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2009/09/03 (Thu)                  塾講師と甘い夏?! 第五話 揺れる気持ち

第五話 揺れる気持ち
 ※まだ彼らは夏休みです≪汗
   これから、ちょっとずつ話に動きが出てくる予定。





 今日は、登校日。久しぶりに、懐かしい顔に会えて嬉しいはずなのに。
  俺の心は、ずっと霞が掛かったみたいにもやもやしていた。

 半月ぶりの懐かしい教室の机に、突っ伏した。
   コンラッド先生のことを考えると、胸がすっきりしないんだ。

 彼は、訳あって、恋人ごっこをしてくれてる。

 でも、先生はどうしてあんな、あんなエロいことをしてくるんだろう。
 恋人ごっこだから、やむを得ずに、あんなことしてくるんだろうか?

 彼との情事を思い出して、体温が急上昇した。エアコンのない公立の高校では、きつすぎる。

「ど~したの?渋谷?なんか随分と不良債権でも抱えちゃったみたいだね」

 心が晴れない俺に、賑やかな友人の声が響いた。彼は、背格好も俺とあまり変わらない。強いて言うなら彼は、メガネをかけている。メガネ君、こと村田健だ。
 脱力仕切って、机に伏せている俺を、悪戯っぽい瞳で覗きこんでくる。

「債権回収してくれるのかよ。って、俺の親父が、銀行員だからって、なんでも金融用語言うな!」

 咄嗟に、言い返す。我ながら、いい漫才コンビだと思う。じゃなくてさ~。

 俺は溜息をつくと、彼に悩みを打ち明けた。そう、コンラッド先生とのことを。こんなデリケートで難解な問題を相談できるのは、彼くらいだ。

 普段は、ふざけたようなことしか言わないけれど、彼は俺を本気で馬鹿にしているわけではない。
 それどころか、俺のことを大切に思ってくれてる、頼れる奴だ。
 おまけに全国模試ではいつも東大がA判定の大賢者だ。


 けれど、そんな彼が俺の相談を聞き終えて、眼鏡を曇らせた。彼の眼鏡は、心情を映すらしい。
 低い声で彼は囁いた。

「渋谷、君は騙されてるんじゃないの?その先生に」
「そ、そんなことねーよっ?!」
 
 思わず上半身を起こして、全力で否定する。俺の叫び声に驚いた周りの級友が、一斉にこちらを振り向く。俺と村田は、周りに何でもありません、と選挙立候補者のごとく、手をひらひら振って営業スマイルしてみせる。

 クラスメートの視線が散ったところで、村田は、俺と先生の間に起きたことを、冷静に分析していく。いつの間にか村田は、出来る奴の顔になっている。

「英語の成績を上げるために、恋人のふりをするにしても、どうして渋谷にそんな性的なことまでするんだ?普通そんなことしないよ、良識ある大人なら」

 友人の言葉は、胸の触れられたくないところを刺していく。けれど、彼はおかまいなしに、話を続けていく。内容が繊細な物なだけに、彼は声を潜める。

「おまけに、彼は『俺『も』君のことが好きだよ』って言ってきたんだろ?狡猾な大人の手口なんじゃないか?あたかも君のほうが、自分に惚れているように錯覚させて、その上キスなんかして、思考を麻痺させちゃったんじゃないの?・・・・・・まぁ、外見のいい奴にしか出来ない手口だろうけど。駄目だよ、渋谷。人を見た目で判断しちゃ」

 彼の言葉がズキズキと胸を刺す。
 それでも、彼の言葉が止むことは無い。彼はいつも率直に意見を言ってくれる。それは、嬉しいことなんだけど、玉に辛い。

 聞いているのがしんどくて、俺は、また机に突っ伏した。
 机に突っ伏す俺の耳元で、彼は、ひと際声を潜める。

「渋谷は、彼の性の玩具にされてるんじゃないか?僕は、それが心配だ。世の中には、いろんな性癖を持った人が居るんだ。渋谷みたいな少年がいいっていう輩もたくさんいるんだよ。学校では、僕が、そういうのを影から排除してるんだけどね」
 
 再び、身体を起こして、彼を見た。
 にわかに、村田の眼鏡が光る。たまに、光るんです、彼の眼鏡は。
 おまけに、どさくさに紛れてとんでもない事実を発見した気がする。
 新大陸を発見したコロンブスもびっくり的な。

 いや、それより、何だよ、何だよ、『俺が先生の性の玩具にされてる』って!!

「渋谷、悪いことはいわない。ただちに、今の関係を解消するべきだと思う。何なら、僕が協力しようか?」

 彼は、握手を求めるように、手を差し出してきた。
 けれど、俺はそれを拒んだ。

「いい、いいよ!自分のことは、自分で何とかするよ。俺、村田みたいに頭の回転はいいほうじゃないけど、もう立派な高校生だよ!」

 彼の協力を拒んだのは、そのくらい自分で何とかできるという自負の念もある。
 でも本当は、それ以上に、先生との関係が終わるのが嫌だと思ってしまったから。
 例え、村田の言うように、彼が俺のことをただの『遊び』としか見ていないのだとしても。

 ―― 俺とのことが『遊び』?

 改めて、そう言い切ってしまうと、頭をガンと殴られたような衝撃が起こった。

 違う、違う! 俺は、先生を信じてる。信じたい・・・・・・。
 
 さっきまでは、先生が『俺の勉強意欲をあげるために恋人ごっこ』をしてくれてると思ってた。それでさえ、悲しくなってきたところだったのに。

 ―― そうだよ、俺、悲しかったんだよ!
 だって、先生が俺に好きって言ってくれるのも、優しい笑顔も全部が、恋人としての演技だなんて、辛すぎるじゃん!

 それなのにさ―― ただの遊び目的だったなんて、もっと嫌だよ! 嫌過ぎるよ!


 嘘だろ?! 
 それってつまり、俺、先生のこと、本当に好き・・・・・・になっちゃったんだ?!

 なんてことだろう、今頃、気づくなんて。
 俺、随分前から、彼に惚れてたんだ・・・・・・。

 あまりのことに、身体中の力が抜けてしまった。
 今や、俺の机は、本来の役割を全く果たしていない、枕代わりになってしまった。

「渋谷?」
 友人が心配そうに、俺を見つめていることに気が付いた。

「ご、ごめん。心配かけて。相談に乗ってくれて、ありがと、な」

 村田は、力なく頷いた後、強い意志をもった眼差しで、こちらを見た。

「渋谷、君が性的なことを拒んでみればいいよ。彼の本性が分かるさ」

 彼の助言が、いつまでも頭の中で響いた。





 裏は、右下英語からお入り下さい。
 大人の方だけお願いします。



第五話の続きです。十八歳以上推奨です。

 
 登校日は午前中までだった。正午に家に帰った俺は、冷蔵庫の中から、作り置きのオムライスを食べたあと、ソファにだらしなく身を投げ出した。

 お袋と親父は、日帰りで熱海に行くといっていた。勝利は、インターンシップとやらで会社勤めを体験しているため、今日も帰りが遅いらしい。 

 ソファに、転がりながら天井を見つめて溜息をついた。
 村田に、コンラッド先生のことを相談したら、まさか、あんなことを言われるなんて。

 思いもしなかった。そんな可能性があるなんてさ。

 せ、先生が俺にえ、エロいことするために、恋人ごっこしてるなんて?!

 村田には、先生が性的なことをしようとしたら、拒めばいいといわれた。

 タイミングのいいことに、いや、悪いことに?、これから先生が家に来ることになっている。昨日電話で、先生を家に誘っていたから。
 だって、勉強を教えてくれるっていうしさ。

 俺は、先生を信じたい。だから、先生にとって俺が『遊び』だなんて、思いたくない。せめて、『勉強の意欲をあげるため』の恋人ごっこなんだって、願う。

 でも、俺、もし先生にえ、エッチなことされそうになったら、拒んでみよう。
 村田も心配して考えてくれたんだしさ。


 そのとき、玄関のインターフォンの軽快な音が居間に鳴り響いた。

 俺は、慌ててソファから飛び起きると、走って玄関に向かった。どれだけ悩んでいようが、先生に会えるのは純粋に嬉しい。
 だって、俺、先生のこと好きみたいだし・・・・・・。今日、ようやく気づいたんだけど。


 都心から電車で30分圏内の郊外に、渋谷家はある。裕福すぎず、貧しすぎない、平凡な庭付き一戸建て4LDKだ。

 見慣れた木製の、玄関ドアを開けると、相変わらずカッコいいコンラッド先生が立っていた。
 どうやら、午前中は塾で指導していたようで、ダークグレーの渋いスーツ姿だった。インナーは、オフホワイトのシャツで、タイはワインレッド色。
 彼は、ブランドスーツの外国人モデルそのものだ。そんな先生を、玄関から迎えるのは、ドキドキしてしまう。

「い、いらっしゃい、コンラッド先生!」
 先生にスリッパを差し出すと、先生はまだ、俺のほうをじっと見ていることに気づいた。

「せ、先生?」

「すみません、ユーリ。貴方の制服姿を初めて見たので、見惚れてしまいました」
 
 相変わらず上品で甘い声が、玄関先で綺麗に響いた。

 そうだった。俺、着替えるのが面倒でずっと制服を着てた。今は、夏服なので、半そでの白のカッターシャツと紺をベースにした赤の斜めストライプが入ったタイ、控えめなグリーンのチェックが入った濃紺のパンツだった。
 それにしてもっ。

「そんなっ!俺なんて、見惚れられるほどのもんじゃないしっ。せ、先生の方が、ブランドスーツのモデルさんみたいだし!」

 先生は、くすっと、優雅に微笑んだ。
「ユーリにそう言ってもらえると嬉しいな。それよりユーリ、一緒にケーキを食べましょう?」

 そういうと、先生は持っていた袋を軽く上げた。先生に見惚れてて、すっかり袋が視界に入ってなかった。

「マジで?!買って来てくれたの?うれしい~!」





 先生がソファでくつろぐ間に、冷蔵庫のアイスティーをグラスに注ぐ。アイスティーを2つ、テーブルに置くと、先生の横に座って、ケーキを選ぶ。
 全部で6個のケーキは、どれも種類が違っていて、迷ってしまう。
 
 ショートケーキ、レアチーズケーキ、プリン・ア・ラ・モード、ティラミス、イチゴのタルト、ガトーショコラ。どれも、俺の好きなのばっかり! 彩りも鮮やかで、見ていて楽しくなる!

「すっげ~、美味そう!! 俺、ティラミスでもいい?」
「いいですよ。俺は、レアチーズにしようかな。それにしても、ユーリがイチゴの載っていないケーキを選ぶのは意外ですね」

 ケーキを小皿に取り分けながら、先生が爽やかに微笑んでくる。
 俺は、少しむっとして言い返す。

「なんだよ、俺って、そんなにお子様なイメージなわけ?」

 不意にコンラッド先生は、意味深に俺を見つめて、切れ長の瞳を細めた。
 何かを言いたそうな、魅惑的な瞳にたじろいでしまう。

「失礼しました。貴方は、そんなにお子様ではありませんよ?」
「ぅわっ!」
 唐突に、先生に制服のタイを掴まれ引き寄せられる。ダークブラウンの柔らかい瞳が、甘く俺を見つめてくる。
 たちどころに、甘い空気が二人に漂う。ケーキの甘い香りも手伝って、雰囲気に酔ってしまいそう。

「ねぇ、ユーリ。ティラミスってイタリア語でセクシーな意味もあるんですよ。知ってる?」

 いつのまにか、先生の唇は、俺の唇に触れそうな距離にあった。

「し、知らない。なに?」

 ドキドキしていたら、突然、先生は俺から離れていってしまった。
 ホッとしたような、残念なような。って、俺何を期待してたんだ?!
 今日は、そういうことを拒まないといけないのに。

「後で、教えてあげる」
 
 先生は少し意地悪な顔で、口角を片方だけ上げて微笑んだ。美形な人の何かを企むような顔は、とてつもなく綺麗で、心が揺さぶられてしまう。

 彼は、机からケーキの載った皿を取って、ソファに座りなおすと、ケーキを口に運んだ。ジャパナイズされた渋谷家のソファでは、先生の長い脚は、窮屈そうだ。
 

 俺も、なんとか、我に返ると、ティラミスを頬張った。

 途端に、口の中に広がるエスプレッソのほろ苦い香り。同時に、チーズの混ざったメレンゲが甘く口の中で蕩けていく。

「うま~い!」

 すっかり、色気より食い気が勝った俺は、がつがつとケーキを平らげた。
 他にも、ショートケーキやイチゴのタルト(やっぱりイチゴが好きなんですね、と先生に笑われたけど)を平らげた。
 だって、俺、育ち盛りだし。





「さぁ、ではユーリ。勉強しましょう」

 おなかが一杯で、若干眠たくなった俺の前には、いきなり教師と化したコンラッド先生がいた。

「そんなご無体な~。なんか、もっと楽しいことしたいな」

 ちらりと、先生の様子を覗き見ると、花が綻ぶような甘い顔で微笑まれた。けれど、碧色が混ざったような媚茶色の瞳は、絡みつくように熱くて、心が乱れる。

「大丈夫、勉強も楽しいですよ。さぁ、ユーリの部屋に行きましょう」

 胸騒ぎがしながらも、先生を俺の部屋に案内した。

  野球選手のポスターが貼られたいつもの部屋なのに。先生がいるだけで、まるで別の空間になってしまったような気がする。

 勝利が部屋に来ると暑苦しいなぁ、と思う大きさの部屋だけど、先生と二人きりだと、すごく緊張する。

「ここが、ユーリの部屋なんですね。綺麗に整頓されてるんですね」

「あぁ、それは、お袋が片付けてくれるから。適当に座って」

 とは言ってみたものの、座れるのは勉強机の前の椅子かベッド、もしくは、ワイルドに床しかない。
 どうしよう、と悩んでいるのが顔に出ていたのか、先生が優しく微笑んでくれた。

「ユーリさえ差し支えなかったら、二人でベッドの上で勉強しませんか?」
 
 先生は相変わらず、腰が砕けるような甘い声で言う。
 たちどころに、顔から火が出た。
 何だよ、その卑猥な響きは?! ベッドの上で勉強って、なんか、響きがエロい!
 な、なんの勉強だよっ。
 あ!ていうか、今日は、先生がエロいことしようとしたら、拒まないといけないのに。
 早くも、ピンチ?!

 俺の様子を見ると、先生は揶揄するように笑う。乾いた、意地悪な笑い。でも、やっぱり、瞳は甘く細められていて――。その相反する態度に、自然と鼓動が高鳴る。

「ユーリは、いやらしいなぁ。俺は、そのままの意味で言ったんですよ」
「―― うわっ!」

 ベッドの前で立ち尽くす俺の両肩に手を置くと、彼は俺をそのままベッドの端に座らせた。先生は、机上の英語の教科書を取る。脚が長いので、ベッドから机までの距離、僅か1歩だ。俺なら3歩かかるところを。

 先生は、流れるように優雅な動作で、俺の隣に腰を降ろした。



「ユーリ、これから俺が読むセンテンスを訳して」

 彼は、俺に悪戯にウィンクを寄こす。間近でみる先生の睫毛が長くて、ドキッとした。彫の深い、美形の外国人教師が、肩を触れ合わすくらい近くにいる。それも、ベッドの上に。

「ユーリ、訳し間違えたら、ペナルティーがありますからね」
 
 ぺ、ペナルティーってお笑いのコンビ名じゃないよな。

 さらっと、とんでもないことを言い残すと、先生は教科書を読み上げる。
 涼しい顔をして読み上げる横顔は、凛々しいし、声も綺麗です。

 でも、でも、ちょっと待った。発音が良過ぎて聞き取れない!ネイティブだし。読むスピード早いしっ!しかも、多分、まだ習ってないところだ。おまけにどんだけ長い一文だよ。
 
 もはや、主語さえわかんね~よっ!
 これができたら、俺、そもそも、英語を勉強する必要ないから!赤点なんて、絶対取ってないから!!

「じゃ・じゃぱにーずいんぐりっしゅぷりーず」

 惨敗!俺が、先生に言えたのは、これだけだった。なかなか的を得た名回答だと思うんだけど。駄目?

「ユーリ、少しも分からない?そう、じゃあ、ペナルティーだね」
「あっ・・・・! ちょっと!」
 
 にわかに、先生の長い指が俺のタイを器用に解いていく。栗色の柔らかそうな先生の前髪がサラリと優雅に垂れる。

 脱衣なの?脱衣マージャンならぬ、脱衣翻訳なの?
 不安げに先生に視線を向けると、夏風のごとく爽やかに微笑まれた。綺麗な顔に圧倒されて、何もいえない。

「はい、ユーリ。第2問いきますよ」
 
 そういうと、彼はまた流れるような英語を紡ぐ。

「・・・・・・降参です」
「ユーリ」

 先生は、甘い溜息をつくと、俺のベルトに手を掛ける。

「ええっ?! ちょっと?!」

 ベルトだけ取られるのかと思っていたら、呆気に取られている間に、ズボンまで脱がされた。
 

「2問目だから、2箇所のペナルティーです」
 って、そんなの聞いてないし。

 俺は、第2問目にして早くも、白のカッターシャツと、下着、紺の靴下の格好になってしまった。
 恨みがましく先生を見つめると、優しく微笑まれた。

「ユーリ、第3問目はサービス問題ですから、安心してください」

 端整な薄い唇から、囁かれたのは――。

''Kiss me, please''

 切なく甘い声に、戸惑いそうになるけれど。
 え?これだけ?これなら、どんなに発音が良くても分かるよ。

 甘い瞳で俺を見つめ続ける先生に、答えを言う。そう、あくまで、答えを言ったつもりなのに・・・・・。

「キスして、お願い?」
「はい、ユーリ」

 にっこりと、蕩けそうに甘い顔で微笑まれた。
 面食らっていたら、長い指に顎を掴まれ、上を向かされた。続けざまに、唇を塞がれて、ベッドに押し倒された。

「――ッんんぅ!」

 だ、駄目なのに。今日は、こういうこと拒まないといけないんだから。

 先生の広い肩を、両手で押し遣った。スーツの乾いた衣擦れの音がむなしく響く。
 すぐに唇が離されて、先生が怪訝な顔をして俺を見つめた。

「ユーリ?キス・・・・・したくない?」

 綺麗な瞳が揺れている。凛々しい眉は、切なげに寄せられた。

 そんな顔するなよ。
 胸がズキンと痛む。

 俺、駄目だ。先生を、拒むことなんて、出来そうもない。
 先生が、好き。どうしようもなく、好きだ。

 先生にとって俺が遊びだったら、きちんと断らないと、この先自分が傷つくことになる。それなのに・・・・・・・。溢れる気持ちは、抑えられない。
 村田、ごめん。せっかく、心配してくれたのに。俺、先生が大好きみたい。だから、拒むなんて出来ないよ。

「コンラッド先生のこと、好きだよ。・・・・・・キス、やめないで」

「ユーリ、本当に大丈夫?・・・・・・愛しています」

 彼の甘い唇がしっとりと、俺の唇を塞いだ。とても、甘くて、胸が痺れた。
 優しく髪を撫でられて、じんとした。
 
 ためらいがちに、唇が優しく離された。

「もう、逃げないで、ユーリ」

 コンラッド先生は、キスを首筋にしながら、器用に制服のシャツを脱がしていく。

 いつの間にか、すっかり肌蹴させられた上半身を、甘い唇が撫で下ろしていく。
 くすぐったさと、気持ちよさがない交ぜになって、全身がゾクリと粟立つ。

「んあっ、せんせっ・・・・・・」 

 思わず、嬌声が上がってしまう。それに応えるように、不意に胸の尖りを指で抓られる。

「ひぁっ! んんっ!」

 鋭い快感が、背中を駆け巡る。
 びくびくと、震えてしまう。

「拒んだり、求めたり・・・・・・俺のことを惑わせて、いけない人だ。お仕置きに、たくさんいけないことしてあげる」
 
 上品な声は、熱を含んでいて少し掠れ気味だ。そんな声に、下半身が疼いてしまう。
 胸を愛撫していた手は、ゆっくりと皮膚を撫で下ろしていき、下着の中に入り込む。 
 胸を弄っていた手の代わりに、唇で、胸の先端を優しく含まれる。
 
「んやっ、ッああっ! 」

 幾重にも重なる甘い刺激に、鼻に掛かったような、甘えた声が上がってしまう。俺の女の子みたいな声に触発されて、先生の愛撫は一段と激しさを増す。

 先生の長い指が、下着の中ですでに窮屈になっていたそこに絡み付いてくる。俺より体温の低い先生の手は冷たくて、身悶えてしまう。

 その上、そこを上下に擦りたてられる。その度に、先端から滲む雫が全体に塗り込められていく。
 ヌメる卑猥な感触と、いやらしい水音が、俺の部屋に響く。
 こんな、午後の光が差し込む明るい部屋に。

 突然、下着を下ろされて、熱をもっていたそこが、勢いよく外に出た。先生は、上品な声で、卑猥な台詞を囁く。人差し指で、敏感なところをそっと撫でられる。

「ユーリ、ここ、こんなにぐちゃぐちゃですよ」
「いやぁぁっ、見ないでっ!」
 
 こんな明るい部屋で、欲望に震えるそこを、先生に見られているのが、耐えられない。恥ずかしくて、硬く眼を瞑った。

「ねぇ、ユーリ。どうして、ほしい?」

 甘い声で囁く先生は、焦らすように、そこには触れてくれない。
 じりじりと湧き上がる欲望に耐えられず、そっと眼を開けた。涙で、視界が霞んでいた。
 荒い息を吐き出しながら、ようやく言葉を紡ぐ。

「さわって・・・・ほしい・・・・・」

「よく言えたね、ユーリ」

 先生は俺の上に跨ると、頬を伝う涙をキスで拭った。

「でもね、ユーリ。お願いをする前に、まずは、こちらの要望も聞いて貰えますか?」

 潤む瞳で、彼を見上げる。ゆっくりと首を縦に振る。

 彼は俺を抱き起こしながら、耳元で甘く囁いた。例の腰が砕けるような声で。
「ユーリ、俺のベルトを外して」

 先生の手に優しく誘導されるまま、ベルトの金具を外す。
 
「ほら、ファスナーを降ろして」
 耳元の甘い声に促されるように、そっと金属を掴み、下げていく。
 思いがけず先生の硬い物に手が触れてしまい、反射的に手を離そうとした。
 
 けれど、素早くその手を掴まれて、そこに触れさせられた。
「――っ!」

 俺のとは比べ物にならない大きさに、息を呑んでしまう。

「ユーリ、この前、俺が貴方にしてあげたことを、覚えてる?」

 唐突に、大きな手で肩を抑え付けられる。
 気がつくと、目の前には先生の物が・・・・・・。

「ユーリ、復習ですよ。さぁ、頑張って」

 まるで、参考書を解きなおしてください、とでもいうような物言いに、羞恥心がひときわ煽られる。実際は、こんなにいやらしいことをしようとしているのに。
 いつだって心が揺さぶられて、先生に支配されてしまう。

 頭の芯まで、甘く痺れてしまった。

「んムッ・・・・・・っぅ」

 素直に、従順に、信じられないくらいの大きなそれを口に含む。
 大きくて、顎が苦しい。
 この前先生がしてくれたように、自分なりに模倣してみる。

「っ、ユーリ、上手だよ。そんなに舌を使って。本当に、初めてなんですか?」

 ふいに、先生の声が低くなり、思わず先生を見上げた。咥えながらも、懸命に首を縦に振る。先端が喉の奥を突き、苦しさに涙が滲み、嗚咽が漏れる。

 そんな俺をみると、先生のダークブラウンの瞳が甘く細められる。けれど、綺麗な形の唇は、少し意地悪に歪められる。

「そうですね、ユーリは、いやらしい子でしたね」

 口の中で、先生のそれはまた硬度を増した。
 俺自身のそこも、ぴくぴくとはしたなく脈を打っていた。
 もうずっと、卑猥なことをさせれて、言葉で責められるのに、少しも先生はそこに触れてくれない。

 極限まで熱をもったそこは、解放を求めて、どんどん雫を滴らせている。耐えられずに、太ももでそこを擦ろうとした。

「ユーリ、何をしているのですか?はしたないなぁ。そんなに、我慢できませんか?」
 
 サディスティックな言葉に、責められる。けれど、そんな言葉は、ますます熱を高めるだけで、一向に楽にはならない。

「エロいユーリも、好きですよ」
 
 意地悪で甘い囁きに、早く解放されることを期待して、そこが跳ねた。
 それなのに、口の中にさらに先生の指を含まされた。

 ただでさえ、口内は大きな塊で満たされているのに、容赦なく、長い人差し指と中指がねじ込まれてしまった。

「っん・・・ぅ・・・・・・・ふっンん」

 長い指は、俺の舌を撫で回していく。唾液の分泌量が、尋常ではなくなる。
 口をいっぱいに広げられて、だらしなく口端から唾液が伝う。

 それでも、先生はそこには触れてくれなくて。
 抗議したくても、口には色々なものを捻じ込まれていて。

「んん・・・・ぅ・・・・っ・・・ンむっぅ」

 情けない嗚咽ばかりが漏れる。
 涙も、唾液も、意思とは関係なく、溢れてしまう。

 それなのに――。

 唾液の糸を引いて、先生の指が引き抜かれた。
 若干、口内に余裕が出来て、少し身体が弛緩する。

「ユーリ、腰を上げて」
 
 俺は、ベッドに腰掛ける先生に、寝転がるような姿勢で横から奉仕していた。先生は、そんな俺に、腰だけを上にあげるという、卑猥な格好を要求してくる。場違いな程に、上品な声で。

 解放されたくて、おかしくなりそうな俺は、従順にそんな卑猥なポーズをしてしまう。それも、先生の物を咥えながら。

「ぅンんっ!! いやぁぁ!!」

 電流が身体を突き抜けたような、鋭い感覚が身体を襲う。
 先生の長い指は、一番触れられたくない、双丘の間の窪みに侵入していた。
 あまりのことに、先生の物を口に含む余裕など無くなってしまった。

 かぶりをふって、懸命にやめて、と伝えるのに、先生の長い指は、少しずつ内部に埋めこまれる。
 異物感に、全身が緊張して、冷や汗が出る。

 突然、指が引き抜かれた。
 緊張から解放されても、まだ呼吸は浅かった。
 ふわりと、身体が宙に浮いたかと思ったら、優しくベッドの中央に寝させられた。仰向けの状態で。

「ユーリ、可愛いよ」
 甘ったるい囁きと共に、熱い唇でキスされた。
 身体の緊張が解れていく。

 先生は、絶妙のタイミングで再び、そこに指を入れる。少しずつ、侵入してくる指は、肉壁を微細に刺激してくる。
 けれど、緊張が走る度に、先生の甘い声とキスが優しく降り注ぐ。

 いつの間にか、異物感を感じていたはずのそこは、おかしな疼きに満たされた。先生が奥深く指を突き入れる度に、俺の先端は、びくびくと震え、雫を零す。

「ああっ! コン、ラドせ、んせい、もう、ほんとに、だめ・・・・イっちゃう・・・ヒアアッ!」

 今にも果ててしまいそうなとき。よりにもよって、そこの根元を、きつく掴まれた。長い指も、勢いよく引き抜かれた。

「まだ、イかせてあげない」

 残酷な台詞が甘い声で囁かれた。彼は、指とは比べ物にならない彼自身の先端を捻じ込んだ。熱くて、硬い、大人のそれを。

 大きな質量を受けて、俺の内部は悲鳴を上げる。おまけに、いいかげん焦らされすぎた先端は、今にもその欲望を吐き出したくて堪らなくて――。

「く、るしい。た、すけて・・・・・」

 息も絶え絶えに、潤む瞳で彼を見つめる。すがりつけるのは、コンラッド先生しかいない。

「苛めてゴメンね。ユーリが可愛くて。今、楽にしてあげる」

 先生は、俺の髪を撫でて、甘く見つめた。
 鼻の奥が、今までと違う涙でツンと痺れた。
 けれど、それはほんの一瞬で。

 怒涛のように押し寄せる快楽の波。波にさらわれて、自分の身体が消えてしまったような錯覚に陥った。そこにあるのは、快楽に溺れる意識だけ。 

 熱くて、大きな質量が、内部を蹂躙し、激しい挿入を繰り返す。
 焦らしつくされた、先端は、大きな掌に包まれて、甘く激しく攻められる。


「あああっ、もう、だめっ、イかせて・・・・っ!!」

 迸る快感のままに、全てを放出した。
 遠くなる意識の淵で、それが、ティラミスの危険な意味だよって、教えられた。








 眼が覚めると、いつのまにか俺は制服を着ていた。シーツの乱れも綺麗に直されていた。

 それに何より、ずっと先生の膝の上に寝かされていたみたいだ。ベッドの上なのに・・・・・・。


 俺が起きたのに気がつくと、優しく頭を撫でられた。
 


 どうして、そんなに大事にしてくれるの?
 でも、それも、恋人ごっこなの?
 それどころか、遊びなの?

 溢れそうになる涙を、無理やり笑顔に変えた。

「コンラッド先生、大好き」
 ぎゅっと、先生の腰にしがみ付いた。そうしていないと、悲しくて。

「俺も、あなたのことが大好きです」
 
 その言葉が、聴きたかった筈なのに。
 どうして、こんなに寂しいんだよ。







 あとがき★★
 

 エロが無駄に長くてすみませんm( )m纏め方が分からない;
 ユーリは、いっきに大人の階段を登ってしまいました≪汗

 なにやら、シリアス風味になってきました。
 もうひと波乱の後、二人のすれ違いが重なるのか?!
 文章力が拙いですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。 

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