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第一話 俺の下僕は美系ヴァンパイア?
もしかして?!いや、きっともしかしなくても、あの背格好と眼鏡と、俺と同じあの制服。
そう、このいかにもお坊ちゃま風のブレザーの制服。
タイの代わりに、紺の紐リボンに、オフホワイトのブレザーにモノトーンの千鳥格子のパンツ。ミッション系高校とはいえ、これはないだろ?!リボンと、白のブレザーって、なんだよ?俺、詰襟学生服希望だったんだけど。
絶対、お袋の趣味だ。小中高一環のエスカレーター式お坊ちゃま校に入れられたのが、運のつきだ。
渋谷家は、決して大金持ちってわけじゃないんだけど、異様に熱心なクリスチャンだったりする。そのせいで、こんなミッション系お坊ちゃま学校にいたりするんだけど。俺は、けっして敬虔なクリスチャンってわけじゃない。だって、ミサの授業のおかげで、普通科目を学ぶ時間が減るのが嬉しいくらいだし。
とにかく、人呼んで『不良さん、カツ上げして下さい』制服を着て、まんまと不良に絡まれている彼は、級友の村田健だ。
見なかったふりをするんだ、渋谷ユーリ、と頭のどこかで声がするも、1対多数で絶対不利な彼を見捨てるわけにもいかず・・・・・・。
気が付いたら、声を上げていた。
「ああっと、村田! 宿題のわかんないとこ、教えて欲しいんだけど」
橙と紺が混ざったような夕暮れの空の下、公園の木に背を預け、不良に囲まれる彼に、少々無茶なお願いをしてみた。
不良の虚をついてみる作戦だったんだけど。
「はぁ~?」
一斉に俺に突き刺さる呆れた視線。明らかに作戦失敗だ。たださ、村田まで呆れ顔って、どういうことだよ?!
4人の不良たちが、一斉に俺に向かってじりじりと近寄ってくる。
「兄ちゃん、今どういう状況か分かってて、そんなのんきなこと言ってんの?」
「ええっと、そ、そのですね~、平和的に解決できないかなぁ、みたいな? さりげなく、村田を連れ出せないかな~、なんて、ささやかな希望だったりしたわけですが・・・・・・」
俺は、掌を相手に向けてひらひらと手を振り続ける。けれど、ついに俺との間合いを詰めた金髪の兄ちゃんが、俺の胸倉を掴んだ。
彼の制服からすると、悪評高い近所の高校だ。彼らの小遣いの大半が、うちの在校生の財布から巻き上げたものだという噂まである。
ふいに、砂を踏みつける軽快な靴の音が響いた。
なんと、村田が一目散に公園を去っていくではないか。
そ、そんなぁ、村田、あんまりだ~!!
明日の学食はおごらせてやる。無事に、学校に行けたらの話だけど。
走り去る友人の薄情な背中を、恨みがましく見守るも、ごつい手が俺の顎を掴みあげて、そのギャル男な顔に向きなおされる。
その上、ドレッドヘアの男も、坊主の男も、パンチパーマの男も俺をぐるりと取り囲む。なんて、ファンキーな集団なんだ。
「おい、お前のせいで、もう一人の大事なカモが逃げたぞ。二人分の奉納金をもらおうか?」
奉納金って、何だよ。お前んちは神社か何かか?無粋なつっこみは喉の奥にとどめておいた。そういうと、彼は俺の尻ポケットから財布を抜き出した。
そして、中身を確かめて、彼はがっくりと肩を落とした。
「なんだよ、お前本当に、聖ルイス学園の生徒かよ?札が一枚もないってどういうことだよ?」
「すんません、期待に添えなくて。いや、かたじけない。うちは、決して社長の息子とか、弁護士、医者の息子じゃないんで」
「使えねーなっ。うーん・・・・・けど、お前、なかなか可愛い顔立ちしてんな?」
ガングロお兄さんの茶色い指が俺の顎を掴み上げる。
「ひっ?!」
思いのほか、意外な展開になりだして、俺の額に嫌な汗が滲む。
背筋が、凍る。渋谷有利、15歳にして、貞操の危機?!
「そうそう、俺も、最初見たときから、結構いけるって思ったんだよね」
「だ~よな。マジ、俺は好みかも」
「これは、別の意味で使い道がありそうじゃんっ」
ファンキーな不良連中は、皆重大なことを忘れているに違いないぃぃ。
「お、俺、男だから!! マジ、ありえねーからっ!! 誰か、ほんと、気づいてください~~!!」
必死に、彼らに俺男宣言をしてみるも、彼らは好色な笑みを浮かべ続けている。そして、ファンキーな残り3人も俺ににじり寄ってくる。
同じ高校生とは思えないほどに、彼らの体格は発達している。その威圧感に、圧倒されてしまう。
「そんなに、怯えんなよ? 可愛がってやっから」
「そうそう」
彼らは、にやにやと笑いながら、それぞれが俺の身体に触れてくる。
誰だよ、ケツ撫でた奴はーー?!
「ぎゃぁぁぁ!! 俺には、そういう趣味はありません~~~!!!」
目を硬く瞑って、一思いに叫んだ。
「――?! ええっ? ええ、ええぇぇ?!」
突然、ふわりと身体が浮いたような気がして目を開いた。すると、俺は遥かかなた紫紺の空の上に飛びだっていた。
ファンキー集団の頭が米粒のごとく小さく見える。僅か目を3秒瞑っただけで、こんなに景色が変わるなんて?!
そりゃ、貞操の危機は免れたわけで万々歳!! だよ。
でも、なんで?! 俺って、スーパーマンだったの? それとも、サイヤ人か?空を飛べるなんて、知らなかったよ。あはは。
「大丈夫でしたか?」
俺は、若干壊れかけていた。けれど、ふいに俺の耳元に、女子が悩殺されそうなささやき声が聞こえた。
「ええっ?!」
顔を捻って後ろを見上げると、王子みたいなキラキラの笑顔の美青年と眼が合った。碧い眼というわけではないけれど、月光に照らされるその彫の深い端整な顔立ちと、抜けるように真っ白な顔から、西洋人と思われた。
あまりのことに、気づかなかったけれど、俺はその男前のスーパーマン、もしくはサイヤ人に後ろから抱きしめられながら、空を飛んでいたらしい。
「すみません、いきなりで驚きましたか? 空を飛ぶのは初めてでしょう? 今、安全なところまで移動しますから」
「えと、はい」
いろいろ聞きたいところは満載なわけだった。けれど、飛行機でしか空を飛んだことのない俺(そりゃ、当然だ)は、次々と飛び込んでくるその景色や、身体にダイレクトに吹き付ける強風に圧倒されて、ただ大人しくしているだけだった。
だって、地上500メートルくらい?(何せそんなの高すぎてよく分からない)上からの景色は、気が遠くなりそう(意識を失いそうなくらい)な絶景だし。
暮れたばかりの紫がかった紺の空の下、オフィス街の高層ビルの明かりがきらびやかに見渡せた。
「寒くないですか?」
耳元で、再び甘い声が囁かれる。どうやら、彼はスーパーマンである前にジェントルマンであるらしい。
「かなり、寒いです」
正直に答える俺を、彼は自身が身に着けていた特大マントでぐるりと俺を包み込む。
マントを身に着けてるってことはやっぱり、スーパーマン説有力か。
てか、俺に巻きつけたら、飛べないんじゃ?!
それに、こんな突飛な状況とはいえ、見ず知らずの人(もはや人と呼んでいいのかも不明)とうす布に包まれて、身体をぴったりと密着させているのは、とてつもなく恥ずかしい。いくら美形とはいえ、男みたいだし。
「す、すみませんです」
顔が火照って、体温が上昇したおかげで、寒さは軽減した。けれど、こんなこっぱずかしい想いから早く解放されたいっ。
「さぁ、着きましたよ」
俺の願いはわりと早く聞き入れられたみたいだ。
俺は、彼に抱きかかえられながら、高層ビルの屋上に降り立った。
初めて、三日月をバックに佇む彼の全身をみて息を呑んだ。そして、俺はそそくさと後ずさりをした。
美形なのに変わりはないけれど、たて襟の漆黒のマントを悠々と風になびかせて佇む長身の彼は、どこからどうみても―― 黄金バットもとい、カッコよく言うとヴァンパイア、だ。
たて襟のマントの下に覗く、中世ヨーロッパの貴族みたいなレースのついた白ブラウスといい、黒のズボンといい、黒の皮靴といい、まさにテレビや漫画で見たままの姿だ。
ヴァンパイア、それはなぜか渋谷家で、一番毛嫌いされている怪物のひとりだ。
そして、渋谷家で育った俺も、当然、ヴァンパイア嫌いに洗脳されている。
どうしよう、スーパーマンでもサイヤ人でもないらしい。少なくとも正義のヒーロー系だと思っていた彼が、あの渋谷家の誰もが嫌うヴァンパイアだったとは!!
ヴァンパイアなんて、物語の中の架空の人物だと思っていたのに、こんな思いがけず、出くわすなんて?!
ど、どうしよう?!ヴァンパイアといえば、お袋と親父がいつもこんなことを言ってたよな。生きたまま屍のようにさせられるって。それも、魂は二度と救われることはないって。
お、俺、これから生きながらにして地獄を永遠に味わい続ける拷問を受けるんだ。
で、でも、こんなときまで律儀におかしいと思うけど。彼は俺を不良から助けてくれたのは事実なんだ。例えこのあと、無残に生き血を啜られるのだとしても。
俺の中の善良な市民的感覚は、生死に関わる局面でさえ、払拭できないみたいだ。
「え、えと・・・・・さっきは助けてくれて、あ、ありが、とうございます」
それでも、恐怖が拭えなくて、歯の根が合わない。がくがくと身体を震わせて、情けない声で、途切れ途切れに礼を言うのが精一杯だった。
「ひっあっ」
急に間合いを詰められた。いや、間合いを詰められたなんてものじゃない。まるで、初めからその体勢でいたかのようだ。俺は、いつの間にか彼の広い胸の中に抱きしめられていた。
やはり、人間離れしたこの動作はヴァンパイアに違いない。
「そんなに怯えているのに、無理をして。貴方は、やはりとても優しい方ですね。でも、無理はしないで下さい」
「あ・・・・・、ありがとうございます」
穏やかで甘い彼の囁きに、どこか懐かしい響きを感じた。
その優しい声を聞いていると、彼がヴァンパイアだなんてことを忘れてしまう。
彼の優しさに、包み込まれるみたいに安心してしまう。
がたがた震えていたはずの身体は、落ち着きを取り戻していた。
こんないかにもヴァンパイアみたいな格好をしているけれど、実は、そうじゃなかったらいいのに。
思考の片隅で、そんな思いが沸き起こった。
「え・・・と、貴方は本物のヴァンパイア、ですか?」
違うって言ってくれたらいいのに、と思いながら俺は、そう尋ねた。
彼は、一瞬目を丸くすると、次には悪魔的で魅惑な笑みを見せた。端整な薄い唇の端からうっすらと牙が覗いていることに気が付いて、身体が硬直した。
「そうですよ。私は、ヴァンパイアです。でも、とても特殊なヴァンパイアなんです」
「・・・・・・特殊?」
やっぱり、彼は否定しなかった。正真正銘のヴァンパイアなんだ。
その腕を振り払って、一目散に逃げないといけないところなのに、なぜか彼の言うことが気になった。
「ええ、とても特殊なヴァンパイアです。私は、ずっと貴方をただ一人探していました」
「ど、どうして、俺なの?!」
「それは、貴方が私の御主人様だからです」
俺の頭の中がフリーズした。
御主人様・・・・・・、秋葉原で飛び交うその単語。
それをまさか、フリフリレースメイド服の女の子からでなく、キラキラ王子顔のヴァンパイアから言われるとは―― !!!!(シャツはひらひらだけど)
「う、嘘だ、嘘ーー。ヴァンパイアに遭って空を飛んだだけでも、俺一生分の奇跡を使い切った感が満載だよ。それなのに、あんたみたいな男前なヴァンパイアの御主人様になるなんて、そんな、無茶苦茶なことがあってたまるかーー!!」
「嘘なんていわないで。俺は、もう200年近く貴方を探していたのだから。本当に、貴方に遭えてよかった」
彼は、その甘い声で感慨深く囁いて、ひときわ強く胸の中に俺を抱きしめた。彼の広い肩幅や厚い胸板に護られて、自分がひどく頼りない存在に思えた。
まるで、自分が繊細な女の子にでもなったみたいな気がした。
彼から、すごく、大切にされているのが伝わってきた。会って間もないのに。
親以外の誰かから、こんなに大切にされているのを実感するのが初めてだった。
だから、俺は顔が真っ赤になった。
「わ、わわ、わかったから。だから、腕を解いてよ」
「よかった、認めてくれるんですね。はい、俺の可愛い御主人様」
彼は腕を解いたと同時に、跪いて俺の手の甲にキスをした。ベロア素材の漆黒のマントがバサリと乾いた音をたてて地面につく。
異常に素早い動作(それも過剰気味なスキンシップだし)は心臓に悪い。その上、凍りつきそうなほどに冷たい手や唇に、背筋がぞくっとした。
いつの間にやら、俺はこの美形のヴァンパイアに振り回されまくりだ。
「うう。俺、渋谷有利っていうから、せめて名前で呼んでくださいです」
こんな美形で、長身な外国人ヴァンパイアさんから御主人様呼ばわりされたら、俺の人生が大幅に狂いそうだし。
もはや、彼がヴァンパイアという恐怖は完全に消え去っていた。むしろ、どっと疲労感が押し寄せた。
「はい、ユーリ」
けれど、俺の名を嬉しそうに呼んで微笑む彼は、闇を吹き飛ばす勢いで爽やかだった。絶対、ヴァンパイアとは思えない。
オフィス街の高層ビルの屋上で、彼は、月光を受けて切れ長の瞳に銀の星を散らせて、甘く瞳を細めている。
「俺のことは、コンラートと呼んでくださいね。ほら、呼んでみてください?」
そういうと、彼は再び俺を抱き寄せた。す、スキンシップ多すぎっ!!
「コンラ、ト」
どぎまぎして、どもってしまう。
「言いにくいようでしたら、コンラッドとお呼びください」
「こ、コンラッド・・・・・・」
甘いため息と共に、彼は俺の身体にきつく腕を巻きつける。
「ユーリ。貴方の魂が果てるときまで、貴方の側にお仕え致します、御主人主様。私は貴方の忠実なる下僕です」
腰にくる甘い声で、そっと耳元で囁かれる。甘い吐息が耳にかかって、ゾクッとする。俺、女じゃないのに、女の気持ちが今日一日で分かった気がする。それって、どうよ?
「いや、それに、下僕ってなんだよ?!」
「言葉の通りですよ、ユーリ。貴方のしたいことなら、俺が何でもしてあげる。俺に、して欲しいこと、ありますか?」
コンラッドは、すごくいやらしい顔をして、俺の顎先を冷たくて長い指で掴み上げる。
「いやいやいやいや、そんな、そんな、滅相もございません!!」
顔から火を噴く勢いで、全力で否定した。駄目だ、なんかコンラッドって格好良すぎだし、スキンシップ過多で、調子が狂う。
全力で否定する俺に、彼は少し意地悪に乾いた笑いをみせる。悪魔的で魅惑な笑みを。
「そんなに、真っ赤になって。ユーリは、一体どんな想像をしたんですか? 俺に何をされるのを想像したんですか? ユーリは、可愛らしい見かけによらず、いやらしいんですね」
彼は、口角を片方だけ上げて、うっすらと牙を覗かせて、長い睫毛に縁取られる瞳を甘く細める。
彼の長い指先が、俺の首筋を悪戯に撫で上げる。
「なっ・・・・・!!・・・コンラッドのば、か」
恨みがましく彼を見上げると、にっこりと王子みたいに爽やかに微笑まれる。
そして、ふいにその瞳に熱いものが窺えた。
「ユーリ」
いつになく真剣な彼の声と瞳に、なぜか身体がカッと熱くなる。彼の瞳に捉えられたように、動けなくなった。
「ユーリ、忠誠の徴に御主人である貴方の血液を下さい。嫌・・・・ですか?」
そりゃ、嫌に決まってるだろーー。ふつう。
でも、サラサラのダークブラウンの短髪を垂らして、首をかしげる彼の瞳はひどく物憂げで・・・・・・。なぜか、胸を締め付けられるみたいな懐かしい感じがして。
俺、どうかしちゃったんだと思う。
「いいよ・・・・・・、コンラッド」
気が付いたら、そんな返事をしてた。
「――っ、ああ、っぅ」
首筋に鋭い痛みが走ったかと思うと、彼の両腕が俺の腰にきつく巻き付いてきた。どくどくと、自分の心臓の拍動が頭を割りそうなくらいの大音量で鳴り響く。
身体中の血が物凄い速さで、一点へと駆け上っていくのが分かる。コンラッドの口元へと迸る、血液の洪水。
一度に血液を奪われていくせいで、激しい酸欠状態に陥る。意識が朦朧として、漆黒の空がぐにゃりと曲がる。両腕はだらしなく下がる。それどころか、身体中から力が抜けていく。
唐突に、彼の唇が離された。闇夜に、二人の呼吸が荒く響いた。
ぼんやりと彼を見つめると、彼は唇についた俺の血を舌なめずりしていた。
ひどく卑猥な光景に、頬が紅潮した。
けれど、本当の受難はその直後だった。
吸血鬼の本能を目覚めさせたらしい彼は、とんでもなくエゴイストで我が儘で、エロかった。
続きは、裏面へどうぞ。
少し、SMチックですが。御免なさい(汗)
★あとがき★
ええっと、いいところ(?)で表終了です。
ヴァンパイアっぽくなっていればいいのですが・・・・・・。
コンラッドは、基本はナイトっぽい感じにしたいのですが(いやけっこう意地悪かも)、血を吸うとエロイみたいな話にします。
とんでもない話ですが(汗)、お付き合いくださったら嬉しいです。
web拍手ありがとうございました^^
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