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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2024/05/21 (Tue)                  [PR]
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第七編  ファーストキスは何の味?
※ 5/23がキスの日ということで、キスにまつわるショートストーリです。コンユですv



 
 俺は、血盟城で、村田と二人で廊下を歩いていた。


 ふと、このまえ読んだコラムのことを思い出して、村田に話しかけた。


「なぁ、村田。知ってるか?昔はファーストキスは、レモンの味だったけど、最近だとイチゴの味になってきてるみたいなんだ」


「へぇ、そうなんだ。あれ、渋谷はどうしてそんなこと聞くの?もしかして、キスしたいんじゃないの??」


 悪戯に、ウィンクして尋ねてくる村田。

 俺は、慌てて否定する。
「そ、そそんなんじゃないけど。ただ、ただ、キスってそんなレモンとかイチゴとかの味がするのかな?ってそれも、昔と今とで味が変わったりするものなのかな?って疑問に思っただけで・・・・・」


 そうだよ、ただ単純に不思議に思うんだよな。キスってしたことないから、そんな味するのかどうかって、疑問なんだよな。

 何かを企んだような表情をして、にっと笑う村田。

「渋谷、その疑問に最もわかりやすく教えてくれる最善の先生がいるよ」


 俺は、目を輝かせて村田を見つめる。
「えぇっ!!マジで?それだれ?教えて、大賢者~~!!」


 村田は満面の笑みで、俺を見つめる。
「ウェラー卿だよ、渋谷」


「ええっ?マジで?コンラッドが?」


 唖然とする俺。あ、でもコンラッドってあんなにカッコイイし、キスのひとつやふたつやみっつ・・・・いやもっと、してても全然おかしくないもんな。うん、納得。さすが、村田。


「そうだよ、渋谷。今日の夜にでも聞いてみたら?なるべく二人でいるときなんかがいいんじゃないかな?」
 にっこりと微笑むと、片手を上げてひらひらと振りながら去っていく村田。


 なんで、二人きりのときがいいんだ?
 まぁ、いいか、この際だからはっきりさせたいもんな。よ~し、今日の夜早速コンラッドに聞いてみよっと。
 二人きりのときかぁ。じゃあ、コンラッドが俺の部屋の見回りに来たときにでも聞いてみるか。





 皆が寝静まった頃、俺は一人コンラッドの登場を待ち焦がれていた。星屑が煌く綺麗な月夜だった。


 あぁ、ついに、長年の疑問が払拭される日が来たんだ!!


 ガチャ。ギギ・・・。


 俺が、寝ていると思ったのかノックをせずに、そっと扉を開けるコンラッド。
 
 
 あぁ、もう、遅かったな。やっと来てくれた!コンラッド!!

「よっ、コンラッド~~。ずっと待ってたんだ」

 俺の言葉に、目を丸くするコンラッド。
「どうしたんですか、陛下。こんな夜中まで寝ずに私を待つなんて、何か相談でもあるのですか?」


「陛下いうなよ、名付け親~。それより、早く、こっち来てよ」
「すみません、ユーリ。今行きますね」
 いつものやりとりをすると、俺はコンラッドをこちらに呼び寄せる。ブーツの音を響かせながらこちらに向かってくるコンラッド。


 俺は、コンラッドをベッドに座らせると、目を輝かせて質問をする。
「ねぇ、コンラッド?俺に、キス教えてくれない?」


 コンラッドが固まった。いつもの余裕綽綽の彼はここにはいない。信じられない、といったような顔で俺を見つめてくる。

 
 その瞳が次第に熱さと甘さを帯びてくる。


 あれ?なんかコンラッドの顔が甘いんですけど・・・・?


 にわかに、彼の顔が近づいてくる。


 え、えぇ、えぇ~~?!



 俺の唇に、コンラッドの薄い唇が押し当てられていた。


 嘘?!キスしちゃってる?!


 俺は、慌ててコンラッドを押し遣る。
「こ、ここコンラッド!!!!どうして、キスするんだよ~~!」


 またしても、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして俺を見つめるコンラッド。
「なぜって、貴方が私にキスを教えて欲しいといったから・・・・です」



 はっ!!そうだ。俺のさっきの言い方!あんな言い方したら、『実際にキスして教えてくれ』って言ってるようなもんじゃないかぁ~~!!ああ~~、俺の馬鹿!!


「あのさ、ごめん。コンラッド!!俺が言いたかったのは、『キスについて教えて欲しいことがあるんだけど』ってことだったの」


 呆然と、俺を見つめるコンラッド。


「あの、ついでに言うと、ファーストキスは、レモンの味とかイチゴの味とかっていうじゃん?あれが、不思議でしょうがなくてさ、なんで、フルーツの味がするんだよ?って思ってて。どうしても、知りたかったんだ。村田がコンラッドなら、わかりやすく教えてくれるっていうからさ。だから、コンラッドに聞いたってわけなんだ」


 俯きながら答えるコンラッド。
「へぇ、そうでしたか。なるほど、猊下がそうおっしゃったんですね」

 
 俯いているせいで、顔が見えないけど、どことなく声が低い気がする。



 けれど、寸分の間もなくにっこりと、俺に微笑みかけるコンラッド。


「でも、貴方の疑問は解決しましたね?」


「えっ?どうして?」


 優雅に微笑むコンラッド。
「先程のキスは、貴方のファーストキスだったのではないですか?」


はっ。そうだ。俺、初めてキスしちゃったんだ。


 コンラッドが、甘い瞳で俺を覗き込む。耳元で、そっと囁く。甘い声が、俺の鼓膜を震わせる。
「で、どうでしたか?初めてのキスの味は?レモン味でしたか?それともイチゴ味でしたか?」


 魅惑的なコンラッドの態度に、翻弄されてしまう。いつものコンラッドよりも艶めかしくて、俺は耳まで真紅に染め上げてしまう。


 上目遣いに、そっと彼を見つめる。
「あ、あの、コンラッド。あまりにも唐突だったから、実は味とか全然分からなかったんだ」


 そうなんだ。コンラッドの柔らかい唇の感触とか、唇の厚みとか、ヒンヤリとした冷たさは感じたんだけど、味とかはよくわかんなかったんだ。


 熱いまなざしで俺を見つめるコンラッド。
「もう一度して、確かめてみますか、ユーリ?」


 ぞくりとするような、甘い声に、熱に浮かされてしまう。


 そうだよね、きっと、もう一度キスしたら味がわかるよね。別に、コンラッドとキスするの、おかしくないよね・・・・味を確かめるためだけなんだし。変な意味はないもんな。


 自分に言い聞かせるように、言い訳をする。本当は、純粋に彼とキスしたい気持ちが浮かんできているのを必死で追いやる。


 俺の辞書に、男同士の恋愛はないんだから。


 けれど気がつくと、甘えたように俺は返事をしていた。
「うん・・・確かめたい」


「ユーリ、目を閉じて」
甘いコンラッドの声に導かれるままに、瞳を閉じる。


コンラッドの意外と逞しい腕が俺の腰に回される。


 どうしよう、俺、まるで女の子になったみたい。すごく、心拍数が上がっていくよ。
 

彼の唇が、俺の唇に触れるまでの刹那、瞳を閉じて、今か未だかと待ち焦がれる切なさ、苦しさ。



「んぅっ・・・ふっ」
 待ち焦がれた彼の唇が自分の唇にに触れたときの甘さ。



 コンラッドの柔らかい唇が俺の唇に触れ合う。角度を変えて、何度も、そっと繰り返されるキス。


 そっか、キスは、甘酸っぱいレモンとか、イチゴの味がするわけじゃないんだ。
 彼の唇を待つ間の切ない苦しさと、彼からやっと与えられる唇の甘さ。気持ちの甘酸っぱさを果物で表わしてたんだ。


 そっと、コンラッドの唇が俺の唇から離される。
 柔らかい表情で、囁くコンラッド。
「どうでしたか、ユーリ?」


 俺は、にっこりと、微笑む。
「味は、よくわからなかったけど、とっても甘くて切なかったよ。レモンとかイチゴ・・・・みたいだったよ」




 この夜からだった。二人の関係は、果実のような甘みと酸っぱさを含んでいった。






 第七編   =完

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