2009.4.22設置
『今日からマ王』メインです。
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こんなに気まずくなるのなら、あんな好奇心を起こさなければよかった……。
一年目の浮気?
「なぁ、コンラッド? ちょっとだけおれに付き合ってよ」
そう言うとおれは、恋人になって一年ほどになるコンラッドの手を引いて、宝物庫に駆け込んだ。
運試しのような、占いのような軽い好奇心からだった。アニシナさん作の怪しげなタイムマシーンもどきに乗る気になったのは。
アニシナさんの装置は、見た目もドラ○もんのタイムマシーンもどきだ。そして、乗り込む二人の未来を見せてくれるという代物だ。ずいぶん前に、彼女が完成させた作品だけど……なぜかお蔵入りしている。
けれど、好奇心は猫を殺す……なんて受験英語でよく聞くフレーズ通り、ろくでもないことになった。
なぜなら、おれ達がなんちゃってタイムマシーンで見た映像は、恋人同士への試練としか思えない内容だったから。
******
血盟城の大広間は華やかに飾り立てられていた。その中央には、着飾った貴族達が宮廷楽団の演奏に合わせて、踊りを楽しんでいた。
そんな貴族たちの煌びやかな衣装の裾が、踊りに合わせてふわりと翻る。色とりどりの花が、綻んだみたいだなと玉座に座りながらぼんやりと眺めていた。それは、夢を見ているように、どこか遠く感じる映像だった。
その時だった。ひときわ人目をひく美男と美女を見つけた。 彼らは、童話の王子と姫のように圧倒的な存在感を見せていた。その二人だけが、風景の中で鮮やかに浮き立っていた。童話のお姫様は、透き通るように青みがかった肌に、薔薇色の唇をしていた。ふわりとした柔らかそうな髪は長く、まばゆいばかりの白に近い金色だ。そのうえ、その瞳は、凪いだ海のような優しい碧色をしている。
―― けれど、何よりも問題はその王子様が白い正装姿のコンラッド――つまり、おれの恋人ということだ。
絶世の美女に微笑みかけるコンラッドを見ると、胃がキリキリとした。すっかり出来上がった二人の世界に呑み込まれて、窒息しそうな息苦しさを感じた。自分が、彼の恋人という事実などなくなってしまった気がした。仲睦まじい二人を見ているのが辛くて、おれは感情のままに退座した。
すると、走るおれに合わせるように、風景が歪みながら流れていった。目眩がして、たまらずその場に、立ちすくんだ。
視界が暗くなったかと思うと、目の前に淡い光に照らされた噴水が浮き上がった。その背後には、初夏の庭の木々が、濃紺色のシルエットを作っていた。そして、辺りには土の湿った香りと凛とした草花の瑞々しい香りが立ち込めていた。
どうやら瞬時に、背景が城の中庭へと変わったらしい。起きながらにして夢を見ているようだった。
けれど、そんな呑気なことを考えている余裕はなくなった。噴水の奥の樹木に、男女の人影が見えた。その時、おれは、嫌な胸騒ぎを覚えた。途端におれは、肉体が消え去って、意識だけが猛スピードで、二人を追いかけた。その先で、おれは見てしまった。
白い正装姿のコンラッドが、童話のお姫様に――キスをしているのを。
******
気が付くと、おれはコンラッドと一緒に薄暗い宝物庫の中にいた。アニシナさんの装置に二人して乗り込んだままだった。
おれは、心拍数がひどく上がっていた。かなり動揺していた。最初は、ただ映像のショックが大きかった。視界に直接、恋人が他人とキスなんてしているのが飛び込んできたから。それも、恋人のキス相手が、可憐な美女だったら、立つ瀬がない。ただでさえ、こちらは平凡な男子高校生だというのに。そして、この装置が未来を見せてくれるという特性があったことを思い出して、打ちのめされていた。
あんなことが、この先に起きるかもしれないなんて……。二人して、言葉なく黙りこんでいた。けれど、沈黙に耐えられなくなったおれは、わざと陽気に振る舞った。
「コンラッドの浮気者っ。ダメだろ? いくら綺麗な人だからってキスなんかしちゃ」
何でもない風を装い、明るく笑って見せる。けれど、どうしても肩が小さく震えてしまう。そんな些細な動作に、彼が気付かないことを願っていた。
「ユーリ、肩が震えてる。おれの前では無理をしないで」
変わらない彼の甘い声がおれの弱いところを擽(くすぐ)る。薄い闇の中では、彼の声は飛び抜けて甘く聞こえる。おれの小さな強がりは、あっさりと崩れてしまう。
「……ばか。せっかく情けないとこをあんたに見せずに済むと思ったのに……」
おれの顎先に優しく触れてきた長い指先を、ぎゅっと握りしめて、コンラッドを見上げた。
「あんたが、う、浮気するなんてなにかの間違い、だよな?」
「……」
「コンラッド?」
「……ええ」
おれの問いかけに、僅かな間を開けて答えると、そっとコンラッドは笑って見せた。心配しないで、というように。けれど、その笑顔は綺麗なのに、どこか悲しそうで、胸がざわめいた。
その日から、一週間後の今、血盟城では貴族たちを招いての盛大な舞踏会を開いていた。おれは目の前に広がる眺めに既視感を覚えて、動悸が激しくなっていた。
そして、ついにあの悪夢がそこまで迫っていることを悟った。
貴族たちの優雅な舞いを、玉座から眺めていたおれの前に、とうとう例の童話の王子様とお姫様が現れたからだ。それは、紛れもなくアニシナさんの装置に出てきた可憐な美女と正装姿のコンラッドだった。
見なければいいのに、コンラッドの表情や仕草ばかり見てしまう。まばゆい白の正装姿のコンラッドは、それだけで品があり、凛々しい。そのうえ、優雅に女性をエスコートするその所作は王子様としか言い様がない。けれど、そんな彼が綺麗な女の人に、優しく微笑みかけるのを見ると、胸が痛む。最近では、彼が女の人に、社交辞令で愛想よくしているだけでも、いい気はしない……。コンラッドと恋人関係を一年も築いてきたのに、おれはどんどん嫉妬深くなっていた。
まして、今彼の前にいる人が、美人で可憐で……これからコンラッドとキスをすることをアニシナさんの装置に予期されている。
「そんなの嫉妬しないほうがどうかしてる」
胸の内の想いが、知らずに独り言となって出ていた。
2へと続く

★あとがき★
あぁ、いやなところで切ってすみません……。ここから、ラブラブコンユに巻き返す予定(ってこんなこと書いてネタばれにならないのかな?)なので、そっと見守っていただけたら嬉しいです。
初めて携帯から書いているので、なんかいろいろとおかしいところがあるかもしれませんが、ぬるく見守ってください^^;
台詞少なくて退屈だったかも…2は、台詞がもっと増えます。
一年目の浮気?
「なぁ、コンラッド? ちょっとだけおれに付き合ってよ」
そう言うとおれは、恋人になって一年ほどになるコンラッドの手を引いて、宝物庫に駆け込んだ。
運試しのような、占いのような軽い好奇心からだった。アニシナさん作の怪しげなタイムマシーンもどきに乗る気になったのは。
アニシナさんの装置は、見た目もドラ○もんのタイムマシーンもどきだ。そして、乗り込む二人の未来を見せてくれるという代物だ。ずいぶん前に、彼女が完成させた作品だけど……なぜかお蔵入りしている。
けれど、好奇心は猫を殺す……なんて受験英語でよく聞くフレーズ通り、ろくでもないことになった。
なぜなら、おれ達がなんちゃってタイムマシーンで見た映像は、恋人同士への試練としか思えない内容だったから。
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血盟城の大広間は華やかに飾り立てられていた。その中央には、着飾った貴族達が宮廷楽団の演奏に合わせて、踊りを楽しんでいた。
そんな貴族たちの煌びやかな衣装の裾が、踊りに合わせてふわりと翻る。色とりどりの花が、綻んだみたいだなと玉座に座りながらぼんやりと眺めていた。それは、夢を見ているように、どこか遠く感じる映像だった。
その時だった。ひときわ人目をひく美男と美女を見つけた。 彼らは、童話の王子と姫のように圧倒的な存在感を見せていた。その二人だけが、風景の中で鮮やかに浮き立っていた。童話のお姫様は、透き通るように青みがかった肌に、薔薇色の唇をしていた。ふわりとした柔らかそうな髪は長く、まばゆいばかりの白に近い金色だ。そのうえ、その瞳は、凪いだ海のような優しい碧色をしている。
―― けれど、何よりも問題はその王子様が白い正装姿のコンラッド――つまり、おれの恋人ということだ。
絶世の美女に微笑みかけるコンラッドを見ると、胃がキリキリとした。すっかり出来上がった二人の世界に呑み込まれて、窒息しそうな息苦しさを感じた。自分が、彼の恋人という事実などなくなってしまった気がした。仲睦まじい二人を見ているのが辛くて、おれは感情のままに退座した。
すると、走るおれに合わせるように、風景が歪みながら流れていった。目眩がして、たまらずその場に、立ちすくんだ。
視界が暗くなったかと思うと、目の前に淡い光に照らされた噴水が浮き上がった。その背後には、初夏の庭の木々が、濃紺色のシルエットを作っていた。そして、辺りには土の湿った香りと凛とした草花の瑞々しい香りが立ち込めていた。
どうやら瞬時に、背景が城の中庭へと変わったらしい。起きながらにして夢を見ているようだった。
けれど、そんな呑気なことを考えている余裕はなくなった。噴水の奥の樹木に、男女の人影が見えた。その時、おれは、嫌な胸騒ぎを覚えた。途端におれは、肉体が消え去って、意識だけが猛スピードで、二人を追いかけた。その先で、おれは見てしまった。
白い正装姿のコンラッドが、童話のお姫様に――キスをしているのを。
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気が付くと、おれはコンラッドと一緒に薄暗い宝物庫の中にいた。アニシナさんの装置に二人して乗り込んだままだった。
おれは、心拍数がひどく上がっていた。かなり動揺していた。最初は、ただ映像のショックが大きかった。視界に直接、恋人が他人とキスなんてしているのが飛び込んできたから。それも、恋人のキス相手が、可憐な美女だったら、立つ瀬がない。ただでさえ、こちらは平凡な男子高校生だというのに。そして、この装置が未来を見せてくれるという特性があったことを思い出して、打ちのめされていた。
あんなことが、この先に起きるかもしれないなんて……。二人して、言葉なく黙りこんでいた。けれど、沈黙に耐えられなくなったおれは、わざと陽気に振る舞った。
「コンラッドの浮気者っ。ダメだろ? いくら綺麗な人だからってキスなんかしちゃ」
何でもない風を装い、明るく笑って見せる。けれど、どうしても肩が小さく震えてしまう。そんな些細な動作に、彼が気付かないことを願っていた。
「ユーリ、肩が震えてる。おれの前では無理をしないで」
変わらない彼の甘い声がおれの弱いところを擽(くすぐ)る。薄い闇の中では、彼の声は飛び抜けて甘く聞こえる。おれの小さな強がりは、あっさりと崩れてしまう。
「……ばか。せっかく情けないとこをあんたに見せずに済むと思ったのに……」
おれの顎先に優しく触れてきた長い指先を、ぎゅっと握りしめて、コンラッドを見上げた。
「あんたが、う、浮気するなんてなにかの間違い、だよな?」
「……」
「コンラッド?」
「……ええ」
おれの問いかけに、僅かな間を開けて答えると、そっとコンラッドは笑って見せた。心配しないで、というように。けれど、その笑顔は綺麗なのに、どこか悲しそうで、胸がざわめいた。
その日から、一週間後の今、血盟城では貴族たちを招いての盛大な舞踏会を開いていた。おれは目の前に広がる眺めに既視感を覚えて、動悸が激しくなっていた。
そして、ついにあの悪夢がそこまで迫っていることを悟った。
貴族たちの優雅な舞いを、玉座から眺めていたおれの前に、とうとう例の童話の王子様とお姫様が現れたからだ。それは、紛れもなくアニシナさんの装置に出てきた可憐な美女と正装姿のコンラッドだった。
見なければいいのに、コンラッドの表情や仕草ばかり見てしまう。まばゆい白の正装姿のコンラッドは、それだけで品があり、凛々しい。そのうえ、優雅に女性をエスコートするその所作は王子様としか言い様がない。けれど、そんな彼が綺麗な女の人に、優しく微笑みかけるのを見ると、胸が痛む。最近では、彼が女の人に、社交辞令で愛想よくしているだけでも、いい気はしない……。コンラッドと恋人関係を一年も築いてきたのに、おれはどんどん嫉妬深くなっていた。
まして、今彼の前にいる人が、美人で可憐で……これからコンラッドとキスをすることをアニシナさんの装置に予期されている。
「そんなの嫉妬しないほうがどうかしてる」
胸の内の想いが、知らずに独り言となって出ていた。
2へと続く
★あとがき★
あぁ、いやなところで切ってすみません……。ここから、ラブラブコンユに巻き返す予定(ってこんなこと書いてネタばれにならないのかな?)なので、そっと見守っていただけたら嬉しいです。
初めて携帯から書いているので、なんかいろいろとおかしいところがあるかもしれませんが、ぬるく見守ってください^^;
台詞少なくて退屈だったかも…2は、台詞がもっと増えます。
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