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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2009/05/14 (Thu)                  Flower Shower

第二話  Flower Shower 

 

 ※プロポーズを改めてするコンラッドのお話。アニメ第52話『大地立つコンラート』(ルッテンベルクの獅子団で、コンラートが戦地に赴くときに、ユーリが花をささげるお話)を参照しています。



 昨晩、静やかな夜に、俺はコンラッドからプロポーズを受けた。
 見たことのない、いつもよりも数段甘いコンラッドの顔、甘い声、が忘れられない。


 今朝早くに、コンラッドはいつもどおりに軍服を着て、精悍な顔つきで寝室を出て行った。ただ違ったのは、去り際に俺に、いつもより長く口づけをしたこと。俺のことを抱き寄せて、「未来のお嫁さん、愛しています。行って来ます」と耳元で甘く囁いたこと。


 わ、だめだ。思い出すと、顔から火が出そう、俺。お嫁さんってのが何だけど・・・。


 朝食を終えて、中庭に出るとノーカンティに乗ったコンラッドが俺を呼ぶ。
 騎乗して、さぁ、と右手を差し出して微笑む姿は、王子のよう。春風がさらり、と彼の綺麗な栗色の髪を揺らめかす。


 まったく、いつでもかっこいいんだからな、コンラッドは。


 俺は、またしても昨日のプロポーズを思い出して、頭に血が上る。


 コンラッドは、俺の手をそっと握り締めると、ぐいっと馬の上に引きあげる。
「大丈夫ですか、ユーリ。顔が真っ赤ですよ」
 心配そうに、細めた瞳で俺を見つめるコンラッド。
「体調が悪いようでしたら、私の背中に全体重を預けてくださいね。その方が、貴方の負担が少ないですから」 
 
 
 まったく、過保護なんだから、コンラッドは。っていうかそもそも俺の顔が赤いのは、コンラッドのプロポーズを思い出したから・・・・・なんて言えないし、恥ずかしい。でも、心配させてごめん、コンラッド。

「本当、顔が赤いのは熱があるとかじゃないから、全然気にしなくていいから!!」
「そうですか、それならいいですが」
 俺の言葉に安心したようににこりと、彼は微笑むと前に向き直って手綱を握り締める。



 ゆらゆらとノーカンティに、揺られながら城下街へと前進する。石畳の上を、ノーカンティのひづめの音が、耳に心地よくこつこつと響く。それに、コンラッドの背中の温もりがじわりと伝わってくる。


 コンラッドの背中って・・・・意外と広くて・・・なんか頼もしいよな。


 俺が、コンラッドの背中に身を預けながらそんなことを考えていたら、突然ノーカンティが立ち止まる。


 優雅な笑顔でコンラッドが俺に振り返る。
「ここです、ユーリ」
 俺達は、城下街の中腹ほどの市門の前にいた。
「え?・・・・コンラッド、何か門に用があるの?」
 いつもの散策道の草原に行くかと思っていた俺は、少し面食らう。
 コンラッドは、甘い笑顔で、応える。
「えぇ、とても大切な用があります、俺の生涯で一番大切な・・・ね」

 
 わぁ、コンラッド、すごい、綺麗な顔。それに、生涯で一番大切な用って何だろう?


 コンラッドは、俺をノーカンティの背中から下ろす。
 そして、おもむろに城下街の道中で俺に跪く。


 俺は、コンラッドの突然の行動に、仰天する。


 ちょっと、コンラッドさん!眞魔国の皆さんが俺達に大注目してるんですけど!!

 
「ちょ・・・ちょっと??コンラッド??」


 コンラッドは、昨晩のあのときの、あのプロポーズしたときと同じ、この上ない甘く慈愛に満ちた顔で俺を見つめる。
 一呼吸を置くと、コンラッドは、緊迫した面持ちで俺に言う。

「ユーリ、私の傍に一生いて貰えませんか。私の命が尽きるまで、貴方に私の全てを捧げ、貴方を幸せにします」
 真剣で熱いコンラッドの眼差し。揺らぐことのないまっすぐで誠実な、眼差し。

 
 暖かな春の陽射しが、緩やかに俺達に降り注ぐ。
 俺の胸に暖かいものが、じわり、と染み込む。
 目頭が熱くなる。


 一刹那、頭上からひらひらと、可憐な花びらの雨が降りそそぐ。


ー?!
  この碧い花弁・・・・・『大地立つコンラート』の花だ。
  この景色、前に、見たことがある。


 そう、俺が魔境で、過去に戻ったときのあのシーンだ。
 ルッテンベルクの獅子団として、戦地に赴くコンラッドの頭上に、俺がこの花を降らせたときの。
 過去の傷ついたコンラッドに俺ができることは、花を舞わせて、ひそかに声援を送ることしかできなくて。
 魔族でも人間でもないことで、虐げられて、傷ついていた彼が、その誇りを取り戻すために、勝つ見込みのない僻地に出陣するときに、俺にできることといったら、本当にこんな些細なことしかできなくて。すごく、切なかったんだ。


 俺は、思い出すと胸が締め付けられる。先程とは違う意味での涙を流す。



 コンラッドは、そんな俺を見つめると、優しく胸の中に俺を抱き閉める。そして、コンラッドは、そっと俺の涙をハンカチで拭う。



「ユーリ、泣かないで。あの出陣のとき、私は、とても荒んでいました。魔族でも、人間でもないことで、どちらの側からも迎合されない私の心は、いつもとても孤独だったのです。その孤独を認めたくないがために、戦うことを選んだのです。魔族として戦うことで、自分達の存在を、認めさせたかったのです。自分達は、例え半分人間の血が入っていようとも魔族だということを・・・・・・どうしても認めさせたかったのです。例え、勝つ見込みはないと知っていても」



「コンラッド・・・・」
 俺は、じっとコンラッドの言葉に耳を傾ける。


 ふわり、と優しく慈愛に満ちた表情をして彼は俺に微笑む。
「ですから、あのとき、この門の上から『大地立つコンラート』の花弁が舞い落ちてきたときは、心が温かくなりました。
 その当時は、まだ貴方の存在を知りませんでした。けれど、なぜかとても、懐かしく暖かい、大切な存在がそこにいると、本能が感じ取ったのです。その誰かが、俺を応援してくれるのだ、と、舞い落ちる花びらを見て思いました」


 コンラッドは、俺の手の甲に口付けをすると、言葉を続ける。


「そして、貴方の純真な魂に触れているうちに、確信したのです。やはり、あのときの暖かい存在は貴方だと。貴方は、いつのときも、私を暖かく包み、癒してくれる。もう、貴方なしには今の私はいないのです」
 再び、コンラッドは熱く、甘く俺を見つめる。


「俺に、貴方の生涯を下さい」



胸がつかえて、言葉が上手くでてこない俺は、それでも、精一杯の気持ちをこめて彼に伝える。




「もちろん・・・・・コンラッド!!それに、俺・・・・・・・・俺、もうコンラッドみたいに人間と魔族の狭間で苦しむ人が出ないような・・・そんな眞魔国を、絶対に・・・築きあげてみせるから。コンラッドも、その手助けをして!!」


「ユーリ!!」
 コンラッドに、熱く抱きしめられる。



 すると、周りの眞魔国の住人達が微笑ましく拍手を送る。
 

 そして、その中によくみる顔ぶれがあって、俺は驚く。


 「ヴォルフラム!ギュンター!グウェンダル!村田!グレタ!アニシナに、ツェリ様に~あぁ、ダカスコスまで、あぁ、ドリア達も!」
 俺は、あまりの驚きに、彼らの姿が見えた順に名前を呼び上げていく。


 ヴォルフラムが泣きはらした眼で俺に言う。
「まったく、好きな奴がいるなら早くそういえばよかっただろ、このへなちょこめ。でも、しょうがないから祝福してやる。俺達で、花びらを降らせてやったんだからな」
 泣くのを必死にこらえて、ヴォルフラムが懸命に俺に伝える。


 ギュンターは、いつもとは比べ物にならないくらい汁まみれになりながら俺に抱きついてくる。
「べいか~、恋敗れたギュンターですが、これからも貴方をお支えいだじまず~、おめでとうございまず~~!!」


 グウェンダルは、いつもより眉間の数が少ない柔らかい表情で俺達を祝福する。
「いろいろあったが、何よりだ。これからも眞魔国発展のために全力をつくすようにな」
 口数少ないところが彼らしい。


 村田は、あまり驚いた顔をみせずにいう。
「やっぱりね~、いつかこうなるんじゃないかと思ってたんだよ、渋谷。渋谷とウェラー卿の態度を見てれば、ばればれだったよ。でも、おめでとう!!すごい、プロポーズだったね。いいもの見れたよ。いつまでも幸せにね」
 悪戯な顔でウィンクする村田。


 グレタが、満面の笑みで俺に言う。
「お父様、おめでとう!!え~っと、今度からは、コンラートがユーリの旦那様になるんだよね。じゃあ、コンラートがグレタのパパにもなるってことなのかな?」
 難しい表情で考え込むグレタ。


 皆が、俺達のことを祝福してくれる。
 中には、いろいろとつっこみたくなるコメントがあったけれども。


 コンラートが俺にそっと耳元で囁く。
「どうしても、貴方に、きちんとしたプロポーズをしたかったんです。そして、貴方が私の大切な人なのだと、みんなに知ってもらいたかったのです。すこし、目立ってしまいましたが、すみません」



 ありがとう、俺、今人生で一番幸せだよ。
 この喜びを、胸にかみ締めて、眞魔国のために全力を尽くすから!!
 皆の笑顔であふれる眞魔国を目指すから!!
 もちろん、コンラッドと一緒にね。


第二話=完


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