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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2009/07/12 (Sun)                  2万ヒットありがとうございます★★
 
ピーターパンなコンユ第二弾です。(一万ヒットでピーターパンなコンユ第一弾『気になる彼は海賊王』を載せてます。お礼イラストのカテゴリーの中にあります。よかったら、見てくださいです^^)今回は、色鉛筆でアナログ絵にしました。  



     ピーターパンなコンユSS『わからずやの海賊王』です。どうぞ★↓↓↓








 あいつは、言ったんだ。自分が、俺の母親代わりになってくれるって。俺が、寂しい時、いつでも甘えて下さいって。

 それなのに!あいつは最近冷たい。それどころかネバーランドにも、もうずっと立ち寄ってくれない。もうずっと、海賊の癖に甘いあの笑顔も、綺麗な優しいあの声にも触れていない。

 どうして、こんなにも側にいてくれないんだよ。もう一ヶ月も経つじゃないか。親って言うのは、いつだって側にいてくれるものだろ?こんなに、胸が痛くなるまで、寂しい思いにさせてもいいのか?


 
 とうとう、堪えきれずに俺はネバーランドを飛び出した。妖精のヴォルフラムに言うと煩いので、こっそりと抜け出した。皆が寝静まった夜中に。

 弓張り月が途切れそうなほどに煌く紫紺の空。優美な星が我先にと輝いて、エメラルドグリーンの海面にその姿を映し出す。けれど、せっかくの景色もどこからともなく現れた霧に、ふんわりと包まれてしまう。


 俺は、霧が掛かった海上を、あいつの船を目指して舞う。
 頬を撫でる夜風が切るように冷たい。けれど、そんなことどうでもいい。早く、あいつに遭いたい。
 一途に、彼の船を目指した。あの長身の姿を、あの甘い顔を想った。あの暖かい胸を想った。

 けれど、広い海の上、彼の船は中々見つからない。

 ようやく彼の船を見つけた時は、指先は寒さで凍え、夜もぼんやりと白みがかってきた。

 宙を舞いながら、窓から船室を一つ一つ覗き込む。
 そして、ついに彼を見つけた。薄闇の中でも、よく分かる端整な顔立ちの彼は、ベッドに身を沈めていた。

 俺は、夢中で窓を小突いた。
 彼は、海賊という職業柄か、俺の立てた小さな物音にすぐに反応して飛び起きた。

 すらりとした長身の、シルクの白ローブ姿の彼が窓に駆けつける。

 嬉しくて堪らなかった。ようやく、彼に遭えたんだ!

 彼は、素早く窓を開けると俺を胸に力いっぱい抱きしめた。彼から柔らかい石鹸の香りが漂う。彼の身体の暖かさになぜか涙が滲みそうになった。
「ユーリ!どうしたのですか?こんなところまで来て。ここは、ネバーランドからは大分離れた海域ですよ」

 酷く驚いた声で心配された後、ぎゅっと、さらにきつく抱きしめられた。
「それに、こんなに・・・身体を冷たくして・・・風邪でも引いたらどうするのですか・・・愛しいユーリ」

 なぜだろう。彼の甘い言葉に反発を覚えた。
 気がついたら、先程までの胸に鬱積された想いを、捲くし立てていた。

「コンラッドの馬鹿!どうして、こんなにも長い間俺のことを放っておくんだよ。俺に甘えていいって、親代わりになってくれるって言ったのに・・・!期待した俺が馬鹿なのかよ?!」

 彼の厚い胸板を叩く手を片手で捻りあげられた。ちりっとした痛みが手に走る。悔しくて思わず、彼を非難しようとした。けれども、彼の顔を見たらどうしていいのか分からずに、ただその瞳を見つめていた。

 月に照らされた彼の瞳は、怒りのような悲しみのような遣り切れない色合いを湛えていた。

「ユーリ、大人の世界には子供には分からない事情があるんです。俺も出来るなら貴方の親として、ずっと貴方を抱きしめていてあげたい。でも、それは出来ないんです。出来る限り、貴方の寂しさを拭い去ってあげるから・・・・だから、あまり我が侭を言わないで」

 自分を受け入れてくれるようで、拒絶されたようなその台詞に納得がいかなかった。それに、自分が子ども扱いされて、何も分からないのだと言われたことが悔しかった。

 掴まれている彼の手を力いっぱいに振り払うと、彼を睨み付けた。


「何だよ?あんたはちっとも俺の寂しさを分かってくれてないよ!それに、俺を子供だから何も知らないっていうのか?知ってるよ、あんたは海賊で忙しいんだろ?盗みを働かないと、優雅な暮らしができないんだろ?俺の側にいることなんかより、人のものを盗むことの方が大事なんだろ?大層な大人だなっ!」

 こんな酷いことを言っちゃだめって分かってるのに、もう何がなんだか分からずに次々と彼を酷い言葉で追い詰めた。

 俺の残酷な言葉の残響が、華美な装飾を施された船室に響く。乳白色に色を変えた空が、彼の表情をつぶさに捉えた。




 彼は優雅に微笑んでいた。


 信じ・・・られない。こんなときに笑えるなんて。そんな余裕を持てるなんて。紳士ぶるなよ、海賊のくせに!

「えぇ、俺は海賊ですから。それが仕事ですから」

 淡々と言ってのけるコンラッドが赦せなかった。怒りに任せて叫んだ。

「あんたに、母親の面影を見た俺が馬鹿だった!もう何もあんたに期待しない!もう二度とネバーランドに顔を出すなよ」


 俺は、奴を振り返ることなく一目散に窓から飛び出した。


 銀色の朝陽を全身に受けながら、空を舞う。
 悔しくて惨めで涙が溢れた。視界が滲む。まるで、世界が溶けて無くなる様な気がした。やっと見つけた暖かい愛情を俺は自らの手で壊してしまった。


 どうして、あんなことを言ってしまったんだろう。どうして、あんなに感情的になってしまったんだ?ふと、後悔の念が沸き起こる。その度に、その思いを振り払う。

 ただ振り出しに戻っただけ。彼がネバーランドに来る前の、平和な世界に戻るだけ。必死に自分に言い聞かす。


 けれど、涙は正直だった。





********
 ネバーランドに戻ってからの俺は、辛い気持ちをひたすらに隠して明るく振舞った。勘の鋭いヴォルフラムが、金粉を撒き散らしながらせわしく俺の周りを飛ぶ回数が増えたけれど。
 
 まったく・・・俺は、いつの間にかあいつに似てきたのか?前なら、辛い時は、辛いと顔に出して、全てを発散させていたのに。

 これが、大人・・・・ってやつなのか?



 翡翠色のラグーンで、妖精のヴォルフラムと水浴びをしていると人魚のギュンターが話しかけてきた。


「ユーリ殿・・・・そういえば最近コンラッド船長がめっきり来なくなりましたね?」
 
 彼の名前が、出てきてどきりとする。けれど同時に悲しくなる。
 けれども、まったく悲しい素振りを見せないように取り繕う。

「あぁ、そういえばそうだな。全然気づかなかったよ。でも、せいぜいするよ、野蛮な海賊が来なくなったと思うと」
 本当は、そんなこと少しも思っていないのに・・・。口からは次々と嘘が溢れて、自分の心を蝕む。

 ギュンターは、少し躊躇いがちに言葉を紡ぐ。
「そうですね・・・でも、知っていましたか?彼がなぜ海賊になったのか?」

 意外な展開に、ギュンターの言葉に身を乗り出す。ヴォルフラムも興味深そうに羽を振る。

「何?彼はなりたくて海賊になったんじゃないの?」

 銀の髪をさらさらと風になびかせるギュンター。白い指で、パステル色の魚を撫でながら、話す。
「いや、魚達の話によるとどうやら違うらしいのです。何でも、もともと彼の家は裕福な貴族だったらしいのですが、一家揃っての航海の途中に難波してしまい、両親は他界してしまったようなのです。そして、かろうじて生き残り、海を漂流する幼い彼に、一匹のワニが襲いかかり右手を食いちぎってしまったのです。そのワニは、何でも時計を呑みこんでいるらしく、チクタクと音をさせていたそうですが」
 

 一旦言葉を区切ると、彼は、藤色の瞳を曇らせる。ヴォルフラムも、羽を下げて心配そうに彼を見守る。
「そこから、彼の苦行が始まったのです。天涯孤独で、挙句の果てに手の無い彼は、まともな世界ではどこへいっても虐げられたのです。そこで、彼は自分を認めてくれない社会に嫌気が差して、自分の本当の実力を試そうと海賊になることを誓ったのです。自分を弾き出した社会に、自分の真の実力を見せ付けてやろうと、彼は必死に海賊をしたのです。けれど、彼は女子供に手を出したりせず、奪い取った財宝も、港で貧しい人々に配り歩いているらしいのです。己の欲のために海賊をしているというよりは、世間を見返すために海賊になった・・・というほうが正しいですね」


 俺は、なんて浅はかだったんだろう。
 彼が、自分の欲望のために盗みをしているのだと決め付けていた。海賊なんだから・・・・と、どこか偏見の目で彼を見ていた。コンラッド自身のことをちゃんと見てあげられなかった。

 それどころか、とんでもない暴言を彼に吐いた。

 盗みを働かないと優雅な暮らしが出来ないんだろって。俺の側にいるより人のものを盗むのに忙しいんだろ・・・って。


 どうしよう?!俺、最低だ。
 誰よりも自分のことを分かってくれようとしてた人を、信じられないくらい傷つけていたんだ!
「ギュンター、コンラッドのことを教えてくれてありがとう!」

 叫ぶなり、飛ぼうとした。
 けれど・・・・・。

 ?!

 飛べない?!


 かろうじて、10センチほど宙には浮くものの、それ以上は浮かび上がらない。何度試しても、同じだった。

「ユーリ!これは・・・?!」
 肩の上のヴォルフラムが、蒼ざめた。
 彼のその表情をみて、俺は何か取り返しのつかない事態に陥っている気がした。

 けれど、それよりもコンラッドのことが気になった。
 今すぐにでも、飛んで彼の元に駆けつけたいのに、それが出来ない焦燥感から、全力で駆け出していた。どこを目指すというわけもなく、ただひたすらに走った。



 紺青の湖を越えて、翠の森を抜けて、開けた草原に辿り付いた。疲れて、草原に仰向けに寝転がると、澄み切った空に七色のアーチが掛かっていた。

 こんなに透き通った綺麗な景色をみても、心はぐずついていた。


 あれ・・・俺、泣いてるのか?

 視界が滲んで、空が溶けていく。飛ぶことさえ出来なくなった俺。彼に遭いに行く手段がまったく無くなってしまった。彼と笑い遭える世界が消えていく。


 だって、彼のほうからは、きっともう二度と俺のところには来てくれないから。
 彼の心を踏みにじった俺になんて、遭いたくないに決まってる。おまけに、来るなって言っちゃったし。


 あぁ・・・だけど、コンラッドに今すぐ遭いたい。
 もう二度と遭えなくても構わないから、どうか一言だけ謝らせて。







「ユーリ、こんなところでお昼寝ですか?」

 あれ?優しい声がする。俺の待ち望んでいた甘い声。
 俺、あまりにもコンラッドのことばっかり考えすぎて、幻聴が聞こえるのかな?


 トレンドマークのつばの広い紅い帽子を被ってにっこりと、優しい微笑を浮かべた彼が俺を上から覗き込む。


 思いっきり、飛び起きた。そのまま、彼に飛び掛る。
 大きな手のひらが、俺の頭を撫でてくれた。
 うっとりと、彼からの優しさに酔いしれる。
 
 彼が、あまりにも優しくて・・・・嬉しくて・・・・・。
 彼に、謝ることを忘れてしまいそうだった。


「コンラッド!こないだは、酷いことばっかり言ってごめんなさい。俺、本当はあんな酷いこと言いたくないのに、コンラッドが俺のこと子供だとかそんなこというからついむきになっちゃって。それにそれに・・・・・・・・・・!!」

 言う前から、涙が零れ落ちる。彼の傷ついた心を思うと悲しくて、それが自分のせいだったと思うとやりきれなくて。
 何とか、立っていようと彼にぎゅっとしがみつく。彼も俺の背中にきつく腕を回してくれた。その時、彼の右手の義手の硬い金属が背中に触れて、いっそう胸に熱い物がこみ上げる。

「あんたが、海賊をしてた理由を知ったんだ!あんたがその手のせいで随分苦しんだこと、そのせいで、海賊という道を選んだこと。でも、欲のためじゃなくて、自分の苦しみを乗り越えるために、海賊をやってるってことを知ったんだよ!」

「ユーリっ」
 コンラッドの息を呑むような、緊迫した雰囲気を感じる。
「・・・・・・・貴方には、そんなこと知られたくなかった」

 硬い言葉で囁いたコンラッドを仰ぎ見る。
「どうしてっ?!わからない?ちゃんと教えて?」


 苦しそうに、瞳を細めて俺を見つめるコンラッド。
「貴方に、そんな俺の情けない所を知られたら、ただ貴方を可愛がることはできなくなってしまうかもしれないからです。貴方に・・・・甘えてしまうかもしれない」

 言い切った後のコンラッドは、ひどく幼く見えた。まるで、彼が家族と離別した頃の幼少の時代に戻ったようだった。

 初めて、感じた。彼を、守ってあげたいって。いつもと、まるで逆の感情に心の中に暖かいものが宿った。けれど、同時に胸の拍動が早くなる。きゅっと締め付けられるような苦しい想いが胸を満たす。

「うんと・・・甘えて・・・・コンラッド?俺たち、似たもの同士だったんだね」
 そっと彼の右腕を掴むと、彼の義手に接吻けをした。
 彼が、その手を失いどんな気持ちで過ごしてきたかを思うと切なくて、愛しくて堪らなかった。

 

 愛しい・・・・?ふと感じた自分の気持ちにとくんと胸が脈打つ。



「・・・っ?!」
 にわかに、彼にきつく左肩を掴まれる。彼を見上げると、今まで見たこともないくらいの熱い視線とぶつかった。

 トクン・・・・トクン・・・・トクン・・・
 頭の中で、心臓の音が大きく響く。


「ユーリ・・・・・貴方のことが・・・・好きです。俺と一緒に、七つの海を旅しませんか?」

 突然の彼の告白に、意味を理解するのに時間が掛かる。

「俺とずっと一緒にいてほしいんです。どんな世界の果てだって。こんな理不尽な大人の我が侭はいや・・・・ですか?」

 生まれて初めて恋をした少年のように、無垢な瞳になったコンラッドが尋ねる。


「ううん・・・そういう我が侭なら・・・・・いいよ」
 気がおかしくなってしまいそう、胸が高鳴りすぎて。
 この気持ちって何?!

「本当?ユーリ、嬉しいです。もう一つ我が侭聞いてもらってもいいですか?」

 こくんこくんと、首を縦に振る。
 そんな俺をみて、溶けそうに甘い笑顔で微笑むコンラッド。優雅に細められた瞳の中には、煌く銀の星が無数に散る。




「俺を貴方の恋人にして?もうただの親代わりなんて・・・・無理です」


「こ、恋人?!」 
 思わず、素っ頓狂な声が出てしまった。けれど、とてつもなく嬉しくて幸せな気持ちだった。


 だから、分かってしまった。


 俺、さっきからずっとコンラッドにどきどきしてたんだって。
 彼のことが好きでたまらないんだって。



 頬を真っ赤に染め上げた俺を、優しく見つめるコンラッド。

「うん、そうだよ、ユーリ。もし、俺の勝手な大人の我が侭を全部赦してくれるんだったら・・・・貴方も大人になって下さい」

 意味が分からずに、ただ呆然と彼を見つめる。

 彼は少し、切ない顔で俺を見つめる。
「ごめんなさい、つまり・・・・俺と恋人になったら、貴方は子供ではなくなってしまう。もうネバーランドの住人には戻れなくなってしまうということです」

 その事実に、すこし戸惑う。
 何も悩まずに、楽しく過ごせた子供時代に終わりを告げるということに。ネバーランドには住めなくなってしまうということに。


 けれど、もう前から答えは出ていた。


 コンラッドに遭ったときから運命は決まっていた。



 実際に、俺は最近めっきりコンラッドみたいな・・・大人の思考に近づいていた気がする。
 
 そして、今日、思うように空が飛べなかった。



 きっと・・・・もう、彼と恋人になる運命だったんだ。



 あの時、涙が滲んで世界が消えていくような錯覚に陥ったのは、もうすぐ俺がネバーランドから出て行くことを暗示していたんだ。


 強い眼差しで、しっかりと彼を見つめる。俺の確かな気持ちがまっすぐに彼に伝わるように。

「俺・・・コンラッドの・・・・恋人になる。一緒に世界の海を航海する!!・・・好きだよ」



「・・・・っ!」
 言い終えた刹那、彼の甘い唇にキスされる。
 柔らかくて、熱い唇が俺の唇にそっと優しく触れ合わされる。何かの儀式のような神聖な接吻け。
 躊躇いがちに、そっと唇が離される。相変わらず海賊に似つかわしくない甘い笑顔で微笑む彼。


「ごめんね、ユーリ。今のキスで、もう今までの貴方の居場所を奪ってしまった。でも・・・・これからは、ずっと俺の側にいて?いつでも抱きしめてあげるから。貴方は航海で見つけた何よりも大切なたからものだよ」


 俺は、甘くて蕩けてしまいそうな彼の台詞に、はにかむように微笑み返した。
 俺たちの頭上には、その明るい未来を約束するかのように煌く七色の虹がかかっていた。





 風の噂で、聞きました。
 ネバーランドで俺の親友だった村田が次の『ピーターパン』をしてるって。


 
 
 あとがき★★
2万ヒットありがとうございます。嬉しいです(^^)今回も1万ヒットに続いてのピーターパンなコンユでした。1万ヒットのときは、親子のような愛だったのですが、今回は激しい恋を目指して書きました。

 楽しんでいただけたら嬉しいです(^^)

 


 



 
 
 
 

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