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第四話 花火鑑賞
※またしても、二人で花火デートですvコンユv
表も、かなり危険になりました。表R15。途中から、裏に続きます。
「ゆうちゃ~~ん、また勉強か?それにしても、また英語の勉強か?」
俺の部屋で、しつこく絡んでくる兄の勝利。彼は、背後から長い腕を回して、椅子に座る俺に抱きついてくる。同じ遺伝子を受け継いでいるはずなのに、この腕の長さの違いは何だよ。
「だぁ~~、暑っ苦しいんだよ、兄貴は!」
肩の上から巻きついてくるうっとおしい腕を、振り払う。
「兄貴というな、お兄ちゃんと呼びなさい。それより、ゆーちゃん。英語の勉強ばかりして・・・・・・ま、まさか、英語の教師に惚れてるとかそういうオチじゃないだろうな?!こないだも、随分と帰ってくるのが遅かったじゃないか?」
ぎくっ。何で、こういうところが鋭いんだよ、勝利の奴。ギャルゲーの成果か?
まぁ、正確には、コンラッド先生とは、恋人ごっこしてるだけなんだけど。
「うるっさいよ、あ・に・き!もう、出てけよ!」
それでも、俺の貞操の危機がどうのとか、ツンデレなゆーちゃんもいい(なんだよ、その専門用語。ってか、俺が兄貴にいつデレてるよ?)とか喚き続ける兄貴の背中をぐいぐい押して、ドアを閉めた。
「ドア開けたら、絶交だからな!」
ドア越しに、留めの一言を叫んだ。
タイミングよく、小気味のよい着信音が流れた。毎度おなじみ勧善懲悪の番組『水戸黄門』の主題歌だ。
急いで、携帯の受話ボタンを押した。
「ユーリ、今電話してもよかったですか?」
相変わらず、品のよい甘い声が受話口から響く。なんか、さっきまでの慌しさが、嘘みたいだ。
「うん!全然、大丈夫!すごくいいタイミングだった!」
自然と笑みが零れてしまう。
「そうですか、少し息が上がっているみたいですが?」
「うん!へーき。兄貴がおかしなことばっかり言うからさ。貞操・・・・、いや、なんでもない」
貞操の危機だ、なんて兄に言われてたことを、先生にはとても言えない。だって、先生は、俺の学習意欲をあげるために恋人ごっこしてくれてるだけなんだしさ。
こ、こないだのエッチっぽいことだって、先生は乗り気じゃなかった筈だから。
「ユーリ?」
先生の訝しげな声が響く。
だめだ、俺、コンラッド先生を心配させてるぞ。ここは、明るく恋人ごっこ続行だよな?
「ねぇ、先生。明日の夜、花火大会だよね。塾が終わってから一緒に行きたいな?駄目?」
「もちろん、いいですよ、ユーリ」
甘くて蕩けてしまいそうな声が、即座に響いた。
「ありがとう!コンラッド先生!」
「俺も、明日の花火大会にユーリを誘うつもりでした。気が合いますね、ユーリ」
携帯の向こうで、先生が眼を細めて微笑する絵が浮かんだ。相変わらず、美形で爽やか~。暑苦しい勝利と大違い。
というか、俺、何でこんなに鮮明に先生を想像してるんだろう。
少し、胸が痛んだ。先生の甘い声も、爽やかな笑顔も、演技なんだと思うと――。
******
窓から橙色の陽射しが差し込む、黄昏時。夏の日照時間は長い。もう6時だというのに、太陽が地平線に隠れるのを躊躇っている。
空調のよく効いた、殺風景な塾の教室。
けれど、コンラッド先生の上品な声が教室に響くと、にわかに場が華やぐ。
ただし、寒いギャグをいうのが玉にキズなんだけど・・・・・・。
「fix the date for departureは、『出発を決める』という意味だ。だが、この場合のdateは、『日付』という意味だからな。dateだが『デート』とは違うぞ、あははは」
誰だ?教室の空調の温度を下げた奴は?いや、おまけにそれ、音声だと全く持って意味不明になるから。
ってわけで、教室に寒い空気が流れたけど、大丈夫、頑張って!コンラッド先生!
俺は、味方だよっ。
けれど、美形の先生の口からデートという単語がでて、質問をするツワモノの女子がいた。
「先生は、今日の花火大会は誰かと行くんですか?」
女子達の熱い視線が先生にロックオンした。よ、よかったね。先生、みんな、ギャグのことは忘れてくれたよ!
なんて、次の瞬間には、先生のことを心配している場合じゃなくなった。
「花火大会ですか。行きますよ。とても大切な人と、ね」
教室ではめったに聞けない、電話で話すときみたいな甘ったるい声で、先生は言った。おまけに、俺のほうを見て、俺にだけ分かるくらいに、微かにダークブラウンの片目を瞑った。
にわかに先生の甘い声に失神寸前の女子達の黄色い溜息がこぼれた。俺も、思わずその仲間に入りかけたよ。だって、ウィンクなんてされたことないし。さすが、アメリカ人。
すっげ~照れる。
けれど黄色い溜息の後、クラスの女子達は、コンラッド先生に特定の相手がいると知って、皆ショックを受けていた。
い、いや、その特定の相手って俺だから。なんか、根本的に間違ってる気がする。
こんなモテモテの外国人教師が俺みたいな普通の高校生男子と恋人ごっこしてる時点で。
終業音を告げるチャイムが鳴ると、相変わらず先生の周りには、生徒で人垣が出来る。心なしか、『今日の花火大会は誰と行くんですか?』なんてヒステリックな声が紛れてる気がするけど・・・・・・。
隣の席から声を掛けられた。今日は、セーラー服を着たジュリアさんだった。今日は登校日だったのか、学校指定の制服を着た彼女は一段と清楚だった。深緑を基調としたセーラー服は、カラーの部分だけ白かった。綺麗にアイロンを掛けられたプリーツスカートは、膝丈までの上品な長さだった。
スカートが長めでも、野暮ったくみえないどころか、お嬢様感満載といった感じだ。
って、俺は何見てんだよ。
「お先に失礼するわね、渋谷君。ごきげんよう」
気のせいか、彼女に覇気が無い。胸元の濃紺色のリボンが泣いているみたいな気がした。
「ジュリアさん?どうしたの?何かあった?」
「えっ?・・・・・・優しいのね、渋谷君は。なんでもないわ。さようなら」
彼女は一瞬、酷く驚いた顔をして、瞳を揺らした。けれど、すぐに瞳を優しく細めて儚く微笑んだ。
大人びた彼女の仕草に、それ以上なにも追及できなくなってしまった。
やっぱり、彼女もコンラッド先生のことが好きだから、さっきの彼の発言がショックだったのかな。
だけど、先生と俺はただ恋人ごっこしてるだけなんだけどな。
複雑な気持ちになった。
先生のことを大好きな子がたくさんいるのに、よりによって男の俺が、先生と恋人の振りしてていいのかな?
罪悪感のようなものが、心に芽生えて、俺の心に影を落とした。
「ユーリ」
いつもの本屋で、先生を待っていると、背後から甘い声と共に、抱きつかれた。
不意打ちな甘い動作に、俺の心にあったもやもやが、思いがけず消えてしまう。
一回り大きくて、長身の身体に抱きしめられる。相変わらず、先生の清涼感のあるフレグランスの香りが嫌味なく、漂う。
それにしても、やっぱり、先生はボディータッチが多い気がする。欧米か?!じゃなかった。実際、アメリカ人だもんな。
「大急ぎで、事務作業を片付けてきました。さぁ、行きましょう。ユーリ?」
「ありがとう!先生!」
いつでも、先生は優しい。
人ごみだらけのお祭りに、わざわざ仕事を早く片付けて連れて行ってくれるんだから。それも、これも、俺が赤点なんか取ったからデス。恋人の振りしてくれてありがとう、先生。
優しく微笑む先生につられて、自然とにっこり笑ってしまう。心の中が、じわっと暖かくなる。
咄嗟にコンラッド先生に、手を掴まれて、そっと恋人つなぎをされる。俺が恥ずかしがって、拒否する間も与えぬほどに、そのまま、颯爽と通りへ出る。こんな、塾の側で手を繋ぐなんて――。誰かに見つかったらどうするんだよ、ただでさえ男同士なのに。
けれど、先生の冷たくて、俺よりも長い指にドキッとしてしまう。しっかりと握り締められる安心感に、嬉しくなってしまう。そして、唐突で大胆な行動に、心が揺さぶられる。
いつもどおり、お洒落なスポーツカーに、二人で乗り込む。他愛も無い会話を楽しんでいると、腹の底に響く花火の音が近くに聴こえてきた。殊更に心が浮き立つ。
大渋滞を起こしている、お祭り会場付近の駐車場にようやく車を止める。
俺は、大急ぎで車から降りる。
盛大な花火が紫紺の空を金や銀、おまけに赤や青に輝かす。少し遅れて、花火の散った派手な音が、後を引く残響音を伴って聴こえる。全身に轟く音。
今、お祭りに来てるんだ、という喜びが湧き上がる。
けれど、色気より食い気の俺は、先生の手を引っ張って屋台に駆け込む。
「ユーリ、そんなに急いでも、屋台は逃げていきませんよ。可愛いですけど」
頭上から先生の柔らかい笑い声が、心地よく聞こえてくる。可愛いっていうのは余分だけど。
「ああ~、どれもこれも旨そう!いっぱい買っていい?」
眼をキラキラさせて先生を見上げる。
瞳を丸くさせて、気のせいか頬を朱に染める先生。けれど、すぐに余裕たっぷりの大人の顔で微笑まれる。細められた瞳が、花火の光で金褐色に染まっていた。
「ええ、もちろんです」
10分後、数々の戦利品を手に入れた俺は、先生と一緒に河川敷に腰を下ろした。
しっとりとした涼やかな川風が、優しく頬を撫でる。
僅かな月明かりと、花火以外は完全な暗闇だったので、座るまでに苦労した。それでも、先生が優しく誘導してくれたから俺は大分と楽だったんだけど。
おまけに、先生はご丁寧にも俺の座るところにハンカチを敷いてくれた。な、なんてレディーファースト。さすが、欧米、もとい、米。ってか、俺、レディーじゃないけど。
闇に包まれた所為で、周りにたくさん人はいるものの、お互いの顔は全く見えない。隣に座る先生の顔は辛うじてみえた。相変わらず美形ってことはよくわかる。
俺は、手元の食べ物を見つめて、にっこり笑う。
俺の戦利品―― 焼きそば、たこ焼き、フランクフルト、クレープだ。すばらしい!えっと、えくせれんと、だったかな?
月明かりと花火を頼りに、戦利品にがっつく。
先生も、アメリカ人の癖に違和感無く割り箸を使って焼きそばを食べている。いや、俺より箸の使い方が綺麗だ。こんな河川敷で、屋台の焼きそばを食べているだけなのに、絵になる。凛とした佇まい、背筋がびしっと伸びている。先生が箸を使うそのさまは、由緒正しい家元のご子息みたいだ。アメリカ人だけど。
日本語も流暢だし、親戚に日本人でもいるのかな?恋人ごっこしてる割に、俺って案外先生のこと何も知らないよな。
少し、切ない気分になった。
けれど、頭上で花開く光の輪に心を奪われて、そんな気分など吹き飛んでしまう。
勢いで、クレープにかじりついた。
隣で、先生がくすくす笑う声が聞こえた。
「ユーリ、いきなりデザートから食べるんですか?」
「はっへ、ふぁいすふぁとふぇふゃふひ(だって、アイスが溶けちゃうし)」
にわかに、先生の大きな手が俺の頭を撫でた。花火に染められてブルーの星を撒き散らす瞳は、優しく細められていた。
「ユーリ、食べながら話すと何を言っているか分かりませんよ。可愛いですが」
「ふぁふぁひひ、ひふな(可愛い、言うな)」
それでも、食欲に逆らえずに、クレープにかじりつきながら、先生に文句を言う。
先生は、徐に焼きそばと箸を下ろすと、俺のクレープも掴んで下ろす。
そのまま、俺の顎に手をかけて、信じられないことに、キ、キスをしてきた―― !
おまけに、口内に舌が侵入してきて、俺の口内に残るクレープを絡め取っては自身の口に移動させていく。
「は・・・っ」
ねっとりと熱い舌が、口内を撫で回すような感触に、全身が粟立つ。
おまけに、俺の身体が逃げないように、腰にきつく腕を回された。
いくら暗いとはいえ、周りにこんなにたくさんの人がいるところで―― !
恥ずかしさに、顔から火が出そうだった。目の前がちかちかした。
幸いだったのは、先程の花火で、小休憩に入ったことだ。
ようやく唇が解放された頃には、俺の口内のクレープは全て取り除かれていた。
え、エロ過ぎるよ、コンラッド先生っ!
真っ赤になって、先生を呆然と見つめると、熱い視線を送られた。先生は今、調度俺の口内から奪い取ったクレープを嚥下するところだった。彼の艶めいた喉仏がゆっくりと動いていく。
あまりの卑猥さに、見ていられなくて顔を背けようとしたら、川風が吹いたかのように、爽やかに微笑まれた。
「だってほら、ユーリが喋りにくそうだったから」
「先生のばかっ!」
俺に出来るささやかな抵抗といったら、耳まで真っ赤にして文句をいうだけだった。
先生に敵うはずが無い。
「ごめんね、本当はユーリが可愛くて、キスする口実にしたんだよ」
耳元で腰が砕けそうな甘い声でそっと囁かれた。
俺は、頭から湯気が出たのは言うまでも無い。
再び、夜空に豪快な光の花が咲き乱れた。鼓膜をびりびりと震わす大音響が、あとに続く。
俺は、照れくささから、再び食に走ることにした。正直、食欲は著しく停滞していたんだけど。
無造作に、フランクフルトを頬張った。
「あ・・・・・・」
花火を見ながら、咥えた所為で、ケチャップが口端についてしまった。
「わっ!」
唐突に唇の端を柔らかくて熱いものに覆われた。
またしても、先生にキスされていた。おまけに、唇を離すときにわざとチュッ、と湿った音を残していった。その湿った音は、花火の音にかき消されたのは、幸いだった。
けれど、花火の光で、俺達がキスをしていたことが周りに見られたかもしれない。
途端に、羞恥で全身が火照る。
もうすっかり先生のペースに呑み込まれてしまった。惚けたように、先生を見つめると、彼は少し意地悪に、口の片端を上げて微笑み返した。
その意地悪な顔を見て、何か、嫌な予感がした。
「ユーリは、花火鑑賞に専念して下さい。俺が、これを食べさせてあげますから」
そういうと先生は、俺の持つフランクフルトを取り上げた。そして、それを俺の口に捻じ込んだ。
「ンむっ――!っふ」
ありえないくらい深くまで咥えさせられた。しかも、それをゆっくりと引き戻していく。そして、再び中に深く突っ込まれては、緩やかに引き戻される。
サディスティックな顔を、金色に染めて見下ろすコンラッド先生。
こ、これって、もしかして、いや、もしかしなくても。エッチのときの行為の一種を、フランクフルトで模倣してるんだよな?
恥ずかしさに、顔が上気して、瞳の端に涙がうっすらと滲んでいく。先生の意地悪な熱い視線に、身体が火照っていく。
「ユーリ、どうしたんですか?そんな潤んだ瞳をして、ただのフランクフルトですよ?食べないんですか?」
白々しい台詞が、ひときわ羞恥心を刺激してくる。男の人の何て、当然咥えたことなんてない。だけど、まるで今口の中にあるフランクフルトの塊が、本物・・・・・・のような気がしてくる。
いや、それどころか、コンラッド先生のを咥えているような錯覚に陥って、恥ずかしさに眩暈がする。
顔が熱くて堪らない。口の中のフランクフルトの妙な弾力感に、全身が粟立つ。
美形の先生の瞳が冷徹なほどに細められている――その癖、蕩けそうに甘く微笑んでくれる。そんな、魅惑的な先生から眼が離せない。
ただ、熱くうっとりと先生を見つめてしまう。
にわかに、俺の口からフランクフルトが抜かれる。
先生は袋に俺の食料を一纏めにしてしまう。先生は、俺にその袋を手渡すと、そのまま俺の手を繋いで、エスコートしてくれた。
背後で、花火の音が甘く鳴り響いた。
★あとがき★
いつも拍手くださるかた、ありがとうございます。励まされます。書く意欲が沸きます。
なんか、どんどんコンラッドがエロくなっていきそうです(汗
ユーリ、頑張れ~~^^;)
右下に、なにやら裏口があります。英語。
よろしければ、大人の方だけお進み下さい。
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S | M | T | W | T | F | S |
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