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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2010/03/06 (Sat)                  10万ヒットお礼小話 猫でごめんな(1)

気がついたら、10万ヒットを超えていました^^
いつも足を運んでいただいてありがとうございます^^ コメントや、拍手もいつも感謝しています^^
 というわけで、10万ヒットお礼の小話を書きます。↓↓

かなり昔の某少年漫画パロです。ヒロインが猫になってしまうけど、主人公が猫アレルギーで・・・・というドタバタラブコメ。ちなみに、ヒロインは猫なので発情期があるという話を、そのままコンユでパロってみました(^^;









 

 猫でごめんな(1)


 
「あっ! ユーリっ、あぶな~い!!」
 
 ドアを開けたとたんに、おれは、怪しげな液体を掛けられてしまった。
 血は繋がらないけれど可愛い愛娘に。いや、事故なんだけど。

 けれど、問題はこの部屋だ。なぜなら、ここは血盟城の中でも、グレタくらいしか寄り付かない(もしくは、グウェンダルが強制連行されている)アニシナさんの実験室ということ。そして、おれに掛けられた薄紫色のカクテルみたいに綺麗な液体が、彼女のなんらかの試作品だということだ。

「ユーリ、大丈夫?」

 ぱたぱたと可愛らしいスリッパの音を響かせて、寝間着に身を包んだグレタが走り寄る。

 おれが、この部屋にあえて来たのは、グレタの躾のためだった。えらい学者さんによると、夜更かしをする子どもは、性的な早熟が著しいらしい。

 おれは、グレタに悪い虫が早くからつかないためにも、夜の9時過ぎ(Gショック情報)になってもアニシナさんと妖しげな実験をしている彼女を、寝室に連れていくつもりだった。
 その最中に、まさか妖しげな液体を掛けられてしまうことは計算外だった。
 
 ともあれ、グレタには罪はない。
 おれは、液体でぐっしょりと湿る前髪を、乱雑に手で分けると、グレタを心配させまいとにっこりと微笑んだ。

「きっと、大丈夫だよ、グレタ。それよりも、もうこんな時間だよ。早く寝室に行こう、ね?」

 それでも、不安げにおれを見上げてくるつぶらな瞳に、親ばかの血が騒ぐ。あぁ、なんて、可愛い子なんだろう。そんなに、お父さんのことが心配なんだね。

 そっと手を差し出すと、小さな手がぎゅっと握り返してくれた。眠たいのか、ものすごく暖かい手だ。

 すごく幸せな気持ちになって、彼女を見つめ返す。すると、お転婆そうな赤を帯びた茶色い瞳をぎゅっと細めて、嬉しそうに微笑んでくれた。

「うん! ユーリ、大好き。アニシナの作ってたのは、浴びたひとが、あいがん動物?化してしまうお薬らしいんだけど、きっと、大丈夫だよね?」

 全身が硬直した。今までの親子の交流で得られた幸せな気持ちが、吹っ飛んでいく。

 あいがん動物・・・・・・って、漢字で書くと少し如何わしい愛玩動物って奴ですか?! いわゆるペットですよね?! ええっ、おれがペット?!
 

 後ろを振り返ると、アニシナさんがたくさんの直視したくない(!)実験器具に囲まれながら、腰に手を当てて、可笑しな高笑いをしていた。
 すこぶる機嫌がよさそうだ。王を実験の被験者にして、すこぶる機嫌がいいとは、さすがの紅い悪魔だ。

「おはっ! おははははっ! 陛下には、しばらく『もにたぁ』になって戴けそうです」

 その奇妙な高笑いが脳裏にこびり付いて、結局おれは、その晩よく眠れなかった。

 


******

 大好きな音が近づいてくるのを感じて胸がわくわくして、眼を覚ました。

 けれど、まだそのひとの姿は見えなくて、そこに見えるのは、銀の朝陽がきらきらと差し込む見慣れた王室だった。

 ・・・・・・って、あれ? おかしいな。なんで、コンラッドの足音が姿が見える前から、こんなにはっきり聞こえるんだ?

 不審に思って、耳に手を当てようとしたときだった。心臓が止まるかと思った。ありえないものに、手が触れてしまったのだ。ふさふさとしていて、柔らかくて挙句の果てに、ぴ、ぴくぴく動いている!

 短い悲鳴を上げて、やたらと俊敏な動作でベッドを飛び降りると、豪奢な全身鏡に自身を映した。

「にゃんだこれ~~~!?」

 お約束といえばお約束だ。
 おれの黒い髪のなかには、黒くてふさふさな猫耳が生えていた。おまけにパジャマのズボンのウェストを少し下げて、勢いよく飛び出していたのは、長くて黒い猫しっぽだった。

 そこで、おれは昨夜のことを思い出した。グレタを呼びにアニシナの実験室に行ったら、おかしな液体を掛けられてしまったことを。それも、どうやらその液体を浴びると、愛玩動物と化すらしい・・・・・・。

「ああぁぁ!! せめて、ペットと化すならこんなコスプレっぽい格好じゃなくて、まるまるっと全身猫になったほうがどれだけましか~~!!」

「ユーリ!! 大丈夫ですか?!」

 おれの叫び声が聞こえたのだろう。ひどく取り乱した様子で、おれの護衛兼名付け親、コンラッドが王室に入ってきた。
 けれど、彼はすぐに拍子抜けしたように肩を落とした。

「ユーリ、秋葉原ですか?」

 相変わらずの甘い顔で、そう尋ねながらコンラッドはおれにゆっくりと近寄った。

「何だよ、秋葉原って。中途半端に地球に詳しいよな。これが、コスプレだって言いたいんだろ?! でも、残念ながら、信じたくないけど本物のしっぽと耳なんだよっ」

「フォンカーべルニコフ卿の被験者になったのですか?」
 
 薄茶の瞳を悪戯に細めるコンラッドは、相変わらず優男風だ。

 そうそう、事故でね。そう言い返したかったのに。

 コンラッドは、いつのまにか立ったままのおれのすぐ側にいた。少し屈んで、おれの顔を正面から心配そうに覗きこんできた。
 そのとき、ふいに、コンラッドから漂ういい香りに、頭の芯がぼうっと痺れた。

 お、おれって、匂いフェチだったのか?! あ、そりゃあさ、カッコいい顔だよなとはよく思ったけど、とうとう匂いまで?!
 
 それどころか、とんでもない願望が当たり前のように沸き起こった。

 コンラッドに触れたくて、甘えたくてたまらない、抱きつきたい。すりすりしたい。 

 ま、末期症状か?!
 どうしよう、それにしても、なんていい香りなんだろう。上顎がくすぐられるくらい、鼻腔いっぱいに広がる甘くてたまらない香りだ。どうしよう、心地がよくて、自然と目元が緩んでいく。

 おれは、気がついたら両手をコンラッドの首のうしろに回して、その首筋に顔を埋めてうっとりしていた。コンラッドがされるがままなのをいいことに、おれはそのままその香りをもっと嗅ぎたくて、背伸びをしてコンラッドの耳のうしろの柔らかい髪に鼻先を突っ込んだ。
 途端にぞくぞくとするものが、脊髄を電流のように駆け抜けた。

 あ・・・・・・、どうしよう、止まらない。
 
 おれは、膝の力がずるずると抜けていくのを感じた。咄嗟に、コンラッドの腕がおれの腰に回される。抱き合って密着したまま、おれは上背のあるコンラッドを熱っぽく見上げた。身体が熱くて、頭がぼうっとする。

「大丈夫ですか、ユーリ?」

 おれの様子がおかしいのを心底心配そうに、彼は優しく見つめてくれる。けれど、おれはそんな彼の優しさを裏切るように、相変わらず彼の甘い香りのことしか考えられない。
 ついでに、彼の甘くて穏やかな美声に、猫耳がふるふると震え、おれのうしろに今朝から生えているしっぽが、ぴんとまっすぐに起って、先だけがゆっくりと左右に振れてしまう。

 そのうえ、彼が話すときに唇から覗いた柔らかそうな緋色の舌に、視線が釘付けになっていた。おれは、たまらず本能のままに動き出していた。

「コンラッド・・・・・・、キスしていい?」

 彼の返事を待つまでもなく、おれはぐいっと背伸びをして、彼の首の後ろに回した手に力を込めた。

 もう少し・・・・・・。彼の形のいい薄い唇まであと少し。触れたい。もっと、もっと近くにコンラッドの甘い香りを感じたい。

 けれど、それが触れ合わされることはなかった。

「ハックション!!」

 コンラッドが、突然上半身を捻り大きなくしゃみをしたからだ。その拍子で、おれは地面に膝から崩れ落ちてしまった。とたんに、おれは我に返った。

 ひとたび冷静になると、顔から火が出そうになった。こんな爽やかな朝陽が差し込む部屋には、居られない。穴があったら、入りたい!! というか、豪華な刺繍たっぷりの布団に潜り込んでしまえ。

 お、おれは、何をしていた?! おまけに、もう少しでコンラッドに、無理やりキスまでするところだったじゃないか?!

「こ、コンラッド?! ごめん、おれ、かなりどうかしてたよ!! あ、そうだ!! きっと、きっとな、今のおれ、猫耳族だろ?! 猫の習性が出ちゃったんだと思うよ!! あぁ、もうそれしかないっ!! 頼む、コンラッド! さっきのはなかったことにしてっ!!」

 おれは、布団から顔だけ覗かせながら、必死にお願いした。

「ハックション!! わかりました、ユーリ、ックション!!」

「・・・・・・コンラッド?!」

 コンラッドの様子も少し変なことに気がついた。さっきからやたらとくしゃみばかりしてないか? それどころか、せっかくの銀の虹彩の散った瞳が充血している・・・・・・なんだっけ? こういう症状? 日本で春先によく目にするよな。

 思い巡らしていると、その答えが明瞭に頭に浮かんだ。

「アレルギーだ!! わかった、コンラッド! あんた、猫アレルギーなんだろ?! 大変だ! おれの側にいないほうがいいよ。症状がひどくなっちゃうよ。今日は、もうロードワークはいいから。いや、それどころか、おれの猫化が治るまで、護衛役はヨザックに任すからな。これは、王令だかんな」

「不甲斐ない護衛ですみません、ユーリ」

 男前な護衛は、鼻をぐずぐずさせながらも、まだこちらに心配そうな優しい眼差しを向けてくる。そんなコンラッドの優しさに、鼻の奥がツンとしたから、おれは彼を突き放した。

「あぁ、もう。謝らなくっていいから、早く部屋を出てっ。これも、王令だから」

 ひとり布団に包まりながら、おれはぼそっと呟いた。

「・・・・・・猫でごめんな」

 

next.gif


★あとがき★

まずは、猫耳になってしまうユーリでした。
猫の習性とかネットで調べたけど、いろいろ違っているかもしれません^^;

コンラッドがなんかへたれてる・・・・?

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