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第一編 どうして、キスしてくれないんだよ。
※ユーリがコンラッドにキスを迫るお話です。
「こんばんわ、ユーリ。今夜もなかなか寝付けないのですか?」
夜中だっていうのに、コンラッドは一糸の乱れもない勇敢な軍服姿をしている。
どうして、そんなに隙がないんだよ。完璧なんだよ。
「どうしたんですか?ユーリ。何やら顔に面白くないと書いてありますよ。」
コンラッドの丹精な顔が心配そうに見つめてくる。さらさらと、綺麗な指で俺の髪をとかしながら。
また・・・だ。ざわざわと、心の波が揺れ惑う。
いつも、いつも、コンラッドは俺に優しく触れてくる。それは、それは、大切に。まるで母親が小さい子供をあやすように。
でも、いつしかそんな行為は、俺の中に深い暗闇を作り出した。
もっと、乱暴に扱われたい。もっと、コンラッドの中の強い思いをぶつけてほしい。
もう、ただ子供扱いされるのは嫌だ。
そう、もう・・・嫌なんだ。ただ、優しく触れられるだけなんて・・・俺耐えられそうにない。
「ユーリ?どうしたんですか?」
いつまでも、感傷に浸っている俺を慈しんだ瞳で見つめてくる。優しく俺の両肩を抱きながら。
「また・・・だ。コンラッドの・・ばか・・やろ。」
俺は、小刻みに震えるからだを必死にこらえながら声をだす。
「ユーリ?今日の貴方は、とても苦しそうで見ているに忍びないです。私にできることがあるなら何でも力になります。何を差し置いても貴方を最優先します。」
今の言葉で、俺の心に潜んでいたものがじりじりと姿を現し始めた。
「ねぇ、コンラッド?俺のこと・・・大切に大事にしてくれるのって、俺が子供みたいに可愛い・・ってだけ?それと、俺がマ王で守らないといけない存在だから・・?」
コンラッドを見上げる。
コンラッドが、見たこともないよな表情をして固まった。いつもの余裕たっぷりの顔は、そこにない。
「ユーリ。あまりからかわないで下さい。どうか、今日はもう遅いのでゆっくり休んでください。」
彼が、この部屋を出て行ってしまうのを察知した俺は、必死でコンラッドにしがみつく。
コンラッドが答えをはぐらかして、逃げないように。両腕で彼をぐっと握り締める。強く、コンラッドと密着する。
俺は、不意に出てきた涙に気づかずに、必死にコンラッドに訴える。
「もう、もう・・・逃げないでよ、コンラッド。はっきりさせてほしいんだよ。いつも、いつも俺に甘くささやいたり、優しく触れたりするくせに、どうしてキ、キスしてくれないんだよ。どうしてだよ。」
だめだ、もう・・止まらない。溢れる想いにまかせて言葉を叫ぶ。
「もう、ただ大事にされるだけなんて嫌だ。もう、子供扱いをしないでくれよ!俺のことをただの子供としてしか見てくれないんだったら、それはそれでいいよ。だったら、ちゃんとそういってくれよ。諦めがつくから。俺、辛いんだよ。中途半端に大事にされて・・・。もしかしたら、コンラッドが俺のことをその・・こ、恋人として好きなんじゃないかって期待しちゃうんだよ!そうじゃないんなら、辛すぎるんだよ。」
突如、コンラッドの腕がきつく俺の体に巻きついてきた。
「ユーリ!貴方のためを想ってしていたことがここまで貴方を苦しめているなんて知りませんでした。本当にごめんなさい。」
え?・・・今、ごめんなさいって言ったよな・・・。はは・・、やっぱりコンラッドは俺のことを恋人としては見てくれてなかったってことなんだ。
涙が止まらない。次から次へと溢れてくる。
刹那の瞬間、コンラッドの右手が俺のあごをくいと持ち上げる。左手は俺の腰をぐっときつく抱き寄せる。
「んっ。んっ。」
コンラッドの熱い唇が俺の唇に重なり合っている。俺の唇をついばむように何度も口付けをしてくる。
「ん・・はぁ・・こん・・ら・・っど・・」
あまりにも長くキスされて呼吸が苦しくなってくる。
しかし、それでも解放されずに、キスを続けられる。
「んんぅ?!」
コンラッドの舌が突然、俺の唇を割り込んで侵入してくる。
俺の歯列をなぞり、口腔内を蹂躙する。
初めて味わう、コンラッドの濃厚なキスに体の力が抜けそうになる。
がくんと膝の力が抜ける。
すると、コンラッドの左手が素早く俺の体を支えなおし、よりいっそうきつく抱きしめる。
「ユーリ、好きです。」
いつもの優しい瞳ではなく、熱いまなざしが俺を映す。
きつく抱きしめられすぎて、体が少し痛い。
「あなたのことを、ずっとこうしたかった。でも、貴方の迷惑にしかならないと思い、自分を抑え付けてきました。」
やおらに、コンラッドの顔が緩んで優しく微笑む。
「ふふ。でも、まさか、貴方から誘われるなんて思いませんでしたよ。そんな貴方ももうどうしようもないくらいに可愛かったです。」
彼は、いたずらを含んだ笑顔で言う。
「そんな可愛いあなたを見たら、つい歯止めが利かずに無茶をしてしまいました。すみません。」
「あ~、もう可愛いっていうなよ。俺男だし。・・でも、俺今すっごく嬉しいんだ。生まれて初めて好きな人と両思いになれて・・。なんか、今までの人生で一番幸せ・・かな、なんて。」
照れながら、一生懸命想ったことを口に出す。
「本当に、可愛いですね。ユーリ、愛しています。これからは、俺もストレートに愛情表現をしていきますから覚悟してくださいね。」
「な・・・。う、うん。あ、俺も言ってなかったから言うな。コンラッド、・・・・好き・・・大好きだよ。」
精一杯、この気持ちが伝わるように丁寧に言う。
「んんっ。」
またしても、コンラッドのキスが降る。甘く情熱的な。
ふっと、唇が離れる。
コンラッドの見たこともない魅惑的な表情が現れる。
「もっと、気持ちよくなりたいですか?」
低く、甘い声で囁かれる。
「なななな、まだ、まだ今日は無理無理。だめ~。」
俺は、ドキドキしながら必死に叫ぶ。
また、優しい顔に戻ってコンラッドは言う。
「はい。今日のところは、ゆっくり休んでくださいね。では、これから城内の警備に戻りますので。おやすみなさい、ユーリ。愛しています。」
彼はそっと、唇に触れるだけのキスをして微笑みかける。
「こんなに、遅くまで大変だな。俺ばっかり寝て、ほんとにごめんな。」
「いいえ、ユーリ。貴方を守るための仕事なのですから、少しも苦にはなりません。」
いたずらな表情を浮かべて、コンラッドは言う。
「それに、今度非番のときは陛下が俺をねぎらって下さいますから・・ね。」
「ね・・って!ちょ・・!コンラッド。それって~まさか?」
「さぁ、どうでしょう。では、失礼いたします。」
にこりと微笑んで、コンラッドが去って行く。あぁ~、なんか今コンラッドの頭に角が見えた気がしたんですけど。
でも、まぁ、いいか。今日は、とってもいい日だったしな。余韻に浸って、幸せな気持ちをかみ締めながら眠りについた。
完=
裏面あります。 ヒント右下
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