2009.4.22設置
『今日からマ王』メインです。
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第十話 魅惑の果実
※眼鏡コンラッド×普通コンラッドです。ご注意ください(汗
コンラッド視点です。
ん・・・ここは、どこだ。こんな殺風景で奇妙な景色、眞魔国でも見たことがない。
俺が目を覚ますと、荒涼とした砂原に横たわっていた。風一つ吹かない、もの悲しい闇の中に。抽象画のような世界の中に。
ひどく、喉が渇いて苦しい。
ふと、目の前を見ると、熟れた果実がひとつごろん、と転がっている。
吸い寄せられるように、俺は赤黒い果実に一口かじりつく。
心身が、芳醇な果実の香りに満たされていく。
身体が痺れて眼が霞む。
「く・・・・っ」
きつく眼を閉じる。
「な・・・・っ!!」
再び眼を開けた俺の前に、信じられない光景が浮かび上がる。
眼鏡を掛けたもう一人の俺が目の前にいる。
なぜ、なぜだ。どうして、彼がここにいる?!俺の身体を占拠して、俺の意識を精神の淵に追いやった彼が。
不穏な気配を感じ取り、剣を抜こうとするも身体の痺れが尾を引いて、思うように動けない。
眼鏡の俺は、足元の砂を気にするもなく優雅な足取りで俺に差し迫る。不敵な笑みを俺と同じその顔に携えて。
くそ・・・・どうして、動けないんだ・・・・・・!
俺は、地面に這い蹲ったまま、彼を睨み上げる。
彼は、俺の眼前に立ち止まる。仁王立ちで、腕を組み、遥か頭上から俺を見下す。眼鏡の奥の瞳が鋭く細められる。
「そろそろ、本格的に貴方が邪魔になってきました。消えていただけないですか?」
彼は、おもむろに鞘から黒光りする刃を抜く。
「何を考えている!!俺はお前でもあるんだぞ!!自分を切るというのか?!」
彼は、俺を一瞥して冷笑する。
にわかに、剣を空高く振り上げる。鈍い光を放ちながら、振り落とされる刃。
刃の空を切る音が闇の中で鋭く唸る。
くそ・・・動けない!!!!何もできずに終わるのか!?
反射的に、眼を瞑る。
けれど、予想外の展開に俺は愕然とする。
俺の服が切り裂かれ、肌が顕わになっていた。ところどころに、服の切れ端が残り、それが一層卑猥さを増幅させる。
彼は、何をしようとしている?彼の真意が掴めない。
「貴様・・・・・・っ!!自分を辱めて楽しいのか?」
「く・・・あははは。さすが、俺。この状況下でよく楯突けるものです」
すっと、眼を細めると優雅に微笑むもう一人の俺。
「自分を切るわけがないじゃないですか。俺にもなにかあったら困りますからね。ただ、貴方に教えてさしあげたかったのですよ。貴方の中に潜む欲望がどんなものなのかを、ね」
にわかにしゃがみこみ、俺の顎を掴み上げると、俺に不敵な笑みをこぼす。耳元で低く、淫靡な声で囁く眼鏡の俺。
「貴方が、ユーリをどうしたいと思っているのか、貴方の身体に教えてあげますから」
彼の言葉に、かっと全身が熱くなる。何を考えている?!
「そんなことをして、貴様にいったい何のメリットがある?自分を辱めて何が面白い?ふざけた真似はよせ!」
彼の乾いた声が響く。
「メリット?そんなの、簡単じゃないですか。貴方という人格を俺の中から消せるということですよ。貴方が俺に同調さえしてしまえばいい。貴方もユーリに対する強い欲望を当然のものとして認めればいい。その想いをユーリに曝け出そうと思うようになればいい。そうすれば、きっと今の俺がオリジナルの人格になる」
眼鏡の俺の、ユーリへの強い独占欲が伺える。その独占欲は、元の人格の俺まで破壊しようとしている。
けれどもこんなことで、引き下がるわけにはいかない。私も、ユーリを誰よりも愛している。彼に忠誠を尽くしている。今の自分のままで、彼を優しく包み、励まし、大切にしたいんだ。
ユーリに、欲望などを持ってはいけない。無垢な彼を穢すことは赦されないんだ。
彼に、安らかな愛を与えて、安心させたいんだ。
何よりも、ユーリが望んでいるのは、そんな俺なのだから。肉親のように絶対的に無条件で降り注がれる愛。その期待を裏切ってはいけない。
「俺は、お前にどんなことをされようとも、ユーリの前からいなくなりはしない。断言する。清らかな愛で彼を慈しむまでだ」
はぁ、と盛大にため息をつくもう一人の俺。
俺の顎を掴む指に力がこもる。
その痛みに、俺は顔をしかめる。
「貴方には、ほとほと呆れ果ててしまいますよ。いいかげん、自分の中の汚い部分を認めたらどうですか。本当は、貴方はユーリの全てを手に入れてしまいたいのでしょう。清らかな愛なんて物じゃない、エゴイスティックな欲望の塊を色濃く持ち合わせているくせに」
そんなことはない!!と強く否定したい。けれど、ユーリに対する日々増幅する利己的な愛に苛んでいたのも事実だった。
けれど、俺はそれを決して実行に移そうなどとは思わなかった。それが、もう一人の俺との決定的な違いだ。
俺は、もう一人の俺を睨みつけながら、言葉を弾き出す。
「だが、俺はその想いをユーリにぶつけることは決してしない。どんな些細な可能性でも彼を傷つける可能性のあることは、排除する。それがどんなに俺を苦しませるとしてもだ!」
眼鏡の俺が、忌々しげに俺を睨みつける。
瞳の奥に妖しい光を宿しながら。
「いいですよ、言葉で言っても理解してもらえないなら、その身体に教えてやるまでです」
裏へ続く。
ヒント、右下のほう。
※眼鏡コンラッド×普通コンラッドです。ご注意ください(汗
コンラッド視点です。
ん・・・ここは、どこだ。こんな殺風景で奇妙な景色、眞魔国でも見たことがない。
俺が目を覚ますと、荒涼とした砂原に横たわっていた。風一つ吹かない、もの悲しい闇の中に。抽象画のような世界の中に。
ひどく、喉が渇いて苦しい。
ふと、目の前を見ると、熟れた果実がひとつごろん、と転がっている。
吸い寄せられるように、俺は赤黒い果実に一口かじりつく。
心身が、芳醇な果実の香りに満たされていく。
身体が痺れて眼が霞む。
「く・・・・っ」
きつく眼を閉じる。
「な・・・・っ!!」
再び眼を開けた俺の前に、信じられない光景が浮かび上がる。
眼鏡を掛けたもう一人の俺が目の前にいる。
なぜ、なぜだ。どうして、彼がここにいる?!俺の身体を占拠して、俺の意識を精神の淵に追いやった彼が。
不穏な気配を感じ取り、剣を抜こうとするも身体の痺れが尾を引いて、思うように動けない。
眼鏡の俺は、足元の砂を気にするもなく優雅な足取りで俺に差し迫る。不敵な笑みを俺と同じその顔に携えて。
くそ・・・・どうして、動けないんだ・・・・・・!
俺は、地面に這い蹲ったまま、彼を睨み上げる。
彼は、俺の眼前に立ち止まる。仁王立ちで、腕を組み、遥か頭上から俺を見下す。眼鏡の奥の瞳が鋭く細められる。
「そろそろ、本格的に貴方が邪魔になってきました。消えていただけないですか?」
彼は、おもむろに鞘から黒光りする刃を抜く。
「何を考えている!!俺はお前でもあるんだぞ!!自分を切るというのか?!」
彼は、俺を一瞥して冷笑する。
にわかに、剣を空高く振り上げる。鈍い光を放ちながら、振り落とされる刃。
刃の空を切る音が闇の中で鋭く唸る。
くそ・・・動けない!!!!何もできずに終わるのか!?
反射的に、眼を瞑る。
けれど、予想外の展開に俺は愕然とする。
俺の服が切り裂かれ、肌が顕わになっていた。ところどころに、服の切れ端が残り、それが一層卑猥さを増幅させる。
彼は、何をしようとしている?彼の真意が掴めない。
「貴様・・・・・・っ!!自分を辱めて楽しいのか?」
「く・・・あははは。さすが、俺。この状況下でよく楯突けるものです」
すっと、眼を細めると優雅に微笑むもう一人の俺。
「自分を切るわけがないじゃないですか。俺にもなにかあったら困りますからね。ただ、貴方に教えてさしあげたかったのですよ。貴方の中に潜む欲望がどんなものなのかを、ね」
にわかにしゃがみこみ、俺の顎を掴み上げると、俺に不敵な笑みをこぼす。耳元で低く、淫靡な声で囁く眼鏡の俺。
「貴方が、ユーリをどうしたいと思っているのか、貴方の身体に教えてあげますから」
彼の言葉に、かっと全身が熱くなる。何を考えている?!
「そんなことをして、貴様にいったい何のメリットがある?自分を辱めて何が面白い?ふざけた真似はよせ!」
彼の乾いた声が響く。
「メリット?そんなの、簡単じゃないですか。貴方という人格を俺の中から消せるということですよ。貴方が俺に同調さえしてしまえばいい。貴方もユーリに対する強い欲望を当然のものとして認めればいい。その想いをユーリに曝け出そうと思うようになればいい。そうすれば、きっと今の俺がオリジナルの人格になる」
眼鏡の俺の、ユーリへの強い独占欲が伺える。その独占欲は、元の人格の俺まで破壊しようとしている。
けれどもこんなことで、引き下がるわけにはいかない。私も、ユーリを誰よりも愛している。彼に忠誠を尽くしている。今の自分のままで、彼を優しく包み、励まし、大切にしたいんだ。
ユーリに、欲望などを持ってはいけない。無垢な彼を穢すことは赦されないんだ。
彼に、安らかな愛を与えて、安心させたいんだ。
何よりも、ユーリが望んでいるのは、そんな俺なのだから。肉親のように絶対的に無条件で降り注がれる愛。その期待を裏切ってはいけない。
「俺は、お前にどんなことをされようとも、ユーリの前からいなくなりはしない。断言する。清らかな愛で彼を慈しむまでだ」
はぁ、と盛大にため息をつくもう一人の俺。
俺の顎を掴む指に力がこもる。
その痛みに、俺は顔をしかめる。
「貴方には、ほとほと呆れ果ててしまいますよ。いいかげん、自分の中の汚い部分を認めたらどうですか。本当は、貴方はユーリの全てを手に入れてしまいたいのでしょう。清らかな愛なんて物じゃない、エゴイスティックな欲望の塊を色濃く持ち合わせているくせに」
そんなことはない!!と強く否定したい。けれど、ユーリに対する日々増幅する利己的な愛に苛んでいたのも事実だった。
けれど、俺はそれを決して実行に移そうなどとは思わなかった。それが、もう一人の俺との決定的な違いだ。
俺は、もう一人の俺を睨みつけながら、言葉を弾き出す。
「だが、俺はその想いをユーリにぶつけることは決してしない。どんな些細な可能性でも彼を傷つける可能性のあることは、排除する。それがどんなに俺を苦しませるとしてもだ!」
眼鏡の俺が、忌々しげに俺を睨みつける。
瞳の奥に妖しい光を宿しながら。
「いいですよ、言葉で言っても理解してもらえないなら、その身体に教えてやるまでです」
裏へ続く。
ヒント、右下のほう。
第十話の続きです。 18歳以上推奨です。
※眼鏡コンラッドに、普通のコンラッドが襲われるので苦手な方は回避してくださいです(汗
もう一人の俺が、俺の唇を指でなぞりあげる。身体が痺れていて思うように動けない俺は、彼にされるがままになってしまう。
くそ、身体が痺れていて、動けない!!されるがままになってしまうのか?!
「本当は、貴方はユーリにキスをしたいんでしょう?隠さなくてもいいですから。俺は貴方でもあるのですから、貴方の思っていることは何でもわかりますよ」
にわかに、彼の俺と全く同じ指が俺の顎を掴み上を向かせる。
「よせっ・・・・・・っ!!!!」
反論する間も与えられずに、俺は俺の唇に性急な口付けをされていた。
俺と体温も、厚みも、柔らかさも全く同じ唇が、俺の唇を翻弄する。甘く唇を吸い、舌を無理やり侵入させてくる。歯列をなぞり、舌を絡める。好きなように俺の口腔内を蹂躙する。
一方的で、自分勝手なキス。
「ん・・・・っは!!よせ!!」
俺は、こんなことをされても、消えるつもりはない。こんなふざけたこと、するだけ無駄だ!!
不意に、俺から唇が離される。眼鏡の俺が底意地の悪い瞳で俺を見つめる。
「・・・・・今のキス、どうでしたか?貴方が、ユーリにしたいと思っているキスを教えてあげたんですよ」
「!!!」
俺は、彼の発言に愕然とする。
俺は、ユーリにここまでの欲望を持っているというのか?俺があんな、エゴイスティックなキスをしたいと思っているというのか?
「そんな!!」
眼鏡の俺は、可笑しそうに俺を見つめる。
「ほら、貴方はだんだん認めざるを得なくなっていきますから。自分の中の浅はかな欲望を、ね」
「それだけじゃないんですよ、もっと、貴方がユーリにしたいと思っていることを教えてあげますから」
俺の思考は麻痺してしまったように、停止している。その間にも、もう一人の俺が俺の身体を弄んでいく。それも、その行為は、俺がユーリにしたいことを再現している、というのだ。
そんな、ここまで俺はユーリに欲情していたのか。彼の求める、柔らかな清らかな、親から子へ与えるような愛を目指していたのに、その内には、俺はこんなにも浅はかな欲情を秘めていたのか。
もう一人の俺の手が、俺の顕わになった大腿部を撫で上げる。身体が痺れて、自由に動けない身体には、与えられるどんな些細な刺激にも、ぞくりと快感に粟立ってしまう。
「ん・・はっ・・・」
「おや、まさか、貴方は感じているのですか?自分にされて感じるなんて、貴方はよっぽどのナルシストな変態なんですね」
低い淫らな声で囁く別の俺。
くそ・・・ふざけやがって!!
鋭く彼を睨みつける。
「貴様はどうなんだ。自分を襲うほうがよっぽどの物好きだと思うが」
白々しい顔で俺に微笑みかけてくる彼。
「ですから、言ったでしょう。今俺は、貴方を襲っているのではないんですよ。貴方がユーリにしたいと思っていることを再現しているに過ぎないのですから。勘違いしないで下さい」
「貴方は、ユーリにこうしたいんですよ・・・・」
彼は、そういうとにわかに俺自身を掴み上げて、激しく上下させる。
「ん・・・はぁ・・・・よせっ!!」
唐突に与えられる、鋭い刺激に身体の奥が痺れてしまう。
俺の反論など、全くその耳には届かないというように、行為を続ける彼。
「そう、貴方は、自分の手でユーリを翻弄し、その快感に歪む反応を楽しみたいと思っているんですよ」
「ふ・・ああっ」
そ、そんな、まさか!?俺がユーリにこんなことをしたいと思っていると言うのか?
突如、手が離される。上り詰めていた俺の欲望が解放を求めて情けなく震えてしまう。
「あれ、どうしましたか?ひどく情けない顔をしていますけれど。もしかして・・・・続きをしてほしいのですか?」
身体の奥から湧き上がる快感から解き放たれてしまいたい。けれど、ここで彼の言うとおりになることだけは、プライドが許さなかった。
唇をかみ締めて、湧き上がる甘い疼きを抑え込む。
「別に・・・続きなど・・・・いらない」
すぅっと眼を細めて俺を見る彼。
「本当に・・・強情で頑固でストイックなんですね・・・・・・まぁ、いいですけどね。とにかく貴方は、ユーリをこんな風に快楽で支配したいんですよ」
嘘だ。俺がこんなことでユーリを支配したいなんて、信じられない!!認めたくない!!
「嘘だ!」
「嘘じゃ、ありません。おまけに、もっと素直に快感に身を委ねたらどうですか?快楽に溺れることはそんなにいけないことではありませんよ」
「ほら、ここはもうこんなにも隆起して、我慢の限界なんでしょう?」
再び、熱をもった俺の中心に刺激が与えられる。所々に服の切れ端の残った、半裸の卑猥な格好の俺。身動きのできない痺れた身体。
そんな俺を、容赦なく攻める彼。俺と同じ指を熱を持ったそこに、絡ませて淫らに蠢かす。
あろうことか、俺のそこに舌を這わせる。熱い舌の感触に、眩暈がする。自分に犯されているという異常な事態に、頭が混沌とし意識が遠のく。
「ふ・・・ああっ!!や、やめろ・・・・ああっ」
絶え間ない、彼からの刺激に、思考が麻痺していく。
甘く低い声で囁く彼。
「いいですか、認めてください。貴方はユーリをこんな快楽に溺れさせたいんですよ」
甘く痺れる狂おしい刺激。俺自身が、すっかり彼の口内に含まれている。彼は、唇をいやらしく上下させる。口腔内で俺の物に舌を絡め蠢かす。
「ふ・・・・あ・・・ああっ、やめて・・・・くれ・・・・・・・っ!!」
頭が、真っ白になっていく。
これが、これが俺がユーリにしたいこと・・・・・・?
こんな卑猥なことが・・・・・。
もしかしたら、そうなのかもしれない。俺は、ずっと、気づいてたのかもしれない。
ここまで、ユーリのことを欲していたことを。ユーリを甘く翻弄してみたい、と。甘く狂おしく儚く願っていたのだ。
彼を大切に思うあまりに抑制してきた俺の欲望。
あぁ、そうだったんだ。俺は、俺はこんなにユーリが欲しいんだ。その身も心も全て。
手に入れたい・・・・・・ユーリ。
俺は、眼鏡の彼と変わらない。同じだったんだ。
今にも、快楽に溺れゆく、彼とシンクロしようとしている俺を、眼鏡の俺が緩やかに眼を細めて見つめている。
「さぁ、気づいたでしょう?早く、俺と一つのオリジナルになりましょう」
「ああっ!!!・・・っく!」
ほどなく、彼の口で果てる。
力なく、ぐったりと横たわる俺。そう、だ。俺は彼なんだ。清らかな愛を注いでいたのは、偽りの俺だったんだ。
俺は、眼鏡の俺との同調をし始めていた。
けれど、その時、ユーリの切なる願いを思い出した。
眼鏡の俺に、ユーリが必死に叫んだあの一言を。
『お願いだよ・・・お願い・・・・・コンラッド!!前の優しいあんたに会いたくてたまらないんだ!!俺のことをそっと抱きしめて、安心させてほしいんだ』
そうだ、ユーリが望んでいるのは『俺』なんだ。欲望に身をまかせる『俺』じゃないんだ。自分を律し、彼に無条件で愛をそそぐ、清らかな『俺』なんだ。
けれど、俺は気づいた事実に愕然とする。
俺は、もはや自分を律し、彼の側にいることなどできない。一度溢れ出した、気づいてしまった彼への浅はかな想いを隠し通す自信がない。
視界がぐにゃりと曲がり、俺は意識を手放した。
第十話 =完
※眼鏡コンラッドに、普通のコンラッドが襲われるので苦手な方は回避してくださいです(汗
もう一人の俺が、俺の唇を指でなぞりあげる。身体が痺れていて思うように動けない俺は、彼にされるがままになってしまう。
くそ、身体が痺れていて、動けない!!されるがままになってしまうのか?!
「本当は、貴方はユーリにキスをしたいんでしょう?隠さなくてもいいですから。俺は貴方でもあるのですから、貴方の思っていることは何でもわかりますよ」
にわかに、彼の俺と全く同じ指が俺の顎を掴み上を向かせる。
「よせっ・・・・・・っ!!!!」
反論する間も与えられずに、俺は俺の唇に性急な口付けをされていた。
俺と体温も、厚みも、柔らかさも全く同じ唇が、俺の唇を翻弄する。甘く唇を吸い、舌を無理やり侵入させてくる。歯列をなぞり、舌を絡める。好きなように俺の口腔内を蹂躙する。
一方的で、自分勝手なキス。
「ん・・・・っは!!よせ!!」
俺は、こんなことをされても、消えるつもりはない。こんなふざけたこと、するだけ無駄だ!!
不意に、俺から唇が離される。眼鏡の俺が底意地の悪い瞳で俺を見つめる。
「・・・・・今のキス、どうでしたか?貴方が、ユーリにしたいと思っているキスを教えてあげたんですよ」
「!!!」
俺は、彼の発言に愕然とする。
俺は、ユーリにここまでの欲望を持っているというのか?俺があんな、エゴイスティックなキスをしたいと思っているというのか?
「そんな!!」
眼鏡の俺は、可笑しそうに俺を見つめる。
「ほら、貴方はだんだん認めざるを得なくなっていきますから。自分の中の浅はかな欲望を、ね」
「それだけじゃないんですよ、もっと、貴方がユーリにしたいと思っていることを教えてあげますから」
俺の思考は麻痺してしまったように、停止している。その間にも、もう一人の俺が俺の身体を弄んでいく。それも、その行為は、俺がユーリにしたいことを再現している、というのだ。
そんな、ここまで俺はユーリに欲情していたのか。彼の求める、柔らかな清らかな、親から子へ与えるような愛を目指していたのに、その内には、俺はこんなにも浅はかな欲情を秘めていたのか。
もう一人の俺の手が、俺の顕わになった大腿部を撫で上げる。身体が痺れて、自由に動けない身体には、与えられるどんな些細な刺激にも、ぞくりと快感に粟立ってしまう。
「ん・・はっ・・・」
「おや、まさか、貴方は感じているのですか?自分にされて感じるなんて、貴方はよっぽどのナルシストな変態なんですね」
低い淫らな声で囁く別の俺。
くそ・・・ふざけやがって!!
鋭く彼を睨みつける。
「貴様はどうなんだ。自分を襲うほうがよっぽどの物好きだと思うが」
白々しい顔で俺に微笑みかけてくる彼。
「ですから、言ったでしょう。今俺は、貴方を襲っているのではないんですよ。貴方がユーリにしたいと思っていることを再現しているに過ぎないのですから。勘違いしないで下さい」
「貴方は、ユーリにこうしたいんですよ・・・・」
彼は、そういうとにわかに俺自身を掴み上げて、激しく上下させる。
「ん・・・はぁ・・・・よせっ!!」
唐突に与えられる、鋭い刺激に身体の奥が痺れてしまう。
俺の反論など、全くその耳には届かないというように、行為を続ける彼。
「そう、貴方は、自分の手でユーリを翻弄し、その快感に歪む反応を楽しみたいと思っているんですよ」
「ふ・・ああっ」
そ、そんな、まさか!?俺がユーリにこんなことをしたいと思っていると言うのか?
突如、手が離される。上り詰めていた俺の欲望が解放を求めて情けなく震えてしまう。
「あれ、どうしましたか?ひどく情けない顔をしていますけれど。もしかして・・・・続きをしてほしいのですか?」
身体の奥から湧き上がる快感から解き放たれてしまいたい。けれど、ここで彼の言うとおりになることだけは、プライドが許さなかった。
唇をかみ締めて、湧き上がる甘い疼きを抑え込む。
「別に・・・続きなど・・・・いらない」
すぅっと眼を細めて俺を見る彼。
「本当に・・・強情で頑固でストイックなんですね・・・・・・まぁ、いいですけどね。とにかく貴方は、ユーリをこんな風に快楽で支配したいんですよ」
嘘だ。俺がこんなことでユーリを支配したいなんて、信じられない!!認めたくない!!
「嘘だ!」
「嘘じゃ、ありません。おまけに、もっと素直に快感に身を委ねたらどうですか?快楽に溺れることはそんなにいけないことではありませんよ」
「ほら、ここはもうこんなにも隆起して、我慢の限界なんでしょう?」
再び、熱をもった俺の中心に刺激が与えられる。所々に服の切れ端の残った、半裸の卑猥な格好の俺。身動きのできない痺れた身体。
そんな俺を、容赦なく攻める彼。俺と同じ指を熱を持ったそこに、絡ませて淫らに蠢かす。
あろうことか、俺のそこに舌を這わせる。熱い舌の感触に、眩暈がする。自分に犯されているという異常な事態に、頭が混沌とし意識が遠のく。
「ふ・・・ああっ!!や、やめろ・・・・ああっ」
絶え間ない、彼からの刺激に、思考が麻痺していく。
甘く低い声で囁く彼。
「いいですか、認めてください。貴方はユーリをこんな快楽に溺れさせたいんですよ」
甘く痺れる狂おしい刺激。俺自身が、すっかり彼の口内に含まれている。彼は、唇をいやらしく上下させる。口腔内で俺の物に舌を絡め蠢かす。
「ふ・・・・あ・・・ああっ、やめて・・・・くれ・・・・・・・っ!!」
頭が、真っ白になっていく。
これが、これが俺がユーリにしたいこと・・・・・・?
こんな卑猥なことが・・・・・。
もしかしたら、そうなのかもしれない。俺は、ずっと、気づいてたのかもしれない。
ここまで、ユーリのことを欲していたことを。ユーリを甘く翻弄してみたい、と。甘く狂おしく儚く願っていたのだ。
彼を大切に思うあまりに抑制してきた俺の欲望。
あぁ、そうだったんだ。俺は、俺はこんなにユーリが欲しいんだ。その身も心も全て。
手に入れたい・・・・・・ユーリ。
俺は、眼鏡の彼と変わらない。同じだったんだ。
今にも、快楽に溺れゆく、彼とシンクロしようとしている俺を、眼鏡の俺が緩やかに眼を細めて見つめている。
「さぁ、気づいたでしょう?早く、俺と一つのオリジナルになりましょう」
「ああっ!!!・・・っく!」
ほどなく、彼の口で果てる。
力なく、ぐったりと横たわる俺。そう、だ。俺は彼なんだ。清らかな愛を注いでいたのは、偽りの俺だったんだ。
俺は、眼鏡の俺との同調をし始めていた。
けれど、その時、ユーリの切なる願いを思い出した。
眼鏡の俺に、ユーリが必死に叫んだあの一言を。
『お願いだよ・・・お願い・・・・・コンラッド!!前の優しいあんたに会いたくてたまらないんだ!!俺のことをそっと抱きしめて、安心させてほしいんだ』
そうだ、ユーリが望んでいるのは『俺』なんだ。欲望に身をまかせる『俺』じゃないんだ。自分を律し、彼に無条件で愛をそそぐ、清らかな『俺』なんだ。
けれど、俺は気づいた事実に愕然とする。
俺は、もはや自分を律し、彼の側にいることなどできない。一度溢れ出した、気づいてしまった彼への浅はかな想いを隠し通す自信がない。
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