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第五話 揺れる気持ち
※まだ彼らは夏休みです≪汗
これから、ちょっとずつ話に動きが出てくる予定。
今日は、登校日。久しぶりに、懐かしい顔に会えて嬉しいはずなのに。
俺の心は、ずっと霞が掛かったみたいにもやもやしていた。
半月ぶりの懐かしい教室の机に、突っ伏した。
コンラッド先生のことを考えると、胸がすっきりしないんだ。
彼は、訳あって、恋人ごっこをしてくれてる。
でも、先生はどうしてあんな、あんなエロいことをしてくるんだろう。
恋人ごっこだから、やむを得ずに、あんなことしてくるんだろうか?
彼との情事を思い出して、体温が急上昇した。エアコンのない公立の高校では、きつすぎる。
「ど~したの?渋谷?なんか随分と不良債権でも抱えちゃったみたいだね」
心が晴れない俺に、賑やかな友人の声が響いた。彼は、背格好も俺とあまり変わらない。強いて言うなら彼は、メガネをかけている。メガネ君、こと村田健だ。
脱力仕切って、机に伏せている俺を、悪戯っぽい瞳で覗きこんでくる。
「債権回収してくれるのかよ。って、俺の親父が、銀行員だからって、なんでも金融用語言うな!」
咄嗟に、言い返す。我ながら、いい漫才コンビだと思う。じゃなくてさ~。
俺は溜息をつくと、彼に悩みを打ち明けた。そう、コンラッド先生とのことを。こんなデリケートで難解な問題を相談できるのは、彼くらいだ。
普段は、ふざけたようなことしか言わないけれど、彼は俺を本気で馬鹿にしているわけではない。
それどころか、俺のことを大切に思ってくれてる、頼れる奴だ。
おまけに全国模試ではいつも東大がA判定の大賢者だ。
けれど、そんな彼が俺の相談を聞き終えて、眼鏡を曇らせた。彼の眼鏡は、心情を映すらしい。
低い声で彼は囁いた。
「渋谷、君は騙されてるんじゃないの?その先生に」
「そ、そんなことねーよっ?!」
思わず上半身を起こして、全力で否定する。俺の叫び声に驚いた周りの級友が、一斉にこちらを振り向く。俺と村田は、周りに何でもありません、と選挙立候補者のごとく、手をひらひら振って営業スマイルしてみせる。
クラスメートの視線が散ったところで、村田は、俺と先生の間に起きたことを、冷静に分析していく。いつの間にか村田は、出来る奴の顔になっている。
「英語の成績を上げるために、恋人のふりをするにしても、どうして渋谷にそんな性的なことまでするんだ?普通そんなことしないよ、良識ある大人なら」
友人の言葉は、胸の触れられたくないところを刺していく。けれど、彼はおかまいなしに、話を続けていく。内容が繊細な物なだけに、彼は声を潜める。
「おまけに、彼は『俺『も』君のことが好きだよ』って言ってきたんだろ?狡猾な大人の手口なんじゃないか?あたかも君のほうが、自分に惚れているように錯覚させて、その上キスなんかして、思考を麻痺させちゃったんじゃないの?・・・・・・まぁ、外見のいい奴にしか出来ない手口だろうけど。駄目だよ、渋谷。人を見た目で判断しちゃ」
彼の言葉がズキズキと胸を刺す。
それでも、彼の言葉が止むことは無い。彼はいつも率直に意見を言ってくれる。それは、嬉しいことなんだけど、玉に辛い。
聞いているのがしんどくて、俺は、また机に突っ伏した。
机に突っ伏す俺の耳元で、彼は、ひと際声を潜める。
「渋谷は、彼の性の玩具にされてるんじゃないか?僕は、それが心配だ。世の中には、いろんな性癖を持った人が居るんだ。渋谷みたいな少年がいいっていう輩もたくさんいるんだよ。学校では、僕が、そういうのを影から排除してるんだけどね」
再び、身体を起こして、彼を見た。
にわかに、村田の眼鏡が光る。たまに、光るんです、彼の眼鏡は。
おまけに、どさくさに紛れてとんでもない事実を発見した気がする。
新大陸を発見したコロンブスもびっくり的な。
いや、それより、何だよ、何だよ、『俺が先生の性の玩具にされてる』って!!
「渋谷、悪いことはいわない。ただちに、今の関係を解消するべきだと思う。何なら、僕が協力しようか?」
彼は、握手を求めるように、手を差し出してきた。
けれど、俺はそれを拒んだ。
「いい、いいよ!自分のことは、自分で何とかするよ。俺、村田みたいに頭の回転はいいほうじゃないけど、もう立派な高校生だよ!」
彼の協力を拒んだのは、そのくらい自分で何とかできるという自負の念もある。
でも本当は、それ以上に、先生との関係が終わるのが嫌だと思ってしまったから。
例え、村田の言うように、彼が俺のことをただの『遊び』としか見ていないのだとしても。
―― 俺とのことが『遊び』?
改めて、そう言い切ってしまうと、頭をガンと殴られたような衝撃が起こった。
違う、違う! 俺は、先生を信じてる。信じたい・・・・・・。
さっきまでは、先生が『俺の勉強意欲をあげるために恋人ごっこ』をしてくれてると思ってた。それでさえ、悲しくなってきたところだったのに。
―― そうだよ、俺、悲しかったんだよ!
だって、先生が俺に好きって言ってくれるのも、優しい笑顔も全部が、恋人としての演技だなんて、辛すぎるじゃん!
それなのにさ―― ただの遊び目的だったなんて、もっと嫌だよ! 嫌過ぎるよ!
嘘だろ?!
それってつまり、俺、先生のこと、本当に好き・・・・・・になっちゃったんだ?!
なんてことだろう、今頃、気づくなんて。
俺、随分前から、彼に惚れてたんだ・・・・・・。
あまりのことに、身体中の力が抜けてしまった。
今や、俺の机は、本来の役割を全く果たしていない、枕代わりになってしまった。
「渋谷?」
友人が心配そうに、俺を見つめていることに気が付いた。
「ご、ごめん。心配かけて。相談に乗ってくれて、ありがと、な」
村田は、力なく頷いた後、強い意志をもった眼差しで、こちらを見た。
「渋谷、君が性的なことを拒んでみればいいよ。彼の本性が分かるさ」
彼の助言が、いつまでも頭の中で響いた。
裏は、右下英語からお入り下さい。
大人の方だけお願いします。
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