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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2009/05/05 (Tue)                  ショートストーリー 第三編 歪んだ愛
 第三編 歪んだ愛


※コンユ前提のサラユの話です。サラのユーリへの片思いの話です。サラは、本当はいい子なんじゃないかという妄想で作ったお話です。




 私は、彼のことが堪らなく憎かった。
 

 いつでも、無垢で素直で、誰のこともすぐに信じてしまう彼が。きっと、親からの愛情を惜しみなく降り注がれて、何不自由なく、天真爛漫に育ってきた彼が。・・・・・私と対極にいる彼が。まるで、その存在自体が私の存在を否定してくるような彼が。


 だから、彼の価値観を壊してやりたいと思った。そして、自分の存在する意義を見出したかった。だから、友情を偽って、彼に近づいて、あっさりと裏切ってやろうと思った。彼に、人を信じるということ自体が浅はかな事だと認めさせたかった。


 だけど、彼は考えていたよりずっと強靭な精神の持ち主だった。


 いくら裏切っても、彼は私のことをいつまでも信じてくれる。
 私の奥にある真相を見出そうと、してくる。


 真相ー、母親に捨てられて以来、ずっと隠してきた傷つき、可哀想な本当の私を。誰にも見せたくない哀れな自分を。彼は、慈しみを持った聖母のように、決してあきらめずに、私を暗闇から救おうとしてくれた。
 私は、哀れな自分を認めたくなかった。だから、私は人を欺き、操る技を身に着けた。自分が母親に捨てられたことなど、なんでもないことだと証明するために。自らが、人を裏切り、傷つけることで、その痛みを和らげてきた。
 そんな、暗闇の中で一人芝居をする私の苦しみを見抜いてくれた。


 彼の純真な魂は、私の屈折した魂を闇から救い上げてくれた。


 だから、気づいたんだ。どうして、初め、彼のことをあそこまで憎んでいたかを。それは、彼に恋焦がれていたからだったんだ。彼のまっすぐな瞳に、魂に、ずっと寄り添っていたかったんだ。
 けれど、再び捨てられるかもしれない恐怖を潜在的に感じていた。母親に捨てられて、彼にまで捨てられたら、生きていけない。
 だから、彼を憎むことでしか愛情の表現ができなかった。


 そして、彼から親友としての親愛の情を得た今、私はもっと深くの愛情を彼からもらいたいと儚く願う。恋人としての甘い愛情を受けたいと切に祈る。


 けれど、それが叶わぬ想いだということは知っている。
 彼の態度を見ていればわかる。彼は、一際爽やかで思慮深い臣下に想いを馳せている。ユーリのコンラッドを見つめる瞳は、艶やかで鮮やかで、春の日差しのよう。


 だから、私は相変わらず彼に歪んだ愛情表現をし続けている。




「ねぇ?サラ?何考え込んでるの?ほら、エーフェがパフェを作ってくれたんだよ?さ、一緒に食べよう」
 ユーリは、子供のようにきらきらとした瞳で私を見つめる。
「へぇ・・・・・パフェ?それは、ユーリの国の食べ物なの?」
 唇にクリームをつけて、ユーリはにっこりと笑う。
「うん、そうだよ。今日はサラが血盟城に来てくれるっていうから、特別にエーフェに頼んで作ってもらったんだよ」
 ユーリ・・・あなたの優しさは時に残酷だ。もしかしたら、私のことを愛してくれるかもしれないと期待してしまう。それは、叶わぬ願いなのに。
 だから、私は彼に歪んだ愛情表現をする。
「そうだね、ちょっと庶民的な味かな?」
 私は、ユーリにさらりと嫌味を言う。
「う~ん、そっか。いまいちだったか」
 彼は、悲しそうに俯いて小さな声でつぶやく。
 そんな彼を見るたびに、本当は抱きしめて、彼のしてくれたことを賞賛してあげたい衝動にかられるんだ。だけど、いつもはそんな自分の衝動を押さえ込む。彼に、最終的に捨てられてしまうことが怖いから。
 でも、今日のユーリは本当に悲しそうで、私は自分の欲求に素直に行動してしまった。
 ユーリを優しく抱き寄せて、ユーリの唇に自分の唇を重ねる。柔らかいユーリの唇にうっとりする。そして、唇についたクリームを舐める。
「ユーリ、いじめてごめんね。本当は、とってもおいしかったんだ、このパフェ」
 彼は、私の突然の行動に眼を見開いて驚く。
「ちょ・・・・っと、サラ。今!今、キスした~!!」
「ううん、キスじゃないよ。ユーリの唇に『パフェ』がついてたからね。わざわざ私のためにつくってくれた物は、全部大切にいただかないとね。だから、食べただけだよ」
ユーリは、相変わらず動揺した様子で私を見つめる。
「な、なんか今日のサラ、ちょっと違うかも。もしかして、今日のサラが、本来のサラだったりして」


 さらりと言い当てられて、心臓がどくんとする。
 本当に、貴方という人は鈍いんだか、鋭いんだか・・・・。


 そんな、ユーリを見つめて一層彼への思慕の念を抱くサラだった。




第三編 =完

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