2009.4.22設置
『今日からマ王』メインです。
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第三話 Eternal Ring
※二人が、マリッジリングを作るときに、過去の想い出を回想するお話です。
アニメ26話参照です。
俺は、晴れて血盟城で公認のコンラッドのフィアンセになった。コンラッドも、また然り。
俺達は、公認の関係になったので、色々と人目を気にすることも少なくなった。
なんと、今日は二人で堂々と、マリッジリングの製作依頼に出かける。今までのように、城下街の視察とか、いちいち言い訳をすることなく、堂々と『結婚指輪の依頼に行って来る』と言える。
その僅かな変化が、俺の胸をふわりと、幸せな気持ちにしてくれる。
二人で、ノーカンティに騎乗して、出かける。ユーリがコンラッドの背中に安心しきったように身を委ねる。春風のように柔らかな笑顔で、微笑みあう二人。その後姿を、侍女達がうっとりとした表情で見つめる。
俺達は、童話に出てくるような可愛らしい民家が立ち並ぶ入り組んだ狭い路地に入り込む。優雅にノーカンティに揺すられながら、その中を突き進む。
突如、視界が開けて、河のほとりの宝飾店が軒を連ねる宝飾街に辿り着く。柔らかな河のせせらぎがそっと鼓膜をふるわす。ツバメ達が、優雅に宙を舞う姿が空に映える。
各々の店先のショーウィンドウには、色とりどりの輝く宝石が飾り立ててある。
その中にある、ひときわ通行の便がよく、見晴らしのいい一等地に建てられた、雅やかな宝飾店。その扉を、開けるコンラッド。
「こちらです、ユーリ」
幸せそうに微笑むコンラッド。
そんなコンラッドにつられて、俺も思わず頬が緩む。至福のとき。
「うん!」
勢いよく店に飛び込む俺。
中から、店主がかしこまって姿を現す。
「これはこれは、魔王陛下と婚約者殿。このたびは、わざわざご足労頂き、大変、恐縮に存知ます。本来なら私が城に出向くべきでしたのに」
「あ~、そんなに硬くならなくていいから!!普通にしててよ、ね?俺が、我侭言って、ここに直接行きたいって、王佐に頼んだんだから」
緊張した面持ちの店主を、和らげようと、俺は声をかける。
*****
一週間前のことだった。俺達は、夕日が映える春の丘で、木に背をもたせかけながら、指輪のことを相談していた。
「ユーリ、今日はマリッジリングについて相談したいのですが」
ふわりと、優しく俺を見つめるコンラッド。
マリッジという単語を聞いて、俺は改めてもうすぐ結婚するんだということを実感する。
「結婚指輪には、お互いの想い出の日にちや、物、などを刻み付けるのですよ」
幸せそうに、俺に微笑みかけるコンラッド。
「今日は、二人の想い出を話して、指輪にどんな文字を刻むか、一緒に考えませんか?」
コンラッドからの提案に、俺は顔を綻ばせる。
「うん、なんかいいな、そういうの。早速考えようよ!!」
眼を緩やかに細めて俺を見つめるコンラッド。
「えぇ。では私から、貴方との忘れられない想い出をお話しますね」
懐かしそうに、遠くをみつめる優しいコンラッドの瞳。アッシュグレーを帯びたダークブラウンの綺麗な瞳。
「ユーリ、知っていましたか?私は貴方の魂を地球に運んだことがあるのですよ」
突然の、コンラッドの告白に驚く俺。
「えぇっ?初耳だよ。詳しく聞かせて」
俺は、好奇心に身を乗り出す。
夕暮れの甘い風にさらさらと髪をたなびかせて、俺を愛おしく見つめるコンラッド。
「えぇ、お話します。あれは、ジュリアが亡くなってすぐのことでした。ウルリーケから、突然にジュリアの魂を地球に届けるようにとの託けを受けたのです」
彼は、少しばつが悪そうに、俺に微笑む。
「当時の俺は、今とはかなり違う性格でした。とても、斜に構えていたというか・・・・何かにつけ批判的だったというか・・・」
俺は、眼を見開いてコンラッドを見つめる。
「えぇ?!コンラッドが?なんか全然想像がつかないな」
意味深な笑顔で俺を見つめるコンラッド。優しく俺の髪を撫でてくる。
「ふふ、そうですか。それは、貴方のおかげなんですけどね」
一呼吸置いて、話を続けるコンラッド。
「とにもかくにも、俺は当時無性に腹立たしかったのです。ジュリアが、亡くなったのは運命なのだと、当然のように言われたこと。それも、眞王のお告げだと、言われたこと。偉大な眞王を前にすると、一人の人の命は、虫けらのように扱われてしまう。そんな、むなしさと、それでも、その運命を自然の摂理として受け入れたジュリアがはがゆくて・・・・」
切なそうに、眉をひそめるコンラッド。
「ジュリアの魂だけを預かって、私は地球に送られましたが、私は、自暴自棄になっていました。まだ、現実が受け入れられず、現実から眼を背けていたのです。過ぎてしまった、ジュリアを失くした過去だけに引きずられ、前を見ていなかった。恥ずかしながら、もっと大切な存在にそのときは気づけなかったのです。」
再び、決まりが悪そうに俺を見つめるコンラッド。彼の髪の毛が、夕日に染められて黄金色の髪の毛になる。
「私は、貴方の父上に、説教をされたのです」
意外な展開に驚き、声をあげる俺。
「えぇ?!親父が?」
困惑した顔で、俺を見つめるコンラッド。
「えぇ、そうです。私は、本当に浅はかで未熟な半人前だったのですから、叱られて当然ですよ。そのとき、俺は貴方の父上に対して、いや、貴方に対してもとても失礼な暴言を吐いたのですから」
「コンラッド・・・?」
俺は、その会話の内容を聞いて、少し不安げにコンラッドを仰ぎ見る。
そんな俺を安心させるように、ぎゅっと胸の中に俺を抱き寄せるコンラッド。彼の暖かい胸の鼓動が聞こえる。
「本当に、なんといって謝ったらいいか。いくら謝っても謝り足りないくらいですが。俺は、貴方の魂を父上に預けたら、貴方が十五歳になるまで、一切お互い干渉しないこと、なんて冷淡なことを言ったのです。本当に、愚かしくて言葉も出ません」
俺の身体を軋むほど強く抱きしめて、話を続けるコンラッド。
「けれど、そのとき、貴方の父上が、俺をきつく叱ってくれたのです。自分の大事な息子を、そんな冷たいことを言う奴に預けられるか、と。そして、今後もし貴方のことで、そのような投げやりなことを言ったり、貴方につまらない顔をしていたら、こちらの世界に貴方を渡しはしないと宣告されたのです」
抱きしめていた腕をほどいて、俺の両肩をゆるく掴むと、俺に甘く微笑むコンラッド。
「その戒めの言葉で、やっと俺は過去ではなく、今からつながる未来へと、眼を向けることができたのです。貴方を渡さない、と貴方の父上から宣告されたとき、とても心が揺らいだんです。ジュリアの魂としてではなくて、これから、はぐくまれる愛しい命が恋しくて欲しくてたまらなくなったんです。まるで、貴方の魂が、自分の希望そのもののように感じたのです」
コンラッドは、愛しげに眼を細めて俺を見つめる。
「だから、必ず貴方のそばに寄り添いたいと強く思いました。ジュリアを守れなかった分も、何もかもを、貴方に託したかった。貴方を誰よりも、何よりも、幸せにしたいと強く願いました」
彼は、甘い極上の笑顔で俺を見つめる。
「そのときからです。俺がよく笑うようになったのは。貴方を父上から渡してもらうために。貴方が俺をはじめてみた時に、一番良い笑顔でいられるように」
俺は、甘いコンラッドの声にうっとりする。
「コンラッド・・・・ありがとう。すごく、俺、幸せだよ」
コンラッドは、俺の左手の上から右手を重ねると、燃え盛る夕日にかざしてみせる。
「俺は、そのとき、貴方の健やかな成長を太陽になぞらえました。瓶に入った綺麗な貴方の魂を、今日のような綺麗な夕日に重ね合わせて」
そっと息をはくと、甘く柔らかな声で囁くコンラッド。夕日に二人の手を優しくかざしながら。
「自分の道をまっすぐ歩けるように、何者にも負けない強い輝きをもった者ー」
何だろう、この感じ。前にも見たことがあるような。この既視感。懐かしい気持ち。胸の辺りがじわりと暖かく感じる。
一刹那、なぜか、俺は自然と言葉が口から漏れる。
「全ての者の太陽となりますように・・・・・・・あれ?!」
コンラッドが息を呑んで俺を見つめる。コンラッドだけしか知らないはずの言葉。その続きを俺がさらりと言ったことに彼は驚愕している。
しばしの沈黙の後、コンラッドが口を開く。
「ユーリ!!貴方、まさか魂のときの記憶があるんですか?」
俺も、突然のことに呆然とする。
「なんだろう、はっきりとした、記憶はないんだけれど。今、コンラッドが太陽に手をかざした時、その言葉を紡いだとき、懐かしくて暖かい気持ちがしたんだ。そして、なんだか自然に続きの言葉をしゃべってたみたい。おれ自身も、とても不思議だよ!!」
二人に起きた奇跡。
まだ、実像を持たない、魂の内からその魂を愛した者。
まだ、実像を持たない、魂の内から愛された者。
共鳴しあう魂。
巡りめく命の果てに辿り着いた、強い愛の結びつき。
これ以上にないほどに、強靭な絆。
幸せそうに微笑むコンラッド。
「ユーリ、決まりましたね、結婚指輪に入れる文字が」
俺も、満面の笑みで応える。
「あぁ、決まりだな」
柔らかな夕日に見守られながら、俺達はいつまでもキスをしていた。
*****
「それで、魔王陛下。何か指輪に刻みたい文字などはありますか?」
宝飾店の店主が恭しく尋ねる。
俺は、ためらわずに答える。
「自分の道をまっすぐ歩けるように、何者にも負けない強い輝きをもった者、全ての者の太陽となりますように」
「いつまでも貴方を輝かせる、澄んだ青空になりますように」
コンラッドが、言葉を付け足す。
俺に目配せをして、優雅に微笑むコンラッド。
コンラッドの甘い言葉に、胸が熱くなる。
「コンラッド・・・・」
二人の微笑ましい姿に、見惚れる店主。
「・・・・・・とても、感慨深いお言葉ですね。さっそく、当店一のゴールドスミスに製作させますからね!」
店の外へ、繰り出す二人を、一面の澄んだ青空とその中でひときわ煌く太陽が華々しく出迎えてくれた。
第三話 =完
※二人が、マリッジリングを作るときに、過去の想い出を回想するお話です。
アニメ26話参照です。
俺は、晴れて血盟城で公認のコンラッドのフィアンセになった。コンラッドも、また然り。
俺達は、公認の関係になったので、色々と人目を気にすることも少なくなった。
なんと、今日は二人で堂々と、マリッジリングの製作依頼に出かける。今までのように、城下街の視察とか、いちいち言い訳をすることなく、堂々と『結婚指輪の依頼に行って来る』と言える。
その僅かな変化が、俺の胸をふわりと、幸せな気持ちにしてくれる。
二人で、ノーカンティに騎乗して、出かける。ユーリがコンラッドの背中に安心しきったように身を委ねる。春風のように柔らかな笑顔で、微笑みあう二人。その後姿を、侍女達がうっとりとした表情で見つめる。
俺達は、童話に出てくるような可愛らしい民家が立ち並ぶ入り組んだ狭い路地に入り込む。優雅にノーカンティに揺すられながら、その中を突き進む。
突如、視界が開けて、河のほとりの宝飾店が軒を連ねる宝飾街に辿り着く。柔らかな河のせせらぎがそっと鼓膜をふるわす。ツバメ達が、優雅に宙を舞う姿が空に映える。
各々の店先のショーウィンドウには、色とりどりの輝く宝石が飾り立ててある。
その中にある、ひときわ通行の便がよく、見晴らしのいい一等地に建てられた、雅やかな宝飾店。その扉を、開けるコンラッド。
「こちらです、ユーリ」
幸せそうに微笑むコンラッド。
そんなコンラッドにつられて、俺も思わず頬が緩む。至福のとき。
「うん!」
勢いよく店に飛び込む俺。
中から、店主がかしこまって姿を現す。
「これはこれは、魔王陛下と婚約者殿。このたびは、わざわざご足労頂き、大変、恐縮に存知ます。本来なら私が城に出向くべきでしたのに」
「あ~、そんなに硬くならなくていいから!!普通にしててよ、ね?俺が、我侭言って、ここに直接行きたいって、王佐に頼んだんだから」
緊張した面持ちの店主を、和らげようと、俺は声をかける。
*****
一週間前のことだった。俺達は、夕日が映える春の丘で、木に背をもたせかけながら、指輪のことを相談していた。
「ユーリ、今日はマリッジリングについて相談したいのですが」
ふわりと、優しく俺を見つめるコンラッド。
マリッジという単語を聞いて、俺は改めてもうすぐ結婚するんだということを実感する。
「結婚指輪には、お互いの想い出の日にちや、物、などを刻み付けるのですよ」
幸せそうに、俺に微笑みかけるコンラッド。
「今日は、二人の想い出を話して、指輪にどんな文字を刻むか、一緒に考えませんか?」
コンラッドからの提案に、俺は顔を綻ばせる。
「うん、なんかいいな、そういうの。早速考えようよ!!」
眼を緩やかに細めて俺を見つめるコンラッド。
「えぇ。では私から、貴方との忘れられない想い出をお話しますね」
懐かしそうに、遠くをみつめる優しいコンラッドの瞳。アッシュグレーを帯びたダークブラウンの綺麗な瞳。
「ユーリ、知っていましたか?私は貴方の魂を地球に運んだことがあるのですよ」
突然の、コンラッドの告白に驚く俺。
「えぇっ?初耳だよ。詳しく聞かせて」
俺は、好奇心に身を乗り出す。
夕暮れの甘い風にさらさらと髪をたなびかせて、俺を愛おしく見つめるコンラッド。
「えぇ、お話します。あれは、ジュリアが亡くなってすぐのことでした。ウルリーケから、突然にジュリアの魂を地球に届けるようにとの託けを受けたのです」
彼は、少しばつが悪そうに、俺に微笑む。
「当時の俺は、今とはかなり違う性格でした。とても、斜に構えていたというか・・・・何かにつけ批判的だったというか・・・」
俺は、眼を見開いてコンラッドを見つめる。
「えぇ?!コンラッドが?なんか全然想像がつかないな」
意味深な笑顔で俺を見つめるコンラッド。優しく俺の髪を撫でてくる。
「ふふ、そうですか。それは、貴方のおかげなんですけどね」
一呼吸置いて、話を続けるコンラッド。
「とにもかくにも、俺は当時無性に腹立たしかったのです。ジュリアが、亡くなったのは運命なのだと、当然のように言われたこと。それも、眞王のお告げだと、言われたこと。偉大な眞王を前にすると、一人の人の命は、虫けらのように扱われてしまう。そんな、むなしさと、それでも、その運命を自然の摂理として受け入れたジュリアがはがゆくて・・・・」
切なそうに、眉をひそめるコンラッド。
「ジュリアの魂だけを預かって、私は地球に送られましたが、私は、自暴自棄になっていました。まだ、現実が受け入れられず、現実から眼を背けていたのです。過ぎてしまった、ジュリアを失くした過去だけに引きずられ、前を見ていなかった。恥ずかしながら、もっと大切な存在にそのときは気づけなかったのです。」
再び、決まりが悪そうに俺を見つめるコンラッド。彼の髪の毛が、夕日に染められて黄金色の髪の毛になる。
「私は、貴方の父上に、説教をされたのです」
意外な展開に驚き、声をあげる俺。
「えぇ?!親父が?」
困惑した顔で、俺を見つめるコンラッド。
「えぇ、そうです。私は、本当に浅はかで未熟な半人前だったのですから、叱られて当然ですよ。そのとき、俺は貴方の父上に対して、いや、貴方に対してもとても失礼な暴言を吐いたのですから」
「コンラッド・・・?」
俺は、その会話の内容を聞いて、少し不安げにコンラッドを仰ぎ見る。
そんな俺を安心させるように、ぎゅっと胸の中に俺を抱き寄せるコンラッド。彼の暖かい胸の鼓動が聞こえる。
「本当に、なんといって謝ったらいいか。いくら謝っても謝り足りないくらいですが。俺は、貴方の魂を父上に預けたら、貴方が十五歳になるまで、一切お互い干渉しないこと、なんて冷淡なことを言ったのです。本当に、愚かしくて言葉も出ません」
俺の身体を軋むほど強く抱きしめて、話を続けるコンラッド。
「けれど、そのとき、貴方の父上が、俺をきつく叱ってくれたのです。自分の大事な息子を、そんな冷たいことを言う奴に預けられるか、と。そして、今後もし貴方のことで、そのような投げやりなことを言ったり、貴方につまらない顔をしていたら、こちらの世界に貴方を渡しはしないと宣告されたのです」
抱きしめていた腕をほどいて、俺の両肩をゆるく掴むと、俺に甘く微笑むコンラッド。
「その戒めの言葉で、やっと俺は過去ではなく、今からつながる未来へと、眼を向けることができたのです。貴方を渡さない、と貴方の父上から宣告されたとき、とても心が揺らいだんです。ジュリアの魂としてではなくて、これから、はぐくまれる愛しい命が恋しくて欲しくてたまらなくなったんです。まるで、貴方の魂が、自分の希望そのもののように感じたのです」
コンラッドは、愛しげに眼を細めて俺を見つめる。
「だから、必ず貴方のそばに寄り添いたいと強く思いました。ジュリアを守れなかった分も、何もかもを、貴方に託したかった。貴方を誰よりも、何よりも、幸せにしたいと強く願いました」
彼は、甘い極上の笑顔で俺を見つめる。
「そのときからです。俺がよく笑うようになったのは。貴方を父上から渡してもらうために。貴方が俺をはじめてみた時に、一番良い笑顔でいられるように」
俺は、甘いコンラッドの声にうっとりする。
「コンラッド・・・・ありがとう。すごく、俺、幸せだよ」
コンラッドは、俺の左手の上から右手を重ねると、燃え盛る夕日にかざしてみせる。
「俺は、そのとき、貴方の健やかな成長を太陽になぞらえました。瓶に入った綺麗な貴方の魂を、今日のような綺麗な夕日に重ね合わせて」
そっと息をはくと、甘く柔らかな声で囁くコンラッド。夕日に二人の手を優しくかざしながら。
「自分の道をまっすぐ歩けるように、何者にも負けない強い輝きをもった者ー」
何だろう、この感じ。前にも見たことがあるような。この既視感。懐かしい気持ち。胸の辺りがじわりと暖かく感じる。
一刹那、なぜか、俺は自然と言葉が口から漏れる。
「全ての者の太陽となりますように・・・・・・・あれ?!」
コンラッドが息を呑んで俺を見つめる。コンラッドだけしか知らないはずの言葉。その続きを俺がさらりと言ったことに彼は驚愕している。
しばしの沈黙の後、コンラッドが口を開く。
「ユーリ!!貴方、まさか魂のときの記憶があるんですか?」
俺も、突然のことに呆然とする。
「なんだろう、はっきりとした、記憶はないんだけれど。今、コンラッドが太陽に手をかざした時、その言葉を紡いだとき、懐かしくて暖かい気持ちがしたんだ。そして、なんだか自然に続きの言葉をしゃべってたみたい。おれ自身も、とても不思議だよ!!」
二人に起きた奇跡。
まだ、実像を持たない、魂の内からその魂を愛した者。
まだ、実像を持たない、魂の内から愛された者。
共鳴しあう魂。
巡りめく命の果てに辿り着いた、強い愛の結びつき。
これ以上にないほどに、強靭な絆。
幸せそうに微笑むコンラッド。
「ユーリ、決まりましたね、結婚指輪に入れる文字が」
俺も、満面の笑みで応える。
「あぁ、決まりだな」
柔らかな夕日に見守られながら、俺達はいつまでもキスをしていた。
*****
「それで、魔王陛下。何か指輪に刻みたい文字などはありますか?」
宝飾店の店主が恭しく尋ねる。
俺は、ためらわずに答える。
「自分の道をまっすぐ歩けるように、何者にも負けない強い輝きをもった者、全ての者の太陽となりますように」
「いつまでも貴方を輝かせる、澄んだ青空になりますように」
コンラッドが、言葉を付け足す。
俺に目配せをして、優雅に微笑むコンラッド。
コンラッドの甘い言葉に、胸が熱くなる。
「コンラッド・・・・」
二人の微笑ましい姿に、見惚れる店主。
「・・・・・・とても、感慨深いお言葉ですね。さっそく、当店一のゴールドスミスに製作させますからね!」
店の外へ、繰り出す二人を、一面の澄んだ青空とその中でひときわ煌く太陽が華々しく出迎えてくれた。
第三話 =完
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とても気が弱く長いものに巻かれろ的な性格です。
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