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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2009/05/21 (Thu)                  鬼畜眼鏡なパロディー 第八話
第八話  彼に会いたい


※ユーリ視点です。



 コンラッドとの艶事で、力なく机に突っ伏していた俺。


 けれど、彼の呟いた恐ろしい独り言に、動揺を隠せない。伏せていた身体を勢いよく起こして、彼を見上げる。勢いよく身体を動かしすぎて、眩暈がする。
 

 何・・・・だよ・・・『前のコンラッドを消す』・・・・って、どういうことだよ?


 コンラッドの中では、眼鏡をかけてる『今のコンラッド』と掛けていない『昔のコンラッド』がそれぞれ別の人格として存在してるってことなのか・・・・?


 コンラッド本人が、自ら『前の俺を消してやる』なんて発言してるんだから、そう解釈しても間違いないよな?!



 でも、そんな小説みたいな話が起こりうるのか?いや、待てよ。コンラッドの掛けてた眼鏡・・・・。あれは、ただの眼鏡じゃなかったよな。


 全身黒尽くめの男に貰ったとか言ってたし。眼鏡をかけてから、性格が変わったし。なぜか、眼鏡を外そうとしなかったし。やっぱり、変だよな、絶対、あの眼鏡!!


 も、もしかして、コンラッドは眼鏡の魔力に取りつかれてるかもしれない?!



 そうだよ、絶対そうに違いない!!俺が、助けてやらないと!!前の彼が消されてしまう。



 ・・・・・前の彼が消される・・・・・?!


自分で、思いついた仮定に、ひどく心が揺れ惑う。


 それって、もうあの春風みたいに俺を包んでくれる、名付け親でもある彼がいなくなっちゃうってこと?
 あの優しい彼が!!


 嘘!!そんなの嫌だ!!そんなこと赦せない!!


 俺は、コンラッドに全身全霊で叫ぶ。彼が一言さえ俺の言葉を、聞き逃さないように。


「コンラッド!!あんた、その眼鏡に操られているんだよ!!本当は、眼鏡を外したいけど、外せないんだろ?!自分の意思では、どうしようもできないんだろ?!助けがいるんだろ?!」


 けれど、眼鏡をかけたコンラッドは、俺のことを鼻先で笑い、一蹴する。


「ふっ。今の俺が、そんな間抜けに見えますか?自分の意思で、眼鏡も外せないほどの間抜けに。そんなわけありません。自分の意思で、眼鏡を外さないだけですよ。操られてなどいません」


 ここで、怯んではいけないと俺の中の熱いものが訴える。


「そんなの嘘だ!!絶対操られてるんだって!!俺の言うことを信じろよ、コンラッド!!じゃないと、じゃないと・・・・・もう前のあんたに会えなくなっちゃうじゃないか!!」


 俺の言葉に、目を見開いて立ち尽くす、眼鏡をかけたコンラッド。
 彼を見据えたまま、ほとばしる熱い思いを叫ぶ。


「お願いだよ・・・お願い・・・・・コンラッド!!前の優しいあんたに会いたくてたまらないんだ!!俺のことをそっと抱きしめて、安心させてほしいんだ」



 俺の言葉を聴き終えた途端に、眼鏡の彼らしからぬ表情をする。ひどく傷ついた痛ましい顔。いつもの自信たっぷりで余裕綽々の面影が微塵も感じられない。



コンラッド?何て顔してるんだよ。どうして、そんな傷ついた顔をするの?


 けれど、彼は何かを強く決心したかのように再び、不敵な笑みを浮かべる。


「ますます、前の俺を貴方の前に出したくなくなりました。二度と、彼が貴方の前に現れることはないと思ってください、ユーリ」


 彼の言葉に、俺の灼熱の魂が燃え上がる。絶望と怒りで俺は我を失った。身体中を駆け巡る血液が沸騰し、俺の周りを眩い光と一陣の風が取り巻く。



 嫌だ、嫌だ、いつも俺を見守ってくれた優しい眼差し、瞳、手が消えるなんて・・・・。俺の名前をつけてくれた彼が消えるなんて・・・・嘘だ・・・・!!そんなこと、俺が赦さない!!





 俺に、魔王が光臨しようとしていた。


 けれども、コンラッドの異変に気づく。


 彼は、苦痛に顔を歪めて、こめかみを手で押さえこみ、地面にうずくまっている。


 彼の異変を見ると、俺の周りを取り囲んでいた光と風が、静かに消え去る。



 「コンラッド!!」
 俺は、慌てて彼に駆けつける。


 「なっ・・・!!」
 俺は、コンラッドの変わり果てた姿をみて凍りつく。



 瞳孔が開ききっている瞳。うつろな瞳。何も映していない、人形のような瞳。
 薄く開かれた唇。自分の意思で口を結ぶこともままならない。
 身体も弛緩しきっていて、だらりと情けなく俺にしなだれかかる。
 規則的に聞こえる胸の鼓動だけが、彼が生きていることを証明している。


「コンラッドー!!!」
 俺は、彼を胸に抱きしめて大声で泣き叫ぶ。



 ただならぬ事態を察知して、血盟城の主要メンバーが執務室に集結する。





 ギーゼラに治療を施されても意識を取り戻さないコンラッド。
 瞳を開けたままベッドに横たわるコンラッド。
 俺は彼の瞼をそっと閉じさせると、優しく彼の手を握る。




 一体どうしたんだよ!コンラッド。俺、必ずあんたを助けてやるからな!




 第八話  =完



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