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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2009/10/07 (Wed)                  雪の王 ~雪の王国(2)~

 唐突に、背後からブーツの音と咳払いが聞こえた。

「まったく・・・。私がいることを完全に忘れているんじゃないの? それに、なんだか私の大切なお人形を目覚めさせてくれたみたいじゃない?」

 そう、コンラッドは、サラがいることを完全に忘れ去っていた。
 そして、そのことを取り繕うよりも、サラの発言が癪に障った。

「ユーリは、ユーリだ。あなたの人形なんかじゃありません。大切な、俺のユーリです!」

 コンラッドは、ユーリを抱き起こして胸に抱きしめた。

 サラは、身を捩じらせて、笑った。

「なにが、大切なの?ねぇ、だって無理やりにキスしてたじゃない?彼の気持ちも聞かずにさ。それって、僕と同じでしょ。自分の欲望を彼にぶつけてるだけなんでしょ?」

「それは―― !」

 違う、と続けたかった。けれど、本当にそういい切れるのか、自信がなかった。

 彼の気持ちも聞かないで、一方的に気持ちを押し付けて。あげく、キスをして。

 ユーリは、ひどく戸惑っていた。

「ほら、やっぱりね。それじゃ、彼をあなたに返してあげない。だから、ね、戻っておいで、私の可愛い子・・・・・・」

 サラは、ユーリに向かって微笑むと手を差し伸べた。
 長い睫毛に縁取られた金色の瞳が、鮮やかなサファイアブルーに輝きを変えた。

「いやだーー!!」

 ユーリは、コンラッドの胸に顔を伏せた。その碧い瞳を見るよりも前に。

「どうして? ここに居れば、何でもあなたの思うままにしてあげるよ?」

 くすぐるように甘い声で、サラはユーリに誘惑を続ける。

 けれど、ユーリはとうとう泣き出した。

「やだ、いやだーー!! 僕は、コンラッドお兄ちゃんがいれば、それでいいの!! 他にほしいものなんてない! 寂しかった・・・・・・」

「ユーリ?」

 ユーリは、ぎゅっとコンラッドの腕を掴んで切ない顔で見上げた。

 それは、幼い頃にユーリが見せていた表情とは、かけ離れるものだった。

「そうだよ、俺、ずっと寂しかった。寂しかったんだ・・・・・・。俺、突然毎日が嫌でたまらなくなった。毎日、ふてくされてた。施設の皆が俺を煙たがっても、コンラッドはいつも味方だった。嬉しかったのに、俺は素直になれなくて、あんたを避けてた」

 ユーリが涙を流すたびに、そっと指先で拭ってあげた。安心したように、ユーリは話を続ける。

「俺は、施設を飛び出した。誰も追いかけてくれなかったけど、コンラッドだけは追いかけてきてくれた。それなのに、俺は、あんたを試したんだ。コンラッドも、俺の髪や瞳が黒いのが気持ち悪いんでしょ?なんて、問い詰めた」

 ユーリは、身体を震わせた。コンラッドは、震えるユーリを優しく抱きしめた。

 そして、コンラッドはあの日のことを昨日のことのように思い出した。

 ユーリの黒い髪も瞳も、大好きだよ、と言いたくても声が痺れて出なかったあの日のことを。

「ユーリ! あなたの黒い髪も瞳も大好きです」

 数年前に言えなかった言葉を、今ようやく紡ぐことができた。
 ユーリは、むせび泣きながらも、一生懸命にコンラッドの顔を見上げた。

「わかるっ・・・・、わかるよ、今なら。あの時、あんたが何も返事しなくても、きっと俺のことを気持ち悪いなんて、思うわけがないって。でも、でも、俺は、心が荒んでいたから・・・・・・だから、あのとき、サラに黒い瞳がきれいだねって言われて、心が揺れた。幼い自分は、とても、嬉しかったんだ。初めて自分が認められた気がして・・・・・・。でも、サラの側にいると不自然なほどに、楽すぎて・・・・・・気がついてみたら、もう、自分をなくしてた」

 ユーリは、濡れた睫毛をふるわせた。その漆黒の瞳が、ひときわ輝いた。頬に朱が差して、愛らしさが浮き立つ。

 ―― こんなときなのに、ユーリの可愛らしさに目が奪われる。可愛くて、たまらない。

「でも、コンラッドが・・・・・その・・・・・キ、キスしてくれただろ? なんか、それだけで、嬉しかった。すごいキスで、ど、どきどきしたけど。コンラッドから、それだけ必要とされてるんだって思ったら、すっごく嬉しかった。心の奥に沈んでた寂しくて、むなしい気持ちが、全部きれいに消えていったんだ」

「ユーリ!」
「コンラッド!!」

 二人は、聖堂の床の上で、互いにきつく抱きしめあった。
 甘い安らぎに満たされた。

 さきほどまで、冷たく感じたユーリの身体は、今ではとても温かくて優しいぬくもりになった。白い布地から覗く肌は、きれいな淡い櫻色だった。

 そのとき、ユーリの身体が優しい光に包まれた。

 二人の間から、何かが床に転げ落ちた。
 小気味のいい軽やかな音が、聖堂に響いた。

 それは、小さな硝子の欠片だった。
 ステンドグラスから陽光が差し込んで、床の上の硝子が、なないろの輝きを放った。

  それは、紛れもなくあの雪の日にユーリの上に降ったもの。―― 『にじ色の雪』だった。

「あはははっ、そう、だったんだ。君はあの鏡の欠片が埋まっていたんだね。なんだ、どおりで、急に君の魅力がなくなったわけだ」

 床の上で抱き合う二人は、高笑いをする人物を振り仰いだ。

 身を捩じらせて、口元に手をあてて、高笑いをするのは、サラだった。彼は、小馬鹿にするように二人を見下ろした。

 サラは、わざと傲慢な態度を装っているようにみえた。

 そう感じたのは、その水仙色の淡い瞳の淵に、露が浮かんでいたから。皮肉を形どるはずの彼の唇は、不自然に歪んでいたから。

「僕にはね、暖かいもの、やさしいものは似合わないんだ。だって、そういうものには僕はいつも逃げられてしまうから。あたたかいところでは、生きていけないんだよ」

「どうして、そんなことをいうの!?」

 心優しいユーリは、彼の悲しみをいち早く見抜いていた。

「大丈夫だよ! サラはそう思い込んでいるだけなんだ。きっと、きっと、信じれば何だって、今よりは少しはよくなるはずだよ?」

 さきほどまで、彼に操られていたようなものなのに。それにも関わらず、ユーリは親身になって彼の身を案じる。床の上に立ち上がり、サラに全身でその想いをぶつける。

 そんな一生懸命な彼の姿に、こちらまで幸せな気持ちが訪れる。

 もちろん―― 少しの嫉妬心と。

 けれど、サラは力なく微笑んだ。粉雪のように、儚くて消えてしまいそうな笑顔だった。


「ありがとう、本当に君は優しくて、暖かいんだね。でも、ごめんね。僕は、そういう運命なんだ。暖かいものの側では生きられないんだ。暖かいところでも・・・・生きていけないんだ。でもね、君の優しさにふれて前向きに考えることができたよ。暖かいものの側では生きられなくても、僕には僕にふさわしいところがあるんだって気になれた。僕に、ぴったりの場所がね。これからは、悲観的にならずに済みそうだよ。ありがとう―― ユーリ・・・・・・!!」

 サラが、初めて『ユーリ』と呼んだ。そのフレーズが引き金となったらしい。

 まるで、何かの魔法が解けたように、今まであったはずの聖堂が消え去った。そして、サラも。

 いつかと同じ、視界が真っ白になった。

 吹雪が舞った。白銀の世界に、粉雪に混じって、キラキラとダイアモンドのような粒や、サファイアのような粒が降る。まるで、涙のような。

 粉雪はまるで別れを惜しむように二人の身体を優しく撫でた。


 気がつくと、あたたかい南風が身体を包んだ。
 目の前の白い霧が去って、やわらかな透き通る大気が広がった。

 ―― 春、だった。

 あたり一面は、若草色の大地だった。パステル色の花々が咲き乱れ、気だるいほどの甘くて陽気な世界が広がっていた。

 若草にたたずむユーリは、春風のように優しく微笑んだ。

「きっと、彼は、居場所をみつけられたよな」

「そうですね、ユーリ。ユーリの優しさには、誰だって心を動かされてしまいますから。ユーリに出会えて、彼は、とても幸せだったと思います」

 ユーリの肩を大切に掴んで、その大きくて表情豊かな瞳を覗き込んだ。

 サラサラの黒髪を、春風に弄ばれながら、ユーリは頬を真っ赤に染め上げた。ふいっと、俺から視線を外すと、ぶっきらぼうに彼は言う。

「な、なんだよ。俺を、買いかぶりすぎだよ。結局、俺は何もしてやれなかったんだから」

「いいえ、ユーリ。そんなことは、断じてありません。俺も、あなたに心を動かされた一人だから、よく分かります。ユーリに出会えて、俺は、とても幸せです」

「ばかっ、そんな恥ずかしい台詞は、面と向かって言うなよっ」

 ユーリは、みるみる目を大きく見開いて、頬を朱色に染める。照れ隠しの言葉は、投げやりだけど、その仕草は愛らしい。

 その初々しくて、愛らしい動作は、何度見ても惹かれる。

 見た目は、こんなにも綺麗に成長したのに、どうして、仕草はこんなに変わらないんだろう。昔から、ちっとも変わらない。とても、素直で、うぶな反応。

 ―― あぁ、なんだ、そうか。俺は、本当に昔から彼に惚れていたんだな。

 嬉しくて、俺は胸の中にユーリをきつく抱きしめた。胸の中で、ユーリはじたばたと慌てた。

 今まで、聖堂の中で散々抱きしめていたのに。いざ二人きりになって抱きしめられて、照れているのだろうか。

 本当に、どこまで可愛いんだろう。

 ―― もっと、彼の可愛い反応を引き出せないだろうか。

 ふいに、そんな悪戯心が芽生えた。

「ユーリ、さっき聖堂の中で、どうしてキスするの? って聞きましたね。あの時は、まだ、あの雪の日のままの、子どもの心のユーリでしたよね。でも、今のあなたは、全てを知っていますよね? それとも、まだ、どうして俺があなたにキスしたか分かりませんか?」

「こ、コンラッドお兄ちゃん?!」

「ユーリ、その呼び方をしないで。だって、俺は、ユーリを弟のように好きなわけではありませんから」

 コンラッドは、意味深に、甘い声で彼の耳元で囁いた。彼は、コンラッドの吐息にびくっと身体を捩じらせた。

 ユーリは、いつでも予想以上の素直な反応をしてくれる。

 そんなユーリの頭の後ろに手を回して、若草の上に押し倒した。

 二人して、桃源郷のように穏やかな春の野原に寝た。とはいえ、コンラッドがユーリの上に覆い被さった状態で。

 ユーリの顔の横に両手を付いて、両膝を彼の身体の両側に付いて、上からユーリを見下ろした。
 ユーリは、少し怯えたような、困ったような顔をして、顔を上気させている。
 なんて、嗜虐心をあおる、可愛さなんだろう。

「ユーリ、さっきのキスを覚えてる?俺は、あんなことをしたいくらいあなたが好きなんです」

「う、うん。覚えてる。それに、俺、さっきも言ったけど、コンラッドにキ、キスされて嬉しかったんだ。必要とされてるって感じられて」

 照れながらも、たどたどしく言葉をつなげるユーリは、もう誘っているとしか思えない。
 彼の指に、コンラッドも指を絡めていく。ユーリの全ての指を、コンラッドが絡めていく。小さくて、細い指が愛らしい。

「っ・・・ん」

 ユーリは、コンラッドの指が絡んだだけで、甘く切ない吐息を零した。

 そのとき、心臓が激しく脈打った。

 同時に、はげしい眩暈が起こり、視界が一瞬ぼやけた。心拍数が、跳ね上がり、著しい酸欠状態が起きた。


 一体、俺の身体に、何が起きている?

 そのとき、紅い髪の魔女の映像が浮かんだ。もしかして、これは、アニシナの薬の副作用?
 ユーリに口移しをするときに、俺も微量飲んでしまったから?
 あの鏡を体内に持っていない者が、あの薬を飲むと、何かが起きるのか?!
 
 ―― ええ、そうですとも!!

 南風に乗って、あの凛とした伸びのある魔女の声が届いた気がした。


 けれど、身体の調子が、おかしいのはその一瞬だけだった。異常な心拍数や、酸欠は、すぐに収まった。

 ただ、目の前のユーリを見たとき、何かが、おそらく全うな理性が、崩れ落ちた。 



※※ この続きは、裏面です。お兄ちゃんプレイ的ななにかです(汗 なんじゃそれ。
   裏のヒントは、右下の英語です。大人の方だけお願いしますね。   


happy-yuuri.gif←画像をクリックで前へ♪


★あとがき★

最後は、少しは、にやにやコンユになっていればいいのですが。

あとは、もう、アニシナ様の≪汗≫薬の副作用で、コンラッドがユーリを・・・な展開です。当然、裏面直行です≪汗≫

 もうすこし、お待ち下さい。

拍手くださった方、ありがとうございました(^^)
 
 

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