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猫でごめんな(3)
「はぁっ、熱いっ、おれ、どうしたんだ・・・・・・っ」
血盟城の王室に、事実上軟禁されていたおれは、自分の身体の変化に苦しんでいた。
一面の窓から見る空は、既に薄紫色に染まっていた。もうすぐ、夕食の時間だろう。それなのに、少しも食欲が湧かない。
いや、むしろ湧くのは、性欲ばかり・・・・・・。
健全な男子高校生なら、少しくらいむらむらすることだってある。それにしても、今のおれは異常としかいいようがない。学生服のズボンの下は、既に屹立していた。おまけに、全身が熱くてたまらない。人肌が恋しくてたまらない。
コンラッドに会いたいなぁ。あぁ、でも、猫アレルギーだもんなぁ。
意味もなく、布団の上で、ごろごろと転がっていた。まさに、にゃんこだ。
だけど、もう限界。
もう少しで、自分自身でその熱を処理しようとするところだった。
布団の上で、そこを擦りつけるようにもぞもぞと動きながら、ベルトを外しかけたとき、ノックと共に扉が開かれた。
「んあっ、よ、ヨザック!!」
「あらあらっ、坊ちゃん。気まずいときに来ちゃいましたかぁ。気にしないで下さい、ほら、夕食のデリバリーですよん」
ぱっと、ズボンのベルトから手を離すおれを宥(たしな)めると、ヨザックは料理皿を両手に持ちながら、肩を竦めて見せた。
空色の瞳を悪戯にウィンクさせて、ヨザックはベッドサイドの机に、食事を並べていく。
おれは、ベッドに転がりながら、じっとりとヨザックを眺めていた。いつもなら、料理の香ばしいかおりに囚われるのに、今は、食指が働かない。
それどころか、久しぶりに人と接触できたことが嬉しくて、猫耳がぴくぴくっと震える。しっぽがつんと上を向く。
「なぁ、ヨザック、こっちで一緒に寝よう?」
自分でも、信じられないくらい甘えた声が出た。とにかく寂しくて、人肌恋しくて・・・・・・触れられたい。
本当は、コンラッドに触れられたい・・・・・・んだけど。
「にゃんこ坊ちゃん? えーと?」
ヨザックは、瞳を真ん丸くして、頭をぼりぼりと掻く。手持ち無沙汰で佇む彼の側に、おれはそっとにじり寄って行く。そして、剥き出しの筋肉質な腕に、しなやかに縋りつく。
裏へつづきます。ヒント右下 英語
ここからは、十八歳以上推奨です。
「なぁ、ヨザック? 何だか熱くって、苦しいんだ。どうしていいか、本当に分からなくて」
上目遣いに、ヨザックを見上げてしまう。瞳が潤んで、充血しているのか、彼の輪郭がぼやける。自分が何をしているのか、次第に曖昧になってくる。
ただ、熱に浮かされたように、頭の中がぼうっとする。
ずくん、と身体の中心の熱が跳ねた。ずっと、欲望に忠実なまま、硬く熱を持ったそこが、限界とばかりに疼きだす。
あぁ、おれ、何してるんだろう? これじゃ、変態みたいじゃないか。
渋谷有利の部分が、警鐘を鳴らすのに、猫の部分のおれが、尽(ことごと)く無視をする。
よりによって、硬く屹立させたそこをヨザックの腕に擦り付けていた。
「ちょ、坊ちゃん?!」
「ん・・・・・っ、ごめんなさい、あぁ、ヨザック。おねがい、ゆるして? ここ、擦ったら、だめ?・・・っん、きもちいい・・・・・」
先ほど、ズボンのベルトを緩めていたせいで、おれのズボンは鼠径部(そけいぶ)まで摺り落ちて、眞魔国製の紐パンがちらりと覗いていた。薄い布地ごしに、彼の腕に陰部を擦り付けてしまう。
すごく、してはいけないことをしている自覚はあるのに、気がふれそうな欲望に押しつぶされて、腰が動いてしまう。黒い猫耳がふるふると後ろに伏せられていく。はしたなく、口元から唾液が伝い始めた。
「ごめん・・・・っ、でも、ヨザックの腕、筋肉質で、硬くて・・・・・ぁ、ぁ、気持ちいい、んんっ・・・・・止められ、ないよ、ごめんなさい・・・・・っ」
「う~ん、参りましたねぇ。猫坊ちゃんは、発情期かもしれないですねぇ・・・・・・。これは、グリエの理性を保つのが難しいわぁ」
ヨザックは、口元に手を当てて、明後日の方向をみた。
「・・・ん、っは・・、はつ・・・じょう、き?・・・・・っ」
そうか、道理で身体が疼いてたまらないわけだ、と頭の片隅で渋谷有利は納得するも、猫の性欲は収まらない。動悸は激しく、全身が火照る。息があがっていく。硬く熱いそれが、解放を求めて頼りなくわなないた。
淫らに身体を摺り寄せながら、霞む視界にヨザックを捉えた。
「・・・・・・っ、なぁ、ヨザックは、おれのを触るのはいや?」
何を言ってるんだろう、おれ。
しかも、なんて鼻にかかった甘えた声を出してるんだろう。どこか意識の遠くでそんな声がする。それなのに。頭の中は、いやらしいことでいっぱいで、気が狂いそうだった。
「・・・・・・ねぇ、おねがい。ここに、下着の中に手を差し込んで・・・・・・、直接、触って?」
おれは、腰元に纏わりつく邪魔な制服のズボンを、性急に摺り下げる。小さな紐パンツでは、大きくなった自身を全て収めることができなくて、先端が震えるように突き出ていた。
逞しい腕に縋り付いて、ねっとりと、熱っぽくヨザックを見上げた。目尻から、暖かい雫が伝った。
「ごめんなさい、坊ちゃん!! グリエの分身が限界です~~!!」
ヨザックの大きな体躯が、勢いよくおれに圧し掛かってきた。視界が反転して、背中にベッドの柔らかいマットレスの感触がした。
ば、ばんっ!!
そのとき、荒々しく扉が開かれる音が聞こえた。
硬い靴音が、ずんずんと近づいてくる。けれど、おれは、その靴音になぜか胸がわくわくとして喜んでいた。
「ぐはっ!!」
おれの上に圧し掛かっていたヨザックが、突然短い嗚咽をあげてベッドの横へ吹っ飛んでいった。
「・・・・・・痛ぇーー!! 隊長~? そりゃ、ないすよぉ。グーで横殴りなんて、グリエの顔にしばらく痣が残っちゃうじゃない?!」
ヨザックが、左頬を擦りながらよろよろと、ベッドサイドに立ち上がる。その様子をぼんやりと見つめていると、身体の上に、優しく布団が掛けられた。
「大丈夫ですか? ユーリ?」
甘い声がして、全身がふるふると震えた。頭上から見下ろす優しい顔を見た瞬間に、猫耳が盛大にぴくんぴくんと動いた。
「おかえりなさい、御主人さま!」
「ゆ、ユーリ?!」
ベッドサイドからおれを覗きこむコンラッドの首筋に、腕を巻きつけて、ぐいぐいと顔を擦りつけた。
何だろう。コンラッドを見た瞬間に、もう彼はおれのご主人以外の何者でもないと思った。
「おやおや、隊長はどうやらにゃんこ坊ちゃんの飼い主に認定されたようですよ? うふふ。陛下は今、発情期みたいですので、辛抱してくださいね、飼い主さん」
「発情期?」
「そう、ユーリ陛下は、とんでもなくエロくなってますけど、手を出しちゃだめよん。じゃ、グリエは失礼するわね。少し、名残惜しいんだけどぉ」
「ヨザ!」
「うそ、うそっ! もう、隊長、こわ~い!」
コンラッドの甘い香りのする首筋に、抱きつきながら、何気なく二人の会話を聞いていた。けれど、正直、会話の内容よりも、コンラッドの虜になってしまって、抱きついたまま離れたくなくなっていた。
背後で、ばたん! と軽快に扉の閉まる音が聞こえた。
おれは、たまらずにコンラッドの顔を見た。
「寂しかったよ、ご主人さま。ずっと、コンラッドに甘えたかったんだ」
「そうだったの? ユーリ。寂しい思いをさせてごめんね」
コンラッドの節くれだった長い指がおれの猫耳の側をそっと撫でて、顎先に下りてくる。そのまま、擽(くすぐ)るように喉元に優しく触れられる。たまらずに、がくんと身体の力が抜けそうになる。
咄嗟に、コンラッドの首に回した腕に力をこめて縋りつく。
「はっ・・・ふぁ・・・・でも、ご主人さまが猫アレルギーだから、おれ、我慢してたんだ」
「ユーリ・・・・っくしょん」
「コンラッド?! やっぱり、おれの側にいるとアレルギーが辛い?」
おれの正直な猫耳としっぽが垂れ下がる。
けれど、コンラッドはすごく甘く瞳を細めて微笑んでくる。それだけで、現金なことに、黒いしっぽがつんと上を向いてしまう。
「大丈夫ですよ、抗アレルギー薬を注射して、錠剤まで服用してきましたから」
「そんな薬、眞魔国にあったか?」
「ちょっと、地球に行ってきました」
おれは、さらっととんでもないことを言うコンラッドに愕然とした。けれど、その数秒後には、別の期待に胸が騒ぎ出す。
もうすでに、身体が熱すぎて、いやらしい気持ちが抑えられなくなっていたから。
「じゃあ、コンラッドにいっぱい触ってもいいのか?」
段々、頭が重くなってくる。鈍くだるい欲望に、正直になっていく。
コンラッドは、薄茶の瞳の中に綺麗な銀の星を散らせて、少し小首をかしげて甘く微笑んでくる。柔らかそうなダークブラウンの髪がさらっと揺れる。
「いいですよ」
見た目よりも逞しい腕の中に、きつく抱き寄せられた。ぎしっと、ベッドの軋む心地よい音がした。コンラッドの全身から、甘い香りがして眩暈がした。
視界がうっとりと霞んでいく。けれど、ただ抱きしめられるだけでは、もう身体がもたなくなっていた。
「抱きしめるだけじゃ、だめ、なんだ。その・・・・・・コンラッドは、おれとえっちなことをするのはいや?」
じっとりと見上げた先のコンラッドは、少し視線を泳がせてから、まっすぐにおれを見返した。
「御免なさい、ユーリ」
硬い声でそう告げられて、何よりも正直な猫耳としっぽは再び垂れ下がる。
「おれのこと、嫌い・・・・・なのか?」
悲しくて、ぎゅっとコンラッドに抱きつくと、そっと両肩を掴まれて、顔を覗きこまれた。
「そんなこと、断じてありません――! あなたがこんな状態のときに、付け込むようなことができないだけです」
まっすぐで、真摯な瞳に射抜かれて、今までと違う部分の胸が高鳴った。おそらく、渋谷有利の部分のどこかが、反応した。
けれど、猫の発情期がこんなにいやらしくなるものだとは思わなかった。かすかに残る渋谷有利が、そんなことをするなと叫んでいる気がした。
けれど、もうとっくに理性を失っていた。熱くて、苦しくて、触れて欲しい。そんな願望ばかりが、途切れることなく浮かんでくる。
コンラッドの甘い香りに抗えずに、本能に正直に動き始めた。
気がつくと、おれはコンラッドの手を自身の黒い下着の中に導いていた。
「ごめんなさい、もう・・・・・・、苦しくて、我慢できないよ」
「ユーリ?!」
「はっ・・・・んんっ、コンラッドの手、冷たくて・・・・・気持ち、いい・・・・んあっ」
はしたないと思いながらも、どうしても止められなかった。コンラッドの手を掴んだまま、その手を自慰行為の道具のように、自身のものに擦りつけていた。
もう、気持ちが良すぎて、何も考えられなかった。浅い呼吸を繰り返して、信じられないくらい甘い声を出していた。口端からは、だらしなく唾液さえ垂らしていた。
それどころか、屹立した肉茎の先からは、淫らな雫がこぼれ落ち、コンラッドの手を汚していた。
がくん、と身体の力が抜けて後ろに倒れこみそうになった。
「コンラッド・・・・・・、いっぱい、えっちなこと・・・・・して?」
「ユーリ――!」
コンラッドの声が聞こえた。そして、唐突におれの腰に、空いたほうの手を回された。
そのまま、きつく身体を抱き寄せられた。甘い香りと安心感に、気分がいっそう高揚した。
「?!・・・・・っ、んむっ、んぅ・・・っ、はぁ・・・んんー!!」
おれの意思で動かしていただけのコンラッドの手が、彼の意思でおれの肉茎を扱き始めた。その上、しっとりと熱い彼の唇がおれの唇を塞いだ。
彼の大きな掌が、敏感なそこを擦り上げるたびに、その繊細な手付きに叫びそうになる。
けれど、彼の薄い唇が性急にキスをして、声さえ塞ぐ。
呼吸の継ぎ目に、コンラッドの甘い舌が入り込んできて、優しく口内を嬲られる。そうかと思えば、強引に、舌を絡み合わされる。
鼓膜に響く、淫らな音の連続。浅い互いの呼吸に、ぐちゅぐちゅといういやらしい粘膜の摩擦音。
繰り返し途切れることのない愛撫。
意識が朦朧として、ただ、ただ、気持ちが良い。
コンラッドの手が、おれの性感帯を探るように、甘く激しく摩擦を繰り返す。
その動作によって、いつしか下着の両側の紐がはらはらと解ける。
おれは、上半身は黒の学生服に身を纏ったまま、下半身をコンラッドに嬲られて、淫らに喘ぎ続けた。
腰が、勝手にコンラッドの長い指を追いかけるように、卑猥に動いてしまう。腰が痺れるような甘い疼きは、切なく張り詰められてきた。
「ユーリ、――き、だよ・・・・・・っ」
「んんっ、コン、ラッド・・・・っ」
唐突に、低くて甘い声が鼓膜をふるわした。詳しく言葉を聞き取れなかったけれど、きゅんと、猫耳が伏せられる。
ぞくりとするその優しい声に、とうとう腰の奥の疼きがせり上がり、白濁色の液体となり果てた。
コンラッドは、伏せ目がちに事後処理を素早く済ませてくれた。とても優しく衣服を着せてくれて、布団まで掛けてくれた。けれど、コンラッドは、なかなか眼を合わせてくれない。会話もない。おれだって、かなり気まずい。
けれど、そのことを深く考えるだけ身体が回復していなかった。激しい性欲が収まった今も、体内には強い熱が籠もっていた。
しばらく、ぐったりとベッドに沈んでいると、耳と尻尾に違和感を感じた。蒸気を当てられているように、湿っぽい熱を感じた。咄嗟に、猫耳のあるべきところに手を持っていくとドライアイスが溶けたときのような煙の残留に触れた。
けれど、既にそこには猫耳がなくなっていた。起き上がって尻尾があるべき場所を確認してみると、やはり同じ結果だった。
「あっ、耳がない!! コンラッド、猫耳がなくなった!! 尻尾もない!!」
あまりの驚きに、ベッドから身を乗り出して、ついコンラッドに声を掛けてしまった。お互い逸らしがちだった視線が、ばっちりと出会ってしまう。
いつもは、涼しげな彼の瞳が困惑に揺れていた。それでも、カッコいい顔だなと思うけれど。
「あ・・・・・、えと、本当にごめん、コンラッド!!」
おれは、居たたまれずに、ベッドサイドで紅茶を淹れているコンラッドに謝った。恥ずかしくて、どんどん顔が赤くなっていく。
「お、おれ、変だっただろ? 自分でも、わかんないけど、猫の発情期のせいだと思うんだ。とにかく、エロくなって、たまらなかった。コンラッドに、えっちなことさせてごめんな」
もう、とてもではないが、顔が上げられない。自分が彼にねだった内容といい、彼が飼い主に思えたこととか、もう、恥ずかしくて耐えられない。
そして、実際にキスしたり、あんなことをしてしまって――。どんな顔をしてコンラッドを見ればいいんだよ。
「ユーリ」
いつもに増して優しい声で名前を呼ばれたので、反射的に顔を上げてしまった。絶対に、顔を合わせられないと思った直後だったのに。
「あなたは、何も気にすることはありません。アニシナの薬で特殊な状態でしたから。むしろ、俺のほうがあなたに謝らなくては」
謝らなくては、という台詞の割りに、コンラッドの瞳は強い意思を宿すように情熱的だった。何かを思いつめるような、真剣な顔に、胸が早鐘を撞(つ)くように高鳴る。色素の薄い茶色の瞳の中で、銀の虹彩が鮮やかに煌いていた。
コンラッドは、そっとティーポットをベッドサイドのテーブルに置いた。
流れるように優雅な所作で、彼はおれの隣に腰を下ろす。ふと、紅茶の爽やかな香りが漂った。ダークブラウンの髪がさらっと揺れる。
そっと、おれの両肩に彼の手が添えられる。こんな至近距離で顔を見つめ合わせるのが、気恥ずかしくて、おれはまた下を向いた。
「あなたが、普通の状態ではないときに、付け込むようなことをしてすみませんでした。けれど、こんなときに信じてもらえるかわかりませんが、俺はあなたのことが―― 好きです」
「こ、コンラッド?!」
おれは、勢いよく顔をあげると、口をぱくぱくさせて、みっともなく取り乱す。そんなおれの様子を見て、隣のコンラッドは苦笑する。
「驚かせてしまいましたか、すみません。俺も、少しどうかしているようです。折角の夕食が冷めてしまったようなので、何か新しい物を作らせて来ますね」
そっとベッドから立ち上がりかけたコンラッドの腕を、おれは思わず掴んでいた。
「あ、え、えとごめんっ。何となく、このままにしてちゃいけない気がして・・・・・・」
「ユーリ?」
自分でも、何がしたいのかはっきりしなかった。けれど、今コンラッドを逃がしたら、ずっと何もかもが霧に包まれてしまうような気がした。
変わり始めている二人の関係の切れ端を、引っ付かんで手繰り寄せたい―― そんな衝動に駆られた。
そんなことを思うのは――。
「だって、おれも、好きなのかも・・・・・・あんたのこと」
ぽつん、と呟いてしまうと、堰を切ったようにその想いが溢れてきた。コンラッドを強く見上げた。
「だって、だって、猫になってる間中、コンラッドが恋しくて、寂しくて・・・・・・。コンラッドをみたら、居てもたってもいられなくて、本気であんたをご主人様だと思ったよ。抱きつきたくてたまらなかったし。動物って、本能に正直だろ? おれ、相当、コンラッドに惚れてるみたいだ」
「でも、ユーリは、アニシナの薬で普通ではなかったから。ヨザックにも、触れたくなったのでしょう?」
コンラッドは、名付け親の顔に戻って、優しくおれを諭す。
「それは・・・・・・!! そうなったのは、側にあんたがいなかったからだと思うんだ。ヨザックには、ただの性欲しか感じなかったっていうか・・・・・・い、いや、それもどうかと思うけど。でもっ、あんたは、そんなにおれを疑いたいのか?」
おれが、直情型な性格だからかもしれない。ひとたびコンラッドのことが好きだと気づいてしまうと、それを否定されるのが、凄くじれったくてやり切れなかった。
突然、きつくコンラッドに抱きしめられた。
「疑っているのではありません。あなたのことがとても、大切だからです」
耳元で、甘い声で囁かれた。もうとっくに猫ではなくなっているというのに、身体の芯が痺れて、力が抜けそうだった。
「アニシナの薬のために、ユーリは俺に一時、惚れているだけかもしれない。元の状態に戻ったときに、あなたに後悔してほしくないと思って」
「コンラッドって、たまに鈍いよ」
おれは、コンラッドに抱きつきながら、彼の肩に頭を押し付けた。
「おれ、もう今は猫耳じゃないんだよ? とっくに、薬の効果は抜けてる。それなのに・・・・・・、おれ、もう一度コンラッドにキスしてほしいなって思ってる。それじゃ、だめ? それじゃ、『すき』の証明にはならない?」
「ユーリ、そんなに可愛らしいことを言わないで。調子に乗ってしまいそうになる」
「・・・・・・いいよ、おれ、コンラッドになら、調子に乗ってほしい。コンラッドになら、何をされても、いい」
恥ずかしくて、顔が熱い。照れくさくて、ずっとコンラッドの肩に頭を押し付けたまま、俯いていた。
「それでは、お言葉に甘えて―― おれの恋人になってください、ユーリ」
「コンラッド!」
相変わらず、穏やかで甘い声が頭の上から降ってきた。条件反射で、顔を上げると優しく微笑まれた。色素の薄い髪に瞳、唇を花のように綻ばせて微笑んでくれた。そのパステル色の微笑みに、目が離せなかった。
そっと、気持ちを重ね合わせるように、自然に唇を重ねた。
ゆっくりと唇を離すと、コンラッドは悪戯に微笑んだ。
「でも、ユーリ。調子に乗るのは、ユーリがもう少し大人になってからかな?」
「こ、子ども扱いしてんじゃねぇよっ」
「いいえ、あなたがとても大切、という意味ですよ」
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さてさて、その後のふたりですが、紅い悪魔に追い掛け回されるはめになりました。
そうですよね、彼女の薬の効果は1週間は持続する筈なのに、たったの一日でユーリの猫耳は消えてしまったのですから。当然、研究熱心な彼女は、二人に詰め寄ります。
「あなたがたお二人が、何をしたのかを今後の実験のためにも、厳密に、細部にわたって、懇切丁寧に、お聞かせ下さい! 何なら実演してお見せ下さい!!」
とね。
そんな三人を、柱の影からヨザックだけが、にんまりと笑って見守っていたのでした。
おしまい。
★あとがき★
何とか、10万ヒットSSを書きました^^ 応援ありがとうございました^^
もうすこし、猫耳ユーリを襲うシーンは、エロいほうがいいかと思ったけど、やはり、気持ちが繋がる前なので、これが 精一杯でした。
ユーリが、猫で発情期で別人すぎてすみませんm( )m
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