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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2009/10/13 (Tue)                  ショートストーリー第十八編  Trick or Treat !
ショートストーリー第十八編 ~Trick or  Treat ! ~

※微エロ注意なコンユです。二人は未だ健全な関係という設定です。
 散々既出と思われる(汗)ハロウィンネタなコンユですが、どうぞ~。




 コンラッドは、外見もいいし、声もいい。おまけに腕も立つし、過去に影がある、いい男オーラ全開、な奴だ。

 だけど、だけど、俺は知っている。案外、いや、規格外にギャクのセンスが寒いことを―― !!

 きっと、これも、その一環のギャグか何かにちがいない!!!


 日本時間で、確か今日は10月31日だ。地球では、(主に欧米では)ハロウィンの日らしかった。けれど、ここ眞魔国では特にそれといったお祝いもしなかった。
 別に、西洋かぶれしてない俺は、特にハロウィンを待ち焦がれてはいなかったんだけど・・・・・・。

 やたらに豪奢な天蓋つきのベッドに、身を沈めていると、控えめなノックが聞こえた。返事をすると何やら招かれざる客が入ってきた・・・・にちがいない。

 だって、その人は、闇に紛れる真っ黒のマントに身を包んでいるのだから。それも、首が隠れるくらいにそびえたったそのたて襟は、月灯りの中でも印象的な、いわゆるドラキュラみたいなマントだから。

 けれど、薄暗い中でも、なぜかそれが誰か分かる。
 俺は、名付け親症候群なのかもしれない。
 その人物は、ドラキュラのコスチュームプレイ、いわゆるコスプレをしたコンラッドだった。

 きっと、彼は俺を笑わせようとしているんだよな?!今日がハロウィンだから、アメリカ滞在経験のある彼は、俺にお祭り気分を味わって欲しいんだよな?ただのレイヤーじゃないよな?!
 こんな夜中に、警備の合間を縫って・・・・・・その、コスプレまでして俺の寝室に来てくれるんだから。

 まったく、親ばかなのか、ずれてるのか、何なのか・・・・・・。
 
 でも、しょうがない。こ、これは、彼に敬意を表して、一芝居にのってやるか。うんうん、なんか、面白そうだよ!でも、ハロウィンってそもそもどんなお祭りだったっけ?!
 
 ふいに、影が覆った。
 いつのまにか、ドラキュラ風コンラッドが、俺のベッドサイドまで来ていた。そして、彼は、自然な動作で俺の顔の両サイドに手をついて、上から俺を見下ろした。
 
 何でこう自然に、相手との距離を詰められるんだろう。同じ男として、これは、大いに学ばなくてはいけない、メモメモと。
 それにしたって・・・・・・。

 重力にしたがって、彼のサラサラの短い髪は垂れ、銀の星を散りばめた瞳は、甘く細められて、端整な唇は少し悪戯に口角を上に上げている。
 それも、中世風の白いブラウスに、耽美な黒いマントを羽織った、いけないドラキュラ風いい男だ。そんな彼が、月光に照らされて妖しく微笑んでいるのだ。

 き、キザーー!
 こんなん女子だったら、完全にノックアウトだろ?!むしろ、私の血を捧げます、みたいな?!
 だって、まっとうな高校生男子の俺だって、不覚にも顔が赤くなるんだから。

''Trick or Treat !''

 唐突に、俺の耳にネイティブなイングリッシュが響いた。それも、腰にくる甘い声の。
 そうだよ、コンラッドは英語がぺらぺらなんだよな~。

 それにしても、甘い、甘い!なんて、甘い声出してるんだよ。これは、ドラキュラでいうところの超音波か何かですか?!

 ああっと、そうじゃなくて、何か返事をしないといけないんだよな?
 コンラッドのお祭りに、のっかってあげないと。

 トリックかトリートか、どっちかを選ばないといけないんだな。トリートって何だよ?    
 トリックって、なんかマジックみたいなもののことだよな?
 お祭りだし、きっとこっちが正解だろ?


「え、ええっと、と、トリック・・・・?かな」

 ふいに、コンラッドの目が甘く細められた。唇は、少し意地悪に歪められる。

 なんて顔してるんだよ、コンラッドのばか!

 ってか、俺、答えるの間違った?!

「はい、ユーリ」

 いつもは、陛下っていうくせに、なんだかやたらに耳が融けそうな声で名前を呼ばれて、身体がかっと熱をもった。

「こ、こ、コンラッド?!」

 彼は、ベッドを軋ませて、俺の上に跨った。漆黒のベロア素材のマントが、優雅に垂れる。彼の夜気に触れて冷たい指が、俺のパジャマのボタンを一つ、二つ・・・・・・と器用に外していく。
 ちょっと、待って?!これって、これって、男女間の営みでは~?!

「ちょっと、たんま~!! な、なんで、コンラッドってば俺の服を脱がせてるの?!」

 俺は、目を白黒させて、彼の大きな掌を両手で掴んだ。

「だって、ユーリが希望しましたから」
「ええっ、俺がいつ?!」
「Trick,つまり、いたずら、を望んだばかりじゃないですか」

 そういうと、コンラッドは悪戯に左目を閉じた。いや、コンラッドがやると嫌味なくカッコいいけれど・・・・・・って、そうじゃないよ。

 俺が、さっきトリックかトリートかって聞かれて、トリックって答えたから、悪戯するってわけなの?ああ、そうなのか、なんだ、そうか・・・・・・って、そんなん納得できるか~??

「ひっぁ、あ、コンラッド・・・・?」

 突然、首筋に冷たくて柔らかいものが押し付けられて、思わず変な声を上げて、身体を捩ってしまった。どうやら、彼に首筋にキスをされたらしい。さながら、ドラキュラみたいに、首筋に・・・・・き、キス・・・?!
 俺は、羞恥で身体中から湯気が出そうだった。

 俺の顔を覗きこむと、彼は、甘く瞳を細めた。

「ユーリ?ハロウィンでは、『いたずらされたい?それともお菓子でおもてなしをしておく?』って聞くんですよ。それが、''Trick or Treat'' なんですよ。でも、ユーリがいたずらを希望するのなら、仕方ありませんね」

「ちょ、ちょっと、おれ、意味しらなかったしって、あっ、や、だめっ・・・・・!」

 コンラッドは、再び俺の首筋に軽く歯を立てて甘く噛んだ。
 全身が、ぞくりと甘く痺れた。

 そんな自分に、ひどい違和感を感じた。コンラッドは、俺の名付親だし、護衛もしてくれてる頼れる奴なのに。

 それなのに、俺、こんなことされるのに、男同士なんて絶対いやって思ってたのに、どうして、どうして、嫌・・・・・じゃないんだ。
 
 俺・・・・・どうかしてる。そんなこと、変、だよ。

「んんっ、ぁ、コン、ラッド・・・・・・」

 けれど、俺に考える余裕がなくなった。コンラッドの冷たい唇が、鎖骨をうっすらと撫でて、俺の薄い胸板をゆっくりと辿っていった。
 冷たくて、長い指が優しく俺の脇腹を撫でていく。

 気持ちよくて、ぞくっとするほど甘くて、おかしな気持ちになりかけた。

「はい、おしまい」

 唐突に、彼の指も唇も、身体から離れていった。その顔を見上げると、いつもの爽やかスマイルだった。ドラキュラ風ファッションだけど。

「少し悪戯が過ぎましたね。ハロウィン気分は楽しんでいただけましたか?」

 たて襟のマントを羽織る、ドラキュラ風コンラッドはそっと優しく微笑んでくれた。そう、いつもみたいに。

 なんだか、ひとりだけ心を取り乱していたことが、ひどく恥ずかしく思えて強がった。なるべく平静を装って、答えた。

「うん! まさかドラキュラの格好までしてくれるなんて、驚いたよ。それに、まさか、コンラッドに悪戯されちゃんなんてな! あはは」

 本当は、気が気じゃなかった。
 コンラッドが、冗談のつもりだったとはいえあんなことをしてくるなんて。
 それに、自分が、それを全く嫌と思わなかったし、それどころか、感じてしまったなんて・・・・・・信じられなくて。

 だから、絶対にコンラッドには、気づいて欲しくなかった。俺が、こんなに動揺していることを。
 だって、コンラッドは、俺を楽しませたかっただけっていうか、本当にただの冗談だったんだから。
 俺が、こんなに動揺したら、コンラッドは、かえって引くに決まってる。

 だから、いつもの俺らしくなく、必死にポーカーフェイスを装った。
 絶対に、絶対に、コンラッドには俺が動揺したってことは気づかれていないはずだ。

「ユーリは、俺がこういうことをしても、冗談として受け取ってしまえるんですね」
「コンラッド?」

 コンラッドの声が、憂いを秘めている気がしてはっとした。
 けれど、俺が顔を上げると、そこにはいつものコンラッドがいて、月明かりを跳ね返すほど爽やかに微笑まれた。

 いつもの、大好きな、名付け親の笑顔なのに。
 どうして、こんなに胸が痛むんだよ。
 こんなに、優しく微笑んでくれてるっていうのに。

「それでは、おやすみなさい、陛下」


 穏やかで、癖のない美声で彼は告げた。眞魔国で一番頼りにしてる彼の声だ。

 胸がぐちゃぐちゃにかき乱されて、何かが俺を揺り動かそうとしてた。

 それでも、その一線を踏み越える勇気がもてなかった。


「・・・・・・陛下、いうなよ。名付け親」

 不自然なほどに、長い沈黙をあけてしまった。けれど、彼に言い返したのは、いつもの台詞。
 頼りにしてるコンラッドと戯れるだけの味気ない台詞。それしか、いえなかった。

「そうでした、ユーリ」

 いつものように、彼はそう言い返した。その表情は、月が雲に覆われたせいで、よく見えなかった。

 踵を返す彼の姿を見ながら、心の中で言った。


―― ゴメン、コンラッド。俺、とんでもないことに気づいたんだ。

    俺、あんたのこと・・・・・・好き、だ。





★あとがき★

 二人は好きあっているのに、すれ違ってしまう、そんな秋らしい?切ないSS?になったような、ならないような(汗

 あの二人なら、すれ違いとかありえそう。でも、ユーリさえその思いに気づいたら、すぐに両思いになってしまいそう^^

 ちょっと無理やりなハロウィンネタでした。

 読んでくださってありがとうでした^^


  拍手下さった方、ありがとうございました^^

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