2009.4.22設置
『今日からマ王』メインです。
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第九話 虚ろな瞳
※ユーリ視点です。
今日も、コンラッドの瞳には何も映らない。
薄いグレーと、セピア色の混ざった綺麗な瞳。ガラス球のように綺麗な瞳。
けれど、以前のようにその虹彩に銀の星を散らすことのない瞳。
虚ろな瞳。
俺を映してくれない瞳。
あれから、もう一週間も経過した。
けれど、コンラッドは意識を取り戻すことなく、ベッドに横たわったままだった。
治療を施すギーゼラに、俺は必死に彼の様子を尋ねる。もう、これも何度目かわからないくらいだったが。とにかく、今の彼がどうなっているのか、心配で不安で胸が軋む。
「ギーゼラ、コンラッドは!!コンラッドに何か異変はない?!大丈夫かな?!」
つっと眉をひそめて応えるギーゼラ。
「陛下、私の力では彼に何が起こっているのかは分かりかねます。申し訳ございません。それに、陛下も御身をご自愛下さいませ。陛下は、十分に睡眠をとっていらっしゃらないようですし。最近では、めっきり食事も召し上がっていません。それでは、貴方の身が持ちませんわ」
俺は、俯いて答える。
「ごめん、ギーゼラ。心配してくれてありがとう。・・・・・・・でも、コンラッドが今こんな状態で、自分だけいつもどおりに、休んだり、ご飯を食べるなんて・・・・・無理・・・・だよ。コンラッドのこんな状態を意識せずに、なかったことにして、普通に暮らすなんて・・・・到底・・・・・できないよ」
俺は、弱弱しい声で呟く。けれど、悲観的なその声は、広い部屋に響き渡る。この場にいる誰もが、俺の苦しみになんと声をかけていいのか考えあぐねている。重い沈黙が訪れる。
王として、こんなことではいけないと思う。国の有事に備えて、いつでも精神状態を安定させていたほうがいいに違いない。
一人の臣下にばかり気をとられて、国のことがおろそかになるのは、いけないことに違いない。
一人の臣下・・・・・・か。そんな分かりやすいカテゴリーに入れられるわけがないよ。俺の名付親でもある。いつも、俺のことを優しく見守ってくれた彼。それに、熱く俺のことを翻弄した彼。
大切なコンラッド。かけがえのない人。
その彼が、もう自分を見つめてくれない。残酷な現実。
こんな状況でも、気丈でいなくてはいけないのか?
「ごめん、コンラッドと二人きりにしてくれる?」
「ユーリ・・・・」
「陛下・・・・・」
ヴォルフラムもグウェンダルもギュンターも、ギーゼラも皆俺のことを心配して、後ろ髪を引かれる思いで部屋をあとにする。
重々しい音を立ててドアが閉まる。
皆、ごめん。心配させてばかりの、ふがいない王様で。
コンラッドも・・・・ごめん。何もしてやれなくてごめん。あんたのことを必ず助けてやるって誓ったのに・・・・もう一週間も経つのに・・・・・そうだよ、もう一週間も経ったんだ。
あんたが、恋しいよ。コンラッド。もう一度、その綺麗な瞳で俺を映してくれよ。
傍らに、横たわるコンラッドの瞳を見つめる。
虚ろな瞳の端にキスを落とす。
今日は南風の強い日。窓を開けてというように、かたかたと鳴らす風。
重苦しい空気を入れ替えるように、俺は窓を開ける。
春の強風が、柔らかな日差しとともに、部屋に押し寄せる。重厚なカーテンを翻しながら。
コンラッドの綺麗な栗毛が風にそよぐ。
「ほら、コンラッド。気持ちのいい風でしょ」
コンラッドの顔を優しく撫でる。少し、汗ばんでいるのか肌がしっとりしている。
「すこし、汗をかいてるみたいだね。俺が今拭いてあげるからね。さっぱりさせてあげるからな」
手桶の中にお湯がそそいである。その横にフェンネルの香油が用意してある。
俺は、湯の中にフェンネルの香油を少量垂らす。
部屋に、ほのかに甘いフローラルな香りが漂う。
「いい香りでしょ?コンラッド」
俺は、薄手のタオルを湯の中に浸す。
コンラッドの肌着のボタンを外していく。次第に顕わになるコンラッドの肌。色素の薄い肌。ところどころに、傷跡がついている。
俺を守るためにつけた傷もあるんだろうな・・・・・。本当に、コンラッドは俺のことを身を挺して守っててくれたんだな。切ないよ、コンラッド。
俺は、優しく傷跡をたどるように、彼の身体を拭いていく。
心なしか、コンラッドの肌が上気しているように見える。
「コンラッド?気持ち・・・・いいの?」
そっと、コンラッドの身体を撫でていく。彼のほんの些細な変化も目に付くようになってきた。
俺、今更だけど、コンラッドのことが好きだよ。好きでたまらないよ!
お願いだから、もう一度俺をその瞳の中に映して・・・・・。
祈るような気持ちで、コンラッドの唇に、自身の唇を重ね合わせた。
第九話 =完
※ユーリ視点です。
今日も、コンラッドの瞳には何も映らない。
薄いグレーと、セピア色の混ざった綺麗な瞳。ガラス球のように綺麗な瞳。
けれど、以前のようにその虹彩に銀の星を散らすことのない瞳。
虚ろな瞳。
俺を映してくれない瞳。
あれから、もう一週間も経過した。
けれど、コンラッドは意識を取り戻すことなく、ベッドに横たわったままだった。
治療を施すギーゼラに、俺は必死に彼の様子を尋ねる。もう、これも何度目かわからないくらいだったが。とにかく、今の彼がどうなっているのか、心配で不安で胸が軋む。
「ギーゼラ、コンラッドは!!コンラッドに何か異変はない?!大丈夫かな?!」
つっと眉をひそめて応えるギーゼラ。
「陛下、私の力では彼に何が起こっているのかは分かりかねます。申し訳ございません。それに、陛下も御身をご自愛下さいませ。陛下は、十分に睡眠をとっていらっしゃらないようですし。最近では、めっきり食事も召し上がっていません。それでは、貴方の身が持ちませんわ」
俺は、俯いて答える。
「ごめん、ギーゼラ。心配してくれてありがとう。・・・・・・・でも、コンラッドが今こんな状態で、自分だけいつもどおりに、休んだり、ご飯を食べるなんて・・・・・無理・・・・だよ。コンラッドのこんな状態を意識せずに、なかったことにして、普通に暮らすなんて・・・・到底・・・・・できないよ」
俺は、弱弱しい声で呟く。けれど、悲観的なその声は、広い部屋に響き渡る。この場にいる誰もが、俺の苦しみになんと声をかけていいのか考えあぐねている。重い沈黙が訪れる。
王として、こんなことではいけないと思う。国の有事に備えて、いつでも精神状態を安定させていたほうがいいに違いない。
一人の臣下にばかり気をとられて、国のことがおろそかになるのは、いけないことに違いない。
一人の臣下・・・・・・か。そんな分かりやすいカテゴリーに入れられるわけがないよ。俺の名付親でもある。いつも、俺のことを優しく見守ってくれた彼。それに、熱く俺のことを翻弄した彼。
大切なコンラッド。かけがえのない人。
その彼が、もう自分を見つめてくれない。残酷な現実。
こんな状況でも、気丈でいなくてはいけないのか?
「ごめん、コンラッドと二人きりにしてくれる?」
「ユーリ・・・・」
「陛下・・・・・」
ヴォルフラムもグウェンダルもギュンターも、ギーゼラも皆俺のことを心配して、後ろ髪を引かれる思いで部屋をあとにする。
重々しい音を立ててドアが閉まる。
皆、ごめん。心配させてばかりの、ふがいない王様で。
コンラッドも・・・・ごめん。何もしてやれなくてごめん。あんたのことを必ず助けてやるって誓ったのに・・・・もう一週間も経つのに・・・・・そうだよ、もう一週間も経ったんだ。
あんたが、恋しいよ。コンラッド。もう一度、その綺麗な瞳で俺を映してくれよ。
傍らに、横たわるコンラッドの瞳を見つめる。
虚ろな瞳の端にキスを落とす。
今日は南風の強い日。窓を開けてというように、かたかたと鳴らす風。
重苦しい空気を入れ替えるように、俺は窓を開ける。
春の強風が、柔らかな日差しとともに、部屋に押し寄せる。重厚なカーテンを翻しながら。
コンラッドの綺麗な栗毛が風にそよぐ。
「ほら、コンラッド。気持ちのいい風でしょ」
コンラッドの顔を優しく撫でる。少し、汗ばんでいるのか肌がしっとりしている。
「すこし、汗をかいてるみたいだね。俺が今拭いてあげるからね。さっぱりさせてあげるからな」
手桶の中にお湯がそそいである。その横にフェンネルの香油が用意してある。
俺は、湯の中にフェンネルの香油を少量垂らす。
部屋に、ほのかに甘いフローラルな香りが漂う。
「いい香りでしょ?コンラッド」
俺は、薄手のタオルを湯の中に浸す。
コンラッドの肌着のボタンを外していく。次第に顕わになるコンラッドの肌。色素の薄い肌。ところどころに、傷跡がついている。
俺を守るためにつけた傷もあるんだろうな・・・・・。本当に、コンラッドは俺のことを身を挺して守っててくれたんだな。切ないよ、コンラッド。
俺は、優しく傷跡をたどるように、彼の身体を拭いていく。
心なしか、コンラッドの肌が上気しているように見える。
「コンラッド?気持ち・・・・いいの?」
そっと、コンラッドの身体を撫でていく。彼のほんの些細な変化も目に付くようになってきた。
俺、今更だけど、コンラッドのことが好きだよ。好きでたまらないよ!
お願いだから、もう一度俺をその瞳の中に映して・・・・・。
祈るような気持ちで、コンラッドの唇に、自身の唇を重ね合わせた。
第九話 =完
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