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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2009/05/29 (Fri)                  ショートストーリー 第八編
第八編  秘密の花園
※コンユです。二人は付き合っていない設定です。



 今日は、晴れやかな五月晴れ。

 
 初夏を思わせる陽気、爽やかな風が人々を外へいざなうかのようだ。


 俺は、ギュンターの授業を何とか抜け出そうと、うずうずしていた。そんなとき、コンラッドが俺に助け舟を出してくれた。


「陛下、最近雨が続いていたので、今日のようないい天気の日に城下街の視察にでも行かれたらどうですか?」
 爽やかな笑顔で微笑むコンラッド。


 大賛成!!ありがとう、コンラッド!!!まるで、俺の心の声が聞こえてたかのようなグッドタイミング!!
「だって!!ギュンター!!ちょっと、視察に行ってまいりま~す!!」


 俺は、椅子から飛び上がるように立つと、コンラッドの手を引っ張って、部屋を出る。


 一連の動作にかかった時間、僅か30秒。我ながら、俊敏なこの動き。
 にっこりと、自慢げにコンラッドに微笑みかける。



 えぇ、とても俊敏な動作ですよ、ユーリ
 なんて、声が聞こえてきそうな笑顔で見つめ返してくるコンラッド。



「あぁ"~,べ、べいくわぁぁぁぁぁ~~~!!」


 遥かかなたで、ギュンターの雄叫びが聞こえた気がした。 





 ノーカンティの背中に二人で一緒に乗って出かけることになった。


 だって、俺がアオに乗っていくからっていうのに、コンラッドが心配するんだもん。なんか、昨日までの雨で地面がぬかるんでるから、危ないっていうんだ。


 まったく、過保護だぞ、名付け親~。


 俺は、ちょっとだけいじけて、コンラッドに回していた腕をほどいてみる。


 驚いた顔をして、コンラッドがこちらを振り返る。
「どうしましたか?陛下?」


 俺は、むっとして答える。
「別に。それに、陛下って呼ぶなよ、名付親~」 


 若葉のように爽やかな笑顔で微笑むコンラッド。


「おやおや、反抗期ですか?ユーリ。危ないですから、俺に手を回して、しっかりと掴まっていてください。貴方の身体に何かあっては困りますから」


 緩やかに眼を細めて、慈しんだ瞳で見つめるコンラッド。いつもの甘い声で囁かれる。
「貴方は、眞魔国にとっても俺にとってもかけがえのない人ですから」



 う・・・俺、この声に弱いんだよな。すごく、甘くてくすぐったい、優しい声。この声を聞いていると、何でも、素直に彼の言うことを聞いちゃうんだよな。



 俺は、しおらしく彼に腕を回して、その身を彼の背中に預ける。やっぱり、コンラッドには敵わないよ。




 コンラッドの背中の温もりを感じながら、ノーカンティに揺すられて石畳の上を進んでいく。


 しばらく進むと、目の前に一面の花畑が広がる。
 いつの間にか俺たちは、城下街の外れにある、野原に辿り着いていた。


「うわぁ、すっげ~、綺麗だな。コンラッド、ちょっと寄っていこう?」


「はい、陛下」
優しく微笑むコンラッド。


「だから~、陛下言うなよ!名付け親!」



 くすくすと、可笑しそうに微笑むコンラッド。



 あ、今の絶対わざとだ、わざと、陛下っていったな。
 むすっと、コンラッドを睨む。


 甘い笑顔で、甘い声で、俺に答えるコンラッド。
「すみません、ユーリ。さぁ、俺の手に掴まってください」


 いつの間にか、ノーカンティから降りていたコンラッドは、俺に手を差し出して、俺を淑女のようにエスコートする。


 もう、コンラッドってば全部が甘いんだから。俺が、女だったらとっくに恋に堕ちてるよ。


 
 彼の形のいい手に引っ張られて、馬から下りるとき、俺はバランスを崩してよろめく。すかさずに、コンラッドは、俺を胸の中に抱き留める。


「わ・・・・っと、と、ゴメン、コンラッド。せっかく手まで貸してくれたのに、どじっちゃって」


 ん?あれれ?さっきから俺ずっと、コンラッドに抱きしめられたままなんですけど。


 コンラッドは、なかなか俺を解放してくれない。俺はいつまでも、ずっと暖かい胸の中に抱きしめられる。薔薇の甘い香りが漂う中で。


「こ、コンラッド??どうしたの?」
 俺の声に、我に返ったように、いつもの笑顔で俺に微笑むコンラッド。


「すみません、ユーリ。さぁ、では、野薔薇を観に行きましょう」


 なんとなく、上手く答えをかわされた気がするんだけど。でも、まぁ、いつもの笑顔だし、なんてことないかな。


「少し、地面がぬかるんでいるので気をつけてください」
 そういうと、コンラッドは俺の手を握って、野薔薇の中に突き進んでいく。暖かくて、大きな手。


 気がつくと、いつも俺はコンラッドに大切に守られている。なんだか、ちょっとくすぐったい気持になるくらい大切に守られている。


 なんか、ちょっと頭がぼ~っとしてきたかも。


 俺は、くすぐったい気持ちを振り払うように、辺りを見回す。
 色とりどりの薔薇が、一面に咲き誇っている。


「へぇ、眞魔国にも薔薇ってあるんだな。一度にこんなたくさんの色の薔薇が見れるところなんて、そうそうないよな?すげ~、綺麗だな」


 こちらを振り返って、ふわりと微笑むコンラッド。背後の薔薇が映えて、綺麗だな。


「えぇ、これだけの色が一度に揃うのは珍しいでしょうね」



 薔薇の中を、コンラッドに手を引っ張られて、どこまでも進んでいく。現実離れした、幻想的な世界。パステル調の薔薇、原色の薔薇、純白の薔薇が華々しく咲き乱れる。薔薇の上品な甘い香りが辺りに立ち籠める。



 その中に、ひときわ眼を引く、紅色の薔薇があった。普通の赤よりも、一層濃くて赤い、真紅の色。


 うわぁ、これだけたくさんの薔薇がある中で、特にこの薔薇は目立って見えるな。こんなに、鮮やかな赤色見たことがない。


「コンラッド、ちょっと待って」
 俺は、その薔薇をじっくり観ようとして、コンラッドに呼びかける。


 ゆっくりと、茎をつかんで花弁を観察しようとした折、薔薇の刺が人差し指にちくりと刺さる。


 コンラッドは、片膝を着いて俺の右手をそっと掴む。
 ぷくっと、血が滲み出ている俺の人差し指にそっと唇を押し当てて、舌で血を舐めとる。


 こ、ここ、コンラッド?!うわぁ、俺、今顔から火が出てるよ、絶対!!


「こ、コンラッドさん?!」


 真っ赤な顔でコンラッドを凝視する。


 にわかに、コンラッドが立ち上がり、俺を抱きしめる。先程よりも、きつく、身体が軋むくらいに。



 耳元で、あの甘い声でそっと囁かれる。
「貴方に死ぬほど恋焦がれています」


 こ、コンラッド?!


 突然の、コンラッドの愛の告白に驚きを隠せない俺。彼の甘い声が頭の中でリフレインする。


 俺は眼を白黒させて、慌てふためく。


「ちょ、ちょっと、ちょっと?えぇ?コンラッド?」



 ほどなくして、俺の肩を緩く掴むと、いつもの笑顔で微笑むコンラッド。



「紅色の薔薇の花言葉です」


 な、なんだ、びっくりした。そうだったんだ。俺はてっきりコンラッドに告白されちゃったのかと思ったんだ。


「もう、コンラッド、びっくりさせるなよな~!」


 安堵して言い放った俺の言葉に、どことなくコンラッドの顔が曇った気がするのは気のせいか?






 けれど、その日の夜。



 俺は、いっこうに眠りにつけそうになかった。



 なぜって、あのコンラッドの甘い声がいつまでも、俺の心に響いていたから。



『貴方のことを、死ぬほど恋焦がれています』




第八編 =完

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