パロ(エロもめざしてますが、最後のさいごです)
よかったら、お読み下さい♪


――雪の王――


  にじ色の雪



いたずら好きの悪魔が、面白い鏡を見つけました。

 その鏡とは、この世の中のすべてのものを正反対に映してしまう鏡なのです。
 綺麗なものは、醜いものに。醜いものはまた、綺麗に。
 おもしろいものは、つまらなく。つまらないものは、たいそう面白く。

 悪魔は、その鏡を天に持ち帰って、神様にいたずらを謀ろう、と考えていたのです。

 けれど彼は、その道中で、うっかり鏡を地上に落としてしまったのです。


*****


「ユーリ! あぶないから部屋に戻って」

「コンラッドお兄ちゃん! でも・・・・・・もう少しまって。もう少しでアンニカに手が届くから」

 ログハウスの三角の屋根には、白銀の雪が真綿のように降り積もっている。

 そのような足場の悪い傾斜面で、ユーリは必死になって猫を助けようとしている。 
 その猫は、ここの児童施設で飼われている猫、アンニカだ。窓からうっかり脚を滑らせてしまったらしいアンニカは、すっぽりと雪に包まれて、身を震わせていた。

 もちろん、アンニカも心配だが、コンラッドはそれ以上にユーリが心配だ。

 身寄りの無い子供たちが、集まって暮らすこの児童施設『トイヴォ』で、コンラッドはユーリを実の弟のように可愛がっていた。

 ユーリの黒い髪や瞳は、この施設では浮いていた。そのために、彼は度々その容姿を揶揄されていた。

 その度に、コンラッドはユーリを護った。そうすることで、彼自身も稀有な目で見られることになるが、そんなことはどうでもよかった。コンラッドは、ユーリの優しさを知っていたから。
 だから、彼が悲しい思いをするのは、耐えられなかった。どうしても、放っておくことができなかった。

 けれど今回は、優しすぎるユーリの行動に、肝を冷やす羽目になった。庭で薪を集めていた折に、屋根の上で猫と奮闘するユーリを見つけてしまったのだから。

「だめだよ! ユーリ! アンニカは、僕がたすけるから。だから、ユーリはまどから部屋にもどって!!」

「だって、だって、アンニカが寒くて、こんなにふるえてるんだ! はやくたすけなきゃ――・・・・っあっ!!」

 ユーリが、アンニカに勢いよく手を差し出したときだった。ユーリの身体は前のめりになり、頭から雪に突っ伏した。
  そのまま、彼の身体は屋根の傾斜に沿って、急激に下降した。

「ユーリっ!!」
「―― !」

 コンラッドは、必死だった。必死に、ユーリをその手に受け止めようと、意識を集中した。

   けれど、彼もまた少年であった。大人の半分ほどの身体では、どうあがいてもユーリを抱き留めることなど不可能だ。

 それでも、ユーリは雪を撒き散らしながら、どんどん屋根の上を滑り落ちてくる。

 とうとう、ユーリの身体が宙に浮いた。
 屋根から粉雪が舞った。
 
 ユーリの身体が信じられないほどゆっくりと、堕ちてくる。いや、ふわふわと舞いおちてくる。
 
 ―― にじ色のゆき?!

 粉雪に混じって、なないろの透明な固まりが降ってきた。それは、雪がてのひらの上でとけていくように、ユーリの胸のうえに染み込んでいった。

 そのとき、ユーリの身体が、青白い光に包まれた。

 気がつくと、コンラッドの小さな腕の中に、いつものユーリが横たわっていた。そして、ユーリの腕の中には、真っ白の猫、アンニカが抱えられていた。

 ―― 何だかよくわからないけれど、ユーリがたすかった!

 コンラッドは、夢中でユーリに声をかけた。

「ユーリ! 大丈夫?!」
「ん・・・・・・」

 ユーリは、眉根をよせるとゆっくりと瞳を開いた。
 けれど、その第一声は、意外なものだった。

「うわっ、どうして猫なんか。しっ、しっ、あっちいけよ」

 ユーリは、コンラッドの腕から抜け出して、心底嫌そうに猫を追い払う。

 コンラッドは、そんな彼の行動に、ひどい違和感を覚えた。思わずユーリの肩を掴んでその顔を覗きこむ。

「ユーリ?!」

「なんだよ。僕に気安くさわるな」

 ユーリは、肩に掛かったコンラッドの手を払いのけた。
 乾いた音が、雪のふりつもる庭に響いた。

 

*****


「どうして?! ユーリ?!」

「もういやなんだよ。あんなとこにいたくないんだ!!」

「まって! ユーリ!!」

 あのにじ色の雪がユーリの胸でとけたときから、ユーリはすっかり別人だった。

 心やさしかったユーリの面影はすっかり見られない。
 ユーリは、施設内でことごとく、他の子どもたちとぶつかっていた。庇いに来る教師にすら、当り散らした。
 そのせいで、ユーリはすっかり施設内で孤立した。 

 それでも、コンラッドはユーリを嫌いになることができなかった。どんなにひどい態度を取られても、避けられても、ただユーリの側にいたかった。

 ―― 弟のように可愛がってきたから。ユーリが大切なんだ。


 ある日、ユーリは施設を飛び出した。だれひとり、後を追いかける者はいなかった。コンラッドを除いて。

 施設の庭からは、深い森が続いていた。わたぼうしをかぶった針葉樹の森の中、どこまでもユーリを追いかけた。

  しばらくすると目の前に、開けた大地が飛び込んだ。白銀の大地だった。走り疲れた二人は、雪原の大地に佇んだ。白銀の世界に、二人の白い吐息が混ざる。
 
 コンラッドは、浅い呼吸を繰り替えすユーリを胸に抱きしめた。ユーリの冷え切った身体が、少しでも温まるようにきつく抱きしめた。ユーリの柔らかい黒髪が頬をくすぐった。

「僕が、そばにいるから。ユーリはいつだって、ひとりじゃないんだよ」

「そんなこといって、コンラッドだって本当は、僕の髪や目が黒いの、きもちわるいくせにっ」

 ユーリは、コンラッドを突き放すと、凍りつくような眼差しで彼を見上げた。
 長く濡れた睫毛に縁取られる、アーモンド形の漆黒の瞳。

 とてもきれい。けれど、ゾクっとするほど冷たい瞳。

 刹那、心臓に鋭い痛みが走り、身体が動かなくなった。話せなくなった。

 ―― ユーリの黒い髪も瞳も、とてもきれいで、だいすきだよ。

 そういいたいのに! どうして? 舌が凍ってしまったみたい。ひとことだって、話せない―― !!

 そのとき、深い森の中から、軽快な鈴の音と雪原を走るソリの音がした。

 それは、とてもきれいな二頭の白馬がひくソリだった。

 優雅なたてがみを振り乱して、白馬が地面を蹴りつけるたびに、粉雪が舞い上がる。そのつど、やわらかな陽射しが反射して銀や金の欠片が散った。

 ソリは、二人の前で立ち止まる。ソリを操る人物は、逆光でよく見えなかった。

 未だに、コンラッドは身体の自由が利かない。
 
 ソリの上から、降り立ったのは、青年というには少し早い、華奢な美少年だった。

 腰までの長いプラチナブロンドが、雪原の大地をきらびやかに飾り立てる。髪と同じ色の瞳には、同じく金色の睫毛が長く縁取っている。皮膚は、白磁のように滑らかで白い。けれど、ゾッとするほどに白い。
 
 人間離れしたその容姿に、コンラッドの背中に冷や汗が伝う。

「はじめまして、ユーリ。私は遠い遠い、雪の国の王サラと申します。貴方の黒い瞳は、心臓を抉るように鋭くて、うつくしい」

 くすぐられるように甘くてやさしい声だった。サラと名乗る美少年は、まるでコンラッドなどいないかのように、ユーリにだけ語りかける。サラは、白く細い指でそっとユーリの頬を撫でる。

 ユーリを、あいつからはなしたいのに、からだが動かない――。
 コンラッドは、ただ二人の様子を隣でみつめることしかできなかった。

 じっと黙っていたユーリが口を開いた。

「ほんとうに? ぼくの黒い目が、きれいっておもうの?」

「えぇ、とてもきれいです。私の国に、一緒に来ていただけませんか?」

 サラは、そのきれいな顔に人のいい笑みを浮かべた。けれど、コンラッドは見逃さなかった。その瞳が、金色から眼が覚めるようなサファイヤブルーに輝いたのを。

 ―― 今の眼・・・・・・、魔術使いの目だ。ユーリ!! 目をみちゃだめだ・・・・・・!!

 いくら叫んでも、それは音にはならない。
 
 サラが、ゆっくりと手を差し伸べると、ユーリは小さな手で、そっとその手を握り締めた。

 そのときだった。

 たちまち、視界が真っ白になった。
 とつぜん、はげしい季節風が吹き荒れた。
 足元の雪は、意識をもっているかのように、コンラッドに襲い掛かった。遠くに鈴の音が聞こえた。その音は、どんどん遠ざかっていき、しだいに聞こえなくなった。


 もとの穏やかな雪原があらわれたとき、そこにはユーリもサラもいなかった。

 そのころには、ようやくコンラッドの身体が自由になった。

 大粒の涙があふれでて、雪原に小さな染みがいくつも広がった。

「ユーリ! 必ず、助けにいくから」

 

happy-yuuri.gif ←★続く(画像をクリックで次へ)

 

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