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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2009/06/01 (Mon)                  鬼畜眼鏡なパロディー  第十一話
第十一話 黒コートの男


  コンラッド、お願い眼を覚まして。


 祈るような気持ちで彼に接吻をする。けれど、もちろん彼は眼を覚まさない。



 おとぎ話なら、愛する者のキスで眼が覚めるって言うのにな。



 俺、どうかしてるよな。こんな、おとぎ話にまで縋ろうとするなんて。はは・・・・・本当にすっかり弱っちゃったみたい。




 外は、信じられないくらいの澄んだ空。
 俺の心とは、まったくの正反対。




 やり切れない想いに、自然と涙が溢れてくる。



  



  俺、本当に、コンラッドのことが大好きだったんだよ。



  コンラッドのことはね、家族みたいに大事だったんだ。ずっとね。だけど、やっと気づいたんだよ。間違いだって。




 家族みたいに、大事なんじゃない。そういう、大事、じゃないんだ。




 もっと、熱くて、切ないもの。




 恋・・・・・・なんだ。俺が、あんたに対して抱いているのは。



 もう、既にあんたとあんなことを散々しちゃった後で、気づくのも本当に馬鹿げてると思うけど。
 


 けれど!!!あんたと普通に話すことさえできなくなって、やっとあんたのかけがえのなさに嫌って言うほど気づかされてるんだ。あんたに真剣に惚れてるんだよ!!



 本当に自分の鈍感さに嫌になるよ。・・・・悔しいよ!




 俺は、止まることを忘れてしまった涙を好きに流させていた。感情のままに。
コンラッドの端整な顔が涙で滲む。



 お願い!!コンラッド!!あんたのためなら、何でもするから、どうしたらあんたが眼を覚ますか、それだけ、教えてくれよ!!




 にわかに、一陣の風がカーテンを盛大に翻す。



 強い南風に俺は、瞳を閉じる。




 「?!」


 眼を開けると秀麗な男が黒いコートを風に揺らめかしながら佇んでいた。腰まである優雅な金髪を三つ編みに結わえてある。


 「あ、あんた誰だよ?!いつからそこにいるんだ?!」


 身の危険を感じた俺は、防御の姿勢をとりながら後ずさる。



 けれども、俺の試みもむなしく終わる。男は、俊敏な動作で流れるように俺との間合いを一息に詰めてしまう。


 妖しげな眼鏡を光らせて微笑みかける男。
「おや、コンラッドさんからは私のことを何も聞いてはいませんか?私が彼に眼鏡を差し上げた張本人です。初めまして、魔王陛下」


 恭しく、跪くと俺の右手の甲に口づけをする。長い金髪が地面に垂れ下がる。



 なんだって?!コンラッドに眼鏡をあげた張本人だって!?じゃあ、あのコンラッドが言ってた黒コートの男なのか?!




 俺は、目の前の男に激しい憤りを感じた。
 彼が、彼がコンラッドにあんな眼鏡を渡したからコンラッドが眼を覚まさなくなったんだ!!


「あんた!!どうして、コンラッドにあんな眼鏡を渡したんだよ?!あんな、あんな変な眼鏡を渡したせいでコンラッドがずっと意識が戻らないんだ!!どうしてくれるんだよ!!」


 俺は、彼の胸倉を掴みながら必死で訴える。彼を鋭く睨みつける。怒りで、すっかり涙は乾いていた。



 彼は、俺のことなど相手にしていないかのように優雅に微笑む。瞳にはどこか侮蔑の色が滲んでいる。


「まぁまぁ、そんなに吠えないで下さい、魔王陛下。眼鏡を差し上げたのは、私ですが、彼が目を覚まさないのは私のせいではありません。貴方は、そんなこともお分かりにならないのですか?・・・・・・・残念です」


 な、何だって?じゃあ、一体なぜ彼が眼を覚まさないっていうんだよ?!



「どういうことだよ?!じゃあ、一体どうしてコンラッドが意識を取り戻さないんだよ?!元はといえば、あんたが眼鏡を渡さなかったらこんなことにならなかったんじゃないか?違うのか?!」


 俺は、再び彼に食って掛かる。激情を彼にぶつける。


 男は肩をすくめて、呆れ果てた顔をする。
「やれやれ、貴方は本当に何も見えていないのですね。それでは、貴方にチャンスを差し上げましょう」


 すい、と鋭く眼を細めて俺に囁く。
「・・・・ただし、貴方も二度とこの世界に帰って来られないかもしれませんよ。今の彼のように、一生死んだように生きることになるかもしれませんよ。それでも、いいというのならば、特別に貴方をある場所にご案内致します」


 そんなこと構わない、コンラッドが元に戻る可能性があるのなら、俺はどうなったって耐えられる。俺にとっては、コンラッドと話もできないことのほうが耐えられないんだ。



「俺のことは、どうなっても構わない!!コンラッドを救うチャンスを俺にくれ!!」



 にっこりと、微笑む黒コートの男。
「さすがは、魔王陛下。微塵の迷いも感じられません。では、こちらへどうぞ」


 黒い手袋をした男の手が、俺の手を掴み黒コートの中にすっぽりと俺を覆った。


 途端に、激しい眠気に襲われて、俺は重い瞼を閉じた。




第十一話  =完
 

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