2009.4.22設置
『今日からマ王』メインです。
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ショートストーリー第十一編 貴方の夢の中までも
※ アニシナさんの発明品『睡眠時魔道体験機 夢芝居』{寝ている人の夢に入れる機械←(ドラマCD『閣下とマのつくラブ日記』参照)}にて、ユーリの夢に入ってしまったコンラッドのお話です。
※※下のほうに、夢の中のコンラッドのイラスト載せました。
蒸し暑い初夏の夜、いつものように城内の巡回をしていた。
部屋の主を気遣って、音を立てずにドアを開ける。
足音を忍ばせて、そっと彼の元へ歩み寄る。
月明かりに照らされた、薄闇の中、安らかな寝顔で規則的な寝息を立てる彼。
いつものように、つい彼の柔らな髪を撫でる。
俺の手が髪に触れた折、瞼を閉じたまま、幸せそうにユーリは微笑んだ。
こんなに愛らしい顔をして、一体どんな夢を見ているんですか?ユーリ。
夢といえば、以前ユーリがフォンカーベルニコフ卿の発明品で、俺の夢に入ってきたことがあったな。『睡眠時魔道体験機 夢芝居』だったかな。
確か、ここに仕舞ってあった筈だが。
魔王の間に相応しい華美な装飾を施された、戸棚の一番下にその器具はひっそりと仕舞ってあった。
ふいに、悪戯心が芽生えた。
これで、ユーリの夢に入れないだろうか。こんなに愛らしい顔をして、一体どんな夢をみているんだろう。
一度芽生えた好奇心は、消えそうに無かった。
優雅なフォルムの窓から差し込む月明かりが器具を照らし出す。月さえも、俺の悪戯心を誘惑してくる。
徐に、器具を取り出してマイクの準備に掛かる。
そこへきて、ある事実にようやく気がついた。
俺は魔力が無いから、魔道装置を使えない。
そんな事実すら忘れるほどに、俺は彼の夢に入りたかったのか。
自嘲気味な笑いが漏れる。
けれど、乗りかかった船。取り敢えず、無駄とは思いながらもこの装置を試してみることにした。
マイクに向かって、決まり文句を言う。
『マイクテス・・・マイクテス・・・俺は今寝ています』
途端に眠気が襲い、瞼を閉じた。意識が遠のいていく。
不思議なことに、魔力の無い俺でもこの装置が使えたらしい。魔力の強いユーリが側に寝ていたからだろうか。
****
目を開けた俺は、自分の着ている衣装に目を瞠った。
ぱりっとしたカッターシャツに、きっちりと結ばれたタイ。その上に羽織られた真っ白の白衣。首に掛けられた黒いチューブのような物。聴診器・・・だったかな、確か。視界の端に不快感を感じて、目元へ手を持っていくと硬質な物体に触れた。
俺は、シルバーフレームの眼鏡を掛けていた。
この格好は、確か・・・・地球で言うところの『医者』?
この場所は、『診療室』?
地球に行ったときの、小児科医のロドリゲスがいた部屋によく似た部屋だった。飾り気の無い机と椅子、ベッドが置かれた部屋。消毒液の臭いがつんと鼻腔を刺激する。椅子に腰掛けたまま、思考を巡らせていると彼が部屋に入ってきた。にこりと微笑む可愛らしい彼。
「コンラッド先生、こんにちわ。よろしくお願いします」
身体の大きさはいつものままなのに、声だけが子供のようにひどく幼かった。甘えた声が、消毒液の臭いのする部屋に響く。
これが、ユーリの夢?この状況は、俺が医者で彼が患者・・・ということか。
ユーリは一体どうしてこんな変わった設定の夢を見るんだろう。
どたばたと俺の椅子の前に腰掛けるユーリ。
そうだ、私は医者ということだから、それらしく振舞わないとな。地球にいたときの記憶を思い出しながら、医者を演じる。
机の上のカルテを見ながら、彼の名前を呼ぶ。医者と患者は、ある程度の距離感が必要だな。医者らしく、彼を苗字で呼んでみた。
「渋谷さん、お体は如何ですか?」
俺の声を聞くや否や、小さな子供のようにそっぽをむいて、むくれる彼。
「なにそれっ。俺は、コンラッド先生にいつも言ってるでしょ?ちゃんと俺の名前を呼んでよねっ」
「そうでした、すみません、ユーリ」
言いながら、柔らかな笑いが込み上げた。台詞が微妙に違うけれど、夢の中までも俺たちはいつものやりとりをしたから。
けれど、いつもと違ったのは彼の反応だった。
満面の笑みを浮かべた後、ぎゅっと俺に抱きついてくるユーリ。おまけに、俺の胸に顔をこすりつけてくる。
「うん!それでいいよ。コンラッド先生。コンラッド先生の身体・・・大きくて・・・あったかい・・・気持ちいいな」
可愛らしすぎる・・・・。唯でさえ可愛いユーリなのに、これでは反則じゃないか。
ギュンターではないが、眩暈がする。
俺に、さらなる試練が訪れる。
にわかに、俺から離れると、制服を捲し上げるユーリ。制服の裾から、華奢な腹部を見せるユーリ。恥ずかしげに俯きながら、顔を上気させて。
「コンラッド先生・・・・みて下さい」
それが、医者として聴診器で彼のお腹や心臓の音を聴くという意味だと理解するのに時間が掛かった。彼の愛らしさのせいで、すっかりおかしな意味に取りそうだった自分に戸惑う。
夢の中での愛らしいユーリにすっかり参ってしまった。
聴診器の先端を胸に当てる際に、ふいに俺の指が彼の胸の敏感な膨らみに触れてしまった。
「ふあっ!・・・だめっ・・・・コンラッド・・・先生」
びくんと大きく身体を仰け反らせるユーリ。甘えたような艶っぽい声で喘ぐユーリ。伏せ目がちに、濡れた瞳で俺を見上げるユーリ。
これは・・・・正直辛い。誘っているとしか思えない。
夢の中なら・・・・・貴方を好きにしても赦されますか?
思わず浮かんだ浅はかな考えを、即座に打ち消す。
気持ちが通じ合っていない今、そうするのはルール違反だと思ったから。
例え夢の中だとしても。
彼の気持ちを何よりも一番に考えてあげたい。
自分の気持ちよりも。何よりもそれが優先事項。
けれど、この夢の中のユーリは愛らしすぎる。やたらに、甘えてくる。父親に甘える子供のように、いや、それ以上だ。まるで恋人に甘えてくるかのように・・・。
どうか、俺の理性が踏みとどまりますように。そう願わざるを得ない。
そう願う俺を試すかのように、ユーリは一層俺に追い討ちをかける。
急に、大人びた艶っぽい表情になると、甘く切ない掠れた声を出す。
「コンラッド・・・・、今日は・・・・・してくれないの・・・・・・?」
上気して、櫻色に染まった頬、淡い唇からは熱っぽく吐息が零れる。長い睫毛に縁取られた漆黒の瞳が遠慮がちに、俺を見上げる。
そのまま瞳を閉じて、唇を差し出すかのように更に顔を上げるユーリ。
とても、綺麗です、ユーリ。
その表情に見惚れてしまう。
御免なさい、ユーリ。そんな顔でそんな言葉を呟かれたら、俺はもうその言葉を都合のいい解釈にしか取れません・・・・。自分勝手な俺を赦して・・・・。
堰を切ったように、彼の顎に手をかけて、柔らかいその唇を味わう。
ずっと欲しかったその唇を。
夢の中とは思えないくらいの、柔らかな感触だった。俺の唇よりも少しふっくらとしたその唇。けれど、愛らしく小さいその唇。
白衣を着た医者の格好で、夢中で彼に口づけをする。空いたほうの手を腰に回し、きつく抱き寄せる。
「ん・・ふ・・・っ」
彼の唇から甘い吐息が零れ落ちる。
その甘い声に、俺の口付けは大胆さを増していく。
夢であろうと構わない、彼を心ゆくまで・・・・愛したい。可愛がりたい。
彼の全てを手に入れてしまいたい。
・・・・こんなこと、夢だから出来るだけだが。
現実でこんなこと、出来るはずがない。俺は所詮、彼の眞魔国での親を兼ねた臣下だ。彼が俺に恋愛感情など持ってくれる筈が無い。親子の情愛の念以上の想いを彼が俺に抱いてくれる筈が無い。
彼には、地球の思想が色濃く根付いているから。男同士の恋愛はご法度だという概念が。彼のヴォルフラムに対する態度を見ているだけで、それは一目瞭然だ。 男同士というだけで、恋愛はないものだと考えている節がある。
感傷に浸りかけたときだった。
ユーリが、物凄い力で俺を押し退けながら立ち上がる。唇を手で拭いながら、真っ赤になって、目を見開いて俺に叫ぶ。
「やだよっ・・・コンラッド?!何、どうして、こんなことするの?!」
消毒薬のきつい臭いの篭る室内に、彼の悲痛な叫びが響く。
正直、傷ついた。夢の中でさえも、俺は彼から受け入れられないことに。いつもの笑顔を取り繕うだけの余裕は皆無だった。ずれた眼鏡を指で押し戻すことくらいしか出来なかった。
ぼろぼろと涙を流し立ち尽くすユーリ。
「俺は、ただいつもみたいに頭を撫でて欲しかっただけなんだよっ・・・!!」
彼の言葉が、ますます俺を傷つけた。夢で、彼の核心の部分を知ってしまうなんて。あまりにも酷だ。
やはり、貴方は俺のことを親という範疇に置いていたのですね。だから、俺がその範疇を超えてキスしたことに、ひどく傷ついてしまったんですね。
俺の懸念していたことが、事実だと分かるとそのショックは大きい。
理性に負けてしまった、貴方にキスをしてしまった俺を赦してください。
呆然と、彼を見つめることしか出来なかった。
泣きじゃくる彼を抱きしめてあげたいのに、金縛りにあったように身体が動かなかった。
哀し過ぎて。せつな過ぎて。たった今、失恋してしまったから。ずっと恋焦がれていた相手に。
ふいに、ユーリに両肩を掴まれて、まっすぐに瞳を見つめられる。涙に潤んだ愛しい瞳で見つめられる。
「逃げないで答えて!コンラッド!!どうして・・・どうして、キスなんかしたの?俺は、コンラッドの何?コンラッドのことがもっと知りたいんだ!!コンラッドの本当の気持ちを教えて?」
これは・・・もう言ってしまっていいのかもしれない。もう、失くす物は何も無いのだから。たった今、失恋したも同然なのだから。
その上、ここは夢の中だから。
にわかに立ち上がると、出来る限りの優しさを込めてそっと彼を抱きしめる。
「貴方の事が、好きです・・・・。ずっと貴方に恋していました。だから、キスしたんです。」
長年の想い・・・・。ようやく、彼に伝えることのできた大切な想い。胸が熱くなる。けれど、彼に決して受け入れられない想い。・・・・胸が苦しくなる。
腕の中で、再びユーリが激しく嗚咽をもらす。身体を震わせて泣いている。
「・・ぅ・・っぅ・・・」
ユーリの頭を優しく撫でる。
「俺は、また貴方を傷つけてしまいましたか?本当に、御免ね、ユーリ。俺からの告白は、夢の中でも貴方にとっては荷が重すぎたんですね。気が利かない男で御免ね、ユーリ」
にわかに俺の顔を見上げるユーリ。涙に濡れた揺れる瞳。綺麗だな。こんな時に・・・不覚にもそう思った。
「違う・・・。・・・っう・・・。そうじゃないよ・・・・・コンラッド。嬉しくて・・・嬉しすぎて泣いてるんだよっ・・・ぅ」
俺は、彼の言葉に耳を疑った。嗚咽を漏らしながら、懸命に呟くその言葉に。
嬉しい・・・?俺がユーリに恋をしていた、と言ったことが嬉しい?
そんな、先程貴方は俺のキスを拒絶したのに・・・なぜ?
彼の熱い瞳が俺を捕える。
「俺はね、ずっと、ずっとあんたの気持ちが知りたくてたまらなかった!!あんたは、俺のことを大事にしてくれるけど・・・・いつもその爽やかな笑顔で俺を遠ざけていたから」
俺にしがみつくユーリ。小刻みに身体が震えている。過去を回想してひどく傷ついている様子だ。俺が、ユーリをここまで傷つけていたのか・・・・・。夢にまでうなされる程に。
「あんたの本心に近づきたくて・・・でも、本心に近づくたびに、その笑顔で隠されてしまったから。ずっと、あんたの本音が聞けなくて苦しかった。俺のことをどう思っているのかって。俺はコンラッドにとってどういう存在なのかって。コンラッドの本当の気持ちが知りたくて・・・たまらなかったんだ!」
俺に抱きつく腕に力を込めるユーリ。
「そこへきて、あんたが俺にキスなんてするから・・・俺、あんたが俺のことを好きって思ってくれてるんじゃないかって・・・期待しちゃって・・・・さっきは、ひたすらにあんたにキスした意味を問い詰めて・・・ごめん・・・」
そっと俺の腕の中から、俺を見上げる愛しい人。
そうだったんですね。分かってあげなくて、御免ね、ユーリ。貴方は、俺のキスが嫌だったわけじゃなかったんですね。きちんと話を聞いてあげなくて、御免ね、ユーリ。貴方をこれほど悩ませてしまって御免ね。
「でも・・・・でも・・・教えてくれてありがとう。あんたの気持ちを教えてくれて・・・・ありがとう」
花が綻んだ様な、綺麗で暖かい笑顔に迎えられる。
「俺・・・コンラッドのことが・・・」
****
白銀の朝陽に邪魔をされて、俺は目を覚ます。
俺の気持ちは夢で彼に伝えられた。けれど、結局ユーリからのはっきりとした返事を聞けないままに、目を覚ましてしまった。彼の言葉の先を聞く前に。
そんな心残りな、未練たらしい気持ちでいると、隣の彼が愛らしく目を擦って伸びをする。なんて、可愛いんだろう。彼を見ているだけで、癒された。
「ん・・・コンラッド?あれ、珍しいね。一緒に眠り込んでたんだ、俺たち」
照れくさそうに、俺に微笑むユーリ。
「おはようございます、ユーリ」
愛しい彼の鼻先にキスをした。自分でも、驚くほどに彼に対して大胆になっていた。夢のおかげで、俺の中の何かが吹っ切れた。
顔を真っ赤にして、慌てふためくユーリ。それさえも可愛らしいけれど。
「ちょ、ちょっと・・・・照れるよ・・・コンラッド。あ、あのさ~昨日なんかよく覚えてないんだけど、すっごくいい夢を見たんだよ。まるで俺の長年の夢が叶ったみたいな感覚だったんだよっ!!」
彼のその言葉に、俺は胸がいっぱいになった。
華奢な彼を腕に抱きしめて、その柔らかい唇に上からキスを落とす。角度を変えて何度も啄ばむように甘い口付けをする。甘い唇を吸い上げる。シーツの衣擦れの音が甘く響く。
「ん・・っふぁ・・・あ・・・ん・・・!!」
名残惜しげに、俺は唇を離す。
揺れる瞳で俺に問いただすユーリ。耳までも真紅に染め上げて。唇に指を当てながら。
「コン・・・ラッド?どうして・・・どうして・・・・キスしたの・・・?」
俺は、昨夜と同じ告白を繰り返す。しなやかな彼を腕に抱きこんだまま、俺の下にいる可愛い彼を甘く見つめる。そっと愛らしい顔を撫でる。
「貴方の事が、好きです・・・・。ずっと貴方に恋していました。だから、キスしたんです。」
ずっと、貴方が悩んでいたことを昨日の夢で気がつけたから。俺が、貴方を好きな気持ちを必死に笑顔で隠していたことが、深く貴方を悩ませていたことに。もう、貴方にこの気持ちを隠しません。俺の想いが強すぎて、貴方を困らせてしまうかもしれませんが・・・・。貴方のことが好きで堪りません。
ユーリの愛らしい顔が真紅に染まっていく。漆黒の瞳には、切ない雫が滲んでいく。ふるふると、小刻みに震えだすユーリ。
「これ・・・・、昨日の夢・・・だ。今、思い出した。俺・・・・コンラッドから好きっていわれて、信じられないくらい嬉しかったんだ・・・!!コンラッドが俺のことをどう思ってるのか知りたくて・・・・知りたくて・・・やっと教えてくれたその答えが・・・・・俺が一番望んでたものだったんだから!正夢になるなんて・・・そんなの、そんなこと、嬉しすぎる・・・!!」
愛らしい瞳を朝陽に輝かせ俺を見上げるユーリ。きらきらと眩しい太陽のようだ。
「コンラッド!!大好き・・・俺もずっとあんたのことが好きだったんだ。だけど、ずっとあんたの気持ちにばかり拘ってた。あんたは、俺のことを好きでいてくれるのかって・・・。俺はコンラッドにとっての何なのって。今思えば、まずは自分の気持ちを伝えればよかったのにな・・・て思うよ」
少し、その愛らしい顔を曇らせるユーリ。切なくかすれる声。頬を涙が伝う。俺は、指で優しく涙を拭ってやりながら、真剣に彼の言葉に耳を傾ける。
「俺は、とっても臆病で卑怯だったんだ。あんたの気持ちを知るまでは、好きだ何てとても伝えられなかった・・・。だって、俺もコンラッドも男だし、受け入れてもらえる自信なんてかけらもなかったから」
朝陽さえ霞んでしまうような眩しい笑顔で微笑むユーリ。
「でも・・・ありがとう、コンラッド。コンラッドが勇気をだしてくれたから・・・・。俺たち・・・気持ちが通じ合えたんだね・・・・」
ユーリの言葉に少しばつが悪くなった。俺が、告白できたきっかけは魔道装置だったから。
「ユーリ・・・実は・・・昨日俺は貴方の夢に入っていたんです」
目を見開く貴方。
「ええっ?それってひょっとしてアニシナさんの例の・・・『夢芝居』?」
彼に向けて、にこりと微笑む。
「ええ、そうです。その夢のおかげで、貴方の悩みが分かったんです。貴方が、俺の態度に深く悩んでいることが、分かったんです。俺が、貴方を好きなことをはっきりと言わず、曖昧な笑顔で誤魔化してきたことを貴方はひどく悩んでいたのが分かったんです。だから、ようやく俺は貴方に告白できました」
相変わらず、零れ落ちそうな大きな瞳を丸くして見つめる貴方。
「俺も、貴方の気持ちを知らなかったら・・・・告白する勇気を持てたか・・・・正直自信がありません。俺は、臆病な男です」
正直に、彼に告白をする。彼に幻滅されてしまっただろうか。
ふいに、彼の華奢な腕が俺の首筋に巻き付いてくる。彼は、上体を捻り愛らしい唇を俺の唇に重ね合わせる。
「ユーリ・・・!!」
彼の積極的な甘い、可愛らしい行動に、惚けたように彼を見つめる。
そっと唇を離すと、痺れるような甘い笑顔で俺を赦してくれる彼。
「コンラッド・・・!!どうあれ、俺は今すごく・・・幸せだよ・・・・。大好きだよ・・・・。ずっと、コンラッドと両想いになりたかった・・・・。こんな風に・・・キスしたかった・・・・」
愛らしさに、堪らず彼の唇を奪う。
こんな日が来るなんて、夢にも思いませんでした。
夢にも・・・。夢で貴方の想いに気づけたから・・・。よかった・・・・、貴方と通じ合えて。躊躇無く、貴方にキスできる日が来るなんて・・・・!
俺は、フォンカーベルニコフ卿に、心の中で密やかに感謝することにした。
第十一編=完
あとがき★★
第十編に続いて、アニシナさんの発明品で結ばれる二人のお話でしたvvv
こんなことがあったらいいなという管理人の妄想でした(汗
ちなみに、夢の中に医者の格好をした異性が出てきたら、その相手に好意を持っているらしいです。
↓↓↓下に、イラストおきました。眼鏡+白衣コンラッドです。眼鏡好きな管理人でした(汗

※ アニシナさんの発明品『睡眠時魔道体験機 夢芝居』{寝ている人の夢に入れる機械←(ドラマCD『閣下とマのつくラブ日記』参照)}にて、ユーリの夢に入ってしまったコンラッドのお話です。
※※下のほうに、夢の中のコンラッドのイラスト載せました。
蒸し暑い初夏の夜、いつものように城内の巡回をしていた。
部屋の主を気遣って、音を立てずにドアを開ける。
足音を忍ばせて、そっと彼の元へ歩み寄る。
月明かりに照らされた、薄闇の中、安らかな寝顔で規則的な寝息を立てる彼。
いつものように、つい彼の柔らな髪を撫でる。
俺の手が髪に触れた折、瞼を閉じたまま、幸せそうにユーリは微笑んだ。
こんなに愛らしい顔をして、一体どんな夢を見ているんですか?ユーリ。
夢といえば、以前ユーリがフォンカーベルニコフ卿の発明品で、俺の夢に入ってきたことがあったな。『睡眠時魔道体験機 夢芝居』だったかな。
確か、ここに仕舞ってあった筈だが。
魔王の間に相応しい華美な装飾を施された、戸棚の一番下にその器具はひっそりと仕舞ってあった。
ふいに、悪戯心が芽生えた。
これで、ユーリの夢に入れないだろうか。こんなに愛らしい顔をして、一体どんな夢をみているんだろう。
一度芽生えた好奇心は、消えそうに無かった。
優雅なフォルムの窓から差し込む月明かりが器具を照らし出す。月さえも、俺の悪戯心を誘惑してくる。
徐に、器具を取り出してマイクの準備に掛かる。
そこへきて、ある事実にようやく気がついた。
俺は魔力が無いから、魔道装置を使えない。
そんな事実すら忘れるほどに、俺は彼の夢に入りたかったのか。
自嘲気味な笑いが漏れる。
けれど、乗りかかった船。取り敢えず、無駄とは思いながらもこの装置を試してみることにした。
マイクに向かって、決まり文句を言う。
『マイクテス・・・マイクテス・・・俺は今寝ています』
途端に眠気が襲い、瞼を閉じた。意識が遠のいていく。
不思議なことに、魔力の無い俺でもこの装置が使えたらしい。魔力の強いユーリが側に寝ていたからだろうか。
****
目を開けた俺は、自分の着ている衣装に目を瞠った。
ぱりっとしたカッターシャツに、きっちりと結ばれたタイ。その上に羽織られた真っ白の白衣。首に掛けられた黒いチューブのような物。聴診器・・・だったかな、確か。視界の端に不快感を感じて、目元へ手を持っていくと硬質な物体に触れた。
俺は、シルバーフレームの眼鏡を掛けていた。
この格好は、確か・・・・地球で言うところの『医者』?
この場所は、『診療室』?
地球に行ったときの、小児科医のロドリゲスがいた部屋によく似た部屋だった。飾り気の無い机と椅子、ベッドが置かれた部屋。消毒液の臭いがつんと鼻腔を刺激する。椅子に腰掛けたまま、思考を巡らせていると彼が部屋に入ってきた。にこりと微笑む可愛らしい彼。
「コンラッド先生、こんにちわ。よろしくお願いします」
身体の大きさはいつものままなのに、声だけが子供のようにひどく幼かった。甘えた声が、消毒液の臭いのする部屋に響く。
これが、ユーリの夢?この状況は、俺が医者で彼が患者・・・ということか。
ユーリは一体どうしてこんな変わった設定の夢を見るんだろう。
どたばたと俺の椅子の前に腰掛けるユーリ。
そうだ、私は医者ということだから、それらしく振舞わないとな。地球にいたときの記憶を思い出しながら、医者を演じる。
机の上のカルテを見ながら、彼の名前を呼ぶ。医者と患者は、ある程度の距離感が必要だな。医者らしく、彼を苗字で呼んでみた。
「渋谷さん、お体は如何ですか?」
俺の声を聞くや否や、小さな子供のようにそっぽをむいて、むくれる彼。
「なにそれっ。俺は、コンラッド先生にいつも言ってるでしょ?ちゃんと俺の名前を呼んでよねっ」
「そうでした、すみません、ユーリ」
言いながら、柔らかな笑いが込み上げた。台詞が微妙に違うけれど、夢の中までも俺たちはいつものやりとりをしたから。
けれど、いつもと違ったのは彼の反応だった。
満面の笑みを浮かべた後、ぎゅっと俺に抱きついてくるユーリ。おまけに、俺の胸に顔をこすりつけてくる。
「うん!それでいいよ。コンラッド先生。コンラッド先生の身体・・・大きくて・・・あったかい・・・気持ちいいな」
可愛らしすぎる・・・・。唯でさえ可愛いユーリなのに、これでは反則じゃないか。
ギュンターではないが、眩暈がする。
俺に、さらなる試練が訪れる。
にわかに、俺から離れると、制服を捲し上げるユーリ。制服の裾から、華奢な腹部を見せるユーリ。恥ずかしげに俯きながら、顔を上気させて。
「コンラッド先生・・・・みて下さい」
それが、医者として聴診器で彼のお腹や心臓の音を聴くという意味だと理解するのに時間が掛かった。彼の愛らしさのせいで、すっかりおかしな意味に取りそうだった自分に戸惑う。
夢の中での愛らしいユーリにすっかり参ってしまった。
聴診器の先端を胸に当てる際に、ふいに俺の指が彼の胸の敏感な膨らみに触れてしまった。
「ふあっ!・・・だめっ・・・・コンラッド・・・先生」
びくんと大きく身体を仰け反らせるユーリ。甘えたような艶っぽい声で喘ぐユーリ。伏せ目がちに、濡れた瞳で俺を見上げるユーリ。
これは・・・・正直辛い。誘っているとしか思えない。
夢の中なら・・・・・貴方を好きにしても赦されますか?
思わず浮かんだ浅はかな考えを、即座に打ち消す。
気持ちが通じ合っていない今、そうするのはルール違反だと思ったから。
例え夢の中だとしても。
彼の気持ちを何よりも一番に考えてあげたい。
自分の気持ちよりも。何よりもそれが優先事項。
けれど、この夢の中のユーリは愛らしすぎる。やたらに、甘えてくる。父親に甘える子供のように、いや、それ以上だ。まるで恋人に甘えてくるかのように・・・。
どうか、俺の理性が踏みとどまりますように。そう願わざるを得ない。
そう願う俺を試すかのように、ユーリは一層俺に追い討ちをかける。
急に、大人びた艶っぽい表情になると、甘く切ない掠れた声を出す。
「コンラッド・・・・、今日は・・・・・してくれないの・・・・・・?」
上気して、櫻色に染まった頬、淡い唇からは熱っぽく吐息が零れる。長い睫毛に縁取られた漆黒の瞳が遠慮がちに、俺を見上げる。
そのまま瞳を閉じて、唇を差し出すかのように更に顔を上げるユーリ。
とても、綺麗です、ユーリ。
その表情に見惚れてしまう。
御免なさい、ユーリ。そんな顔でそんな言葉を呟かれたら、俺はもうその言葉を都合のいい解釈にしか取れません・・・・。自分勝手な俺を赦して・・・・。
堰を切ったように、彼の顎に手をかけて、柔らかいその唇を味わう。
ずっと欲しかったその唇を。
夢の中とは思えないくらいの、柔らかな感触だった。俺の唇よりも少しふっくらとしたその唇。けれど、愛らしく小さいその唇。
白衣を着た医者の格好で、夢中で彼に口づけをする。空いたほうの手を腰に回し、きつく抱き寄せる。
「ん・・ふ・・・っ」
彼の唇から甘い吐息が零れ落ちる。
その甘い声に、俺の口付けは大胆さを増していく。
夢であろうと構わない、彼を心ゆくまで・・・・愛したい。可愛がりたい。
彼の全てを手に入れてしまいたい。
・・・・こんなこと、夢だから出来るだけだが。
現実でこんなこと、出来るはずがない。俺は所詮、彼の眞魔国での親を兼ねた臣下だ。彼が俺に恋愛感情など持ってくれる筈が無い。親子の情愛の念以上の想いを彼が俺に抱いてくれる筈が無い。
彼には、地球の思想が色濃く根付いているから。男同士の恋愛はご法度だという概念が。彼のヴォルフラムに対する態度を見ているだけで、それは一目瞭然だ。 男同士というだけで、恋愛はないものだと考えている節がある。
感傷に浸りかけたときだった。
ユーリが、物凄い力で俺を押し退けながら立ち上がる。唇を手で拭いながら、真っ赤になって、目を見開いて俺に叫ぶ。
「やだよっ・・・コンラッド?!何、どうして、こんなことするの?!」
消毒薬のきつい臭いの篭る室内に、彼の悲痛な叫びが響く。
正直、傷ついた。夢の中でさえも、俺は彼から受け入れられないことに。いつもの笑顔を取り繕うだけの余裕は皆無だった。ずれた眼鏡を指で押し戻すことくらいしか出来なかった。
ぼろぼろと涙を流し立ち尽くすユーリ。
「俺は、ただいつもみたいに頭を撫でて欲しかっただけなんだよっ・・・!!」
彼の言葉が、ますます俺を傷つけた。夢で、彼の核心の部分を知ってしまうなんて。あまりにも酷だ。
やはり、貴方は俺のことを親という範疇に置いていたのですね。だから、俺がその範疇を超えてキスしたことに、ひどく傷ついてしまったんですね。
俺の懸念していたことが、事実だと分かるとそのショックは大きい。
理性に負けてしまった、貴方にキスをしてしまった俺を赦してください。
呆然と、彼を見つめることしか出来なかった。
泣きじゃくる彼を抱きしめてあげたいのに、金縛りにあったように身体が動かなかった。
哀し過ぎて。せつな過ぎて。たった今、失恋してしまったから。ずっと恋焦がれていた相手に。
ふいに、ユーリに両肩を掴まれて、まっすぐに瞳を見つめられる。涙に潤んだ愛しい瞳で見つめられる。
「逃げないで答えて!コンラッド!!どうして・・・どうして、キスなんかしたの?俺は、コンラッドの何?コンラッドのことがもっと知りたいんだ!!コンラッドの本当の気持ちを教えて?」
これは・・・もう言ってしまっていいのかもしれない。もう、失くす物は何も無いのだから。たった今、失恋したも同然なのだから。
その上、ここは夢の中だから。
にわかに立ち上がると、出来る限りの優しさを込めてそっと彼を抱きしめる。
「貴方の事が、好きです・・・・。ずっと貴方に恋していました。だから、キスしたんです。」
長年の想い・・・・。ようやく、彼に伝えることのできた大切な想い。胸が熱くなる。けれど、彼に決して受け入れられない想い。・・・・胸が苦しくなる。
腕の中で、再びユーリが激しく嗚咽をもらす。身体を震わせて泣いている。
「・・ぅ・・っぅ・・・」
ユーリの頭を優しく撫でる。
「俺は、また貴方を傷つけてしまいましたか?本当に、御免ね、ユーリ。俺からの告白は、夢の中でも貴方にとっては荷が重すぎたんですね。気が利かない男で御免ね、ユーリ」
にわかに俺の顔を見上げるユーリ。涙に濡れた揺れる瞳。綺麗だな。こんな時に・・・不覚にもそう思った。
「違う・・・。・・・っう・・・。そうじゃないよ・・・・・コンラッド。嬉しくて・・・嬉しすぎて泣いてるんだよっ・・・ぅ」
俺は、彼の言葉に耳を疑った。嗚咽を漏らしながら、懸命に呟くその言葉に。
嬉しい・・・?俺がユーリに恋をしていた、と言ったことが嬉しい?
そんな、先程貴方は俺のキスを拒絶したのに・・・なぜ?
彼の熱い瞳が俺を捕える。
「俺はね、ずっと、ずっとあんたの気持ちが知りたくてたまらなかった!!あんたは、俺のことを大事にしてくれるけど・・・・いつもその爽やかな笑顔で俺を遠ざけていたから」
俺にしがみつくユーリ。小刻みに身体が震えている。過去を回想してひどく傷ついている様子だ。俺が、ユーリをここまで傷つけていたのか・・・・・。夢にまでうなされる程に。
「あんたの本心に近づきたくて・・・でも、本心に近づくたびに、その笑顔で隠されてしまったから。ずっと、あんたの本音が聞けなくて苦しかった。俺のことをどう思っているのかって。俺はコンラッドにとってどういう存在なのかって。コンラッドの本当の気持ちが知りたくて・・・たまらなかったんだ!」
俺に抱きつく腕に力を込めるユーリ。
「そこへきて、あんたが俺にキスなんてするから・・・俺、あんたが俺のことを好きって思ってくれてるんじゃないかって・・・期待しちゃって・・・・さっきは、ひたすらにあんたにキスした意味を問い詰めて・・・ごめん・・・」
そっと俺の腕の中から、俺を見上げる愛しい人。
そうだったんですね。分かってあげなくて、御免ね、ユーリ。貴方は、俺のキスが嫌だったわけじゃなかったんですね。きちんと話を聞いてあげなくて、御免ね、ユーリ。貴方をこれほど悩ませてしまって御免ね。
「でも・・・・でも・・・教えてくれてありがとう。あんたの気持ちを教えてくれて・・・・ありがとう」
花が綻んだ様な、綺麗で暖かい笑顔に迎えられる。
「俺・・・コンラッドのことが・・・」
****
白銀の朝陽に邪魔をされて、俺は目を覚ます。
俺の気持ちは夢で彼に伝えられた。けれど、結局ユーリからのはっきりとした返事を聞けないままに、目を覚ましてしまった。彼の言葉の先を聞く前に。
そんな心残りな、未練たらしい気持ちでいると、隣の彼が愛らしく目を擦って伸びをする。なんて、可愛いんだろう。彼を見ているだけで、癒された。
「ん・・・コンラッド?あれ、珍しいね。一緒に眠り込んでたんだ、俺たち」
照れくさそうに、俺に微笑むユーリ。
「おはようございます、ユーリ」
愛しい彼の鼻先にキスをした。自分でも、驚くほどに彼に対して大胆になっていた。夢のおかげで、俺の中の何かが吹っ切れた。
顔を真っ赤にして、慌てふためくユーリ。それさえも可愛らしいけれど。
「ちょ、ちょっと・・・・照れるよ・・・コンラッド。あ、あのさ~昨日なんかよく覚えてないんだけど、すっごくいい夢を見たんだよ。まるで俺の長年の夢が叶ったみたいな感覚だったんだよっ!!」
彼のその言葉に、俺は胸がいっぱいになった。
華奢な彼を腕に抱きしめて、その柔らかい唇に上からキスを落とす。角度を変えて何度も啄ばむように甘い口付けをする。甘い唇を吸い上げる。シーツの衣擦れの音が甘く響く。
「ん・・っふぁ・・・あ・・・ん・・・!!」
名残惜しげに、俺は唇を離す。
揺れる瞳で俺に問いただすユーリ。耳までも真紅に染め上げて。唇に指を当てながら。
「コン・・・ラッド?どうして・・・どうして・・・・キスしたの・・・?」
俺は、昨夜と同じ告白を繰り返す。しなやかな彼を腕に抱きこんだまま、俺の下にいる可愛い彼を甘く見つめる。そっと愛らしい顔を撫でる。
「貴方の事が、好きです・・・・。ずっと貴方に恋していました。だから、キスしたんです。」
ずっと、貴方が悩んでいたことを昨日の夢で気がつけたから。俺が、貴方を好きな気持ちを必死に笑顔で隠していたことが、深く貴方を悩ませていたことに。もう、貴方にこの気持ちを隠しません。俺の想いが強すぎて、貴方を困らせてしまうかもしれませんが・・・・。貴方のことが好きで堪りません。
ユーリの愛らしい顔が真紅に染まっていく。漆黒の瞳には、切ない雫が滲んでいく。ふるふると、小刻みに震えだすユーリ。
「これ・・・・、昨日の夢・・・だ。今、思い出した。俺・・・・コンラッドから好きっていわれて、信じられないくらい嬉しかったんだ・・・!!コンラッドが俺のことをどう思ってるのか知りたくて・・・・知りたくて・・・やっと教えてくれたその答えが・・・・・俺が一番望んでたものだったんだから!正夢になるなんて・・・そんなの、そんなこと、嬉しすぎる・・・!!」
愛らしい瞳を朝陽に輝かせ俺を見上げるユーリ。きらきらと眩しい太陽のようだ。
「コンラッド!!大好き・・・俺もずっとあんたのことが好きだったんだ。だけど、ずっとあんたの気持ちにばかり拘ってた。あんたは、俺のことを好きでいてくれるのかって・・・。俺はコンラッドにとっての何なのって。今思えば、まずは自分の気持ちを伝えればよかったのにな・・・て思うよ」
少し、その愛らしい顔を曇らせるユーリ。切なくかすれる声。頬を涙が伝う。俺は、指で優しく涙を拭ってやりながら、真剣に彼の言葉に耳を傾ける。
「俺は、とっても臆病で卑怯だったんだ。あんたの気持ちを知るまでは、好きだ何てとても伝えられなかった・・・。だって、俺もコンラッドも男だし、受け入れてもらえる自信なんてかけらもなかったから」
朝陽さえ霞んでしまうような眩しい笑顔で微笑むユーリ。
「でも・・・ありがとう、コンラッド。コンラッドが勇気をだしてくれたから・・・・。俺たち・・・気持ちが通じ合えたんだね・・・・」
ユーリの言葉に少しばつが悪くなった。俺が、告白できたきっかけは魔道装置だったから。
「ユーリ・・・実は・・・昨日俺は貴方の夢に入っていたんです」
目を見開く貴方。
「ええっ?それってひょっとしてアニシナさんの例の・・・『夢芝居』?」
彼に向けて、にこりと微笑む。
「ええ、そうです。その夢のおかげで、貴方の悩みが分かったんです。貴方が、俺の態度に深く悩んでいることが、分かったんです。俺が、貴方を好きなことをはっきりと言わず、曖昧な笑顔で誤魔化してきたことを貴方はひどく悩んでいたのが分かったんです。だから、ようやく俺は貴方に告白できました」
相変わらず、零れ落ちそうな大きな瞳を丸くして見つめる貴方。
「俺も、貴方の気持ちを知らなかったら・・・・告白する勇気を持てたか・・・・正直自信がありません。俺は、臆病な男です」
正直に、彼に告白をする。彼に幻滅されてしまっただろうか。
ふいに、彼の華奢な腕が俺の首筋に巻き付いてくる。彼は、上体を捻り愛らしい唇を俺の唇に重ね合わせる。
「ユーリ・・・!!」
彼の積極的な甘い、可愛らしい行動に、惚けたように彼を見つめる。
そっと唇を離すと、痺れるような甘い笑顔で俺を赦してくれる彼。
「コンラッド・・・!!どうあれ、俺は今すごく・・・幸せだよ・・・・。大好きだよ・・・・。ずっと、コンラッドと両想いになりたかった・・・・。こんな風に・・・キスしたかった・・・・」
愛らしさに、堪らず彼の唇を奪う。
こんな日が来るなんて、夢にも思いませんでした。
夢にも・・・。夢で貴方の想いに気づけたから・・・。よかった・・・・、貴方と通じ合えて。躊躇無く、貴方にキスできる日が来るなんて・・・・!
俺は、フォンカーベルニコフ卿に、心の中で密やかに感謝することにした。
第十一編=完
あとがき★★
第十編に続いて、アニシナさんの発明品で結ばれる二人のお話でしたvvv
こんなことがあったらいいなという管理人の妄想でした(汗
ちなみに、夢の中に医者の格好をした異性が出てきたら、その相手に好意を持っているらしいです。
↓↓↓下に、イラストおきました。眼鏡+白衣コンラッドです。眼鏡好きな管理人でした(汗
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