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「坊ちゃん、いつまで寝ていらっしゃるのですか。もう朝食の用意が出来ていますよ。イングリッシュマフィンとスクランブルエッグ、アールグレイをお持ちしました」
ワゴンの上から磨き上げられた銀のフォーク、ナイフ、紅茶のポット、カップ、ソーサーを、次々とテーブル上の定位置に素早く並べる。上品なコットンの白いクロスをかけられたテーブルの上に。次に料理の載ったお皿を取り、テーブルの上に配膳する。
それでも、全く起きる気配のない俺の主人。
俺は優しく、少年の主人の頭を撫でる。俺は、息が吹きかかるくらいの耳元で彼に甘く囁く。
「おはようございます、坊ちゃん。朝ですよ」
「んやっ・・・みみ・・・くすぐったい・・・んにゃんにゃ、坊ちゃん、って言うなぁ~、コンラッド」
寝ぼけ眼の愛らしい俺の主人は、あろうことか事あるごとに執事である俺に、自身を名前で呼ぶように命じる。そして、彼は再び瞼を閉じてしまう。
ユーリ、それは、執事と主人という関係を越えてもいいということですか?
貴方のその言動が、俺の心にそんな甘い期待を膨らませることなど、貴方はご存じないでしょうね。
ただ貴方は、お優しいだけなのですよね。身分の差を感じるのが嫌だ・・・と以前おっしゃっていましたから。俺のほうが、自分より身分が低いことで、俺が傷ついているとお考えなのでしょう?それで、俺に名前で呼んでくれというだけのことなのですよね。
「そうでした、ユーリ・・・・・。それにしても、まだ起きては下さらないのですね。今朝は婚約者のフォンビーレフェルト卿がいらっしゃる予定です。執事たるもの主人の失態をみすみす招くわけにはいきません。是が非でも貴方を眠りの淵から目覚めさせていただきます・・・・手段は選びませんよ」
それにしても、なんて愛らしい寝顔なんだ。ふっくらとした薄紅色の淡い唇。
触れてみたい・・・。
可愛らしい主人を見ていたら魔が差してしまった。白い手袋を外すと、彼の櫻色の唇を指でなぞる。柔らかな感触が、指先に伝わる。
気がつくと、俺は主人にキスをしていた。そっと、唇を触れ合わせるだけの切ないキスを。
いっそ、このまま貴方が目を覚まして、俺の気持ちに気づいてくれたらどんなに・・・いいか。どれだけ・・・・楽になれるか。
いけない!俺は彼にとってただの執事。身分違いも甚だしい。おまけに彼には、高貴な婚約者がいらっしゃる。
俺は思い留まり、何事もなかったかのように彼から素早く唇を離す。
「ユーリ、朝ですよ。起きてください」
重厚なカーテンを勢いよく左右に引く。朝の黄金色の陽射しがキラキラと部屋に差し込む。
ようやく、顔をしかめながら、貴方は身体を起こす。
「ふぁ~、よく寝た・・・・。ねぇ、コンラッド」
少し恥ずかしそうに、言葉を続ける貴方。
「も、もしかして、さっき俺にキスしてなかった?」
上目遣いに、ちらりと俺の様子を伺う主人。
俺は、高鳴る鼓動を抑え付け、いつもの笑顔で優雅に微笑む。
大丈夫、俺は、きっとこの揺れる気持ちを上手く隠せている。
「いいえ、そのようなことは致しません」
一呼吸置くと、いつもの決め台詞をすかさずに言う。
いつもユーリが俺の気持ちに気づきそうになるたびに、言い訳に使うこの台詞を。
「あくまで執事ですから」
★★おしまい★★
黒執事パロでした(汗
あくまと悪魔がまったく掛けられていませんが・・・あはは(汗
そのままの意味で使っちゃいました(^^;)
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