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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2024/05/18 (Sat)                  [PR]
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第十五編 好きになってよかった
※海の日&皆既日食ネタなコンユvユーリが乙女チックです(笑ヲイ





 俺、どうしちゃったんだろう。
 コンラッドと一緒にいたくてしょうがないんだ。
 コンラッドの側にいると、気持ちがふわふわして落ち着かないんだけど、でもすっごい気分がたか ぶって、いい気持ちなんだ。

 特に、コンラッドと二人だけでいると信じられないくらい嬉しくて堪らない!
 だから、最近はコンラッドを城から引っ張り出して、二人で城下町の散策ばかりしちゃうんだ。




 期末試験をなんとか終わらせて(赤点を取るとコンラッドに遭える日が減るから目いっぱい頑張った。村田の協力もあるんだけどね)、いよいよ夏休みに突入した。

 俺は、浮かれ気分で学ラン姿のまま眞魔国へスタツアした。

 早くコンラッドに遭いたいんだ。遭ったら、お帰りなさいって言って笑ってくれるかな?早く、あの優しい声でユーリって呼んでもらいたいな。陛下って言ったら絶対怒ってやるんだからな。
 それに、今日はある目論見があるんだっ。

 水面から勢いよく顔を上げると、そこは眞王廟の噴水だった。髪から滴る水を、ぶんぶんと頭を振って振り払う。
 刹那、舞い降りてきたほわっと柔らかいタオルの感触に、にこっと顔を上げると俺の遭いたくてしょうがなかった人物がそこにいた。
 初夏のきらめく陽光に佇む、精悍な美青年。彼の姿を見つけた瞬間から、息苦しいような甘い気持ちが押し寄せた。周りには、ギュンターだってヴォルフラムだって居るはずなのに、彼しか瞳に映らないみたい。
「おかえりなさい、陛下」
 彼に、溶けそうに甘い笑顔で微笑まれた。だから、陛下っていわれたことを抗議するのに時間が掛かった。
「もう、陛下言うなよ、名付親」
 膨れて横を向いた俺に、コンラッドはそっと手を差し出した。
「そうでした、ユーリ」
 彼は、まったく悪びれもしない、花が綻ぶような顔で微笑んだ。全く、コンラッドには敵わないや。
 彼にエスコートされるままに、彼の手をぎゅっと握ると、彼は俺を一旦胸に抱き寄せてから地面に下ろした。彼の厚い胸板の感触と優しい香りにくらくらした。
  一気に顔が上気した。甘い気持ちを通り越して、息苦しくすらある。なのに、同時にたまらなく幸せな気持ちになる。

 今までだって、これくらいの接触は頻繁にあったのに、最近の俺は本当におかしい。
 この想いは・・・・何なんだ?!
 ええい、それより今日はやらないといけないことがあるんだ!
「ごめん、これからウルリーケにちょっと遭って来る!皆は付いて来ないで、絶対ね!」
 もやもやする熱い想いを振り払うように、祭壇に向かった。




 俺は、ウルリーケに無理を言って日本時間の7月22日の午前10時30分頃に、地球の奄美大島の用岬海岸に飛ばして貰う事にした。
 そのあと、またグウェンダルに無理を言って、その日コンラッドに休暇を貰えないか頼んだ。

 まったく、王様の権利濫用も甚だしいよな、ごめんなさい。だって、どうしても、コンラッドに皆既日食を見せてあげたいんだ。部分的に太陽が月に隠れる部分日食じゃなくて、月が全部太陽を覆ってしまう皆既日食の見られる奄美大島に、どうしても一緒に行きたいんだ。

 わがままな夏休み気分の王様でごめんなさい。



*******

 俺とコンラッドが地球に行くことを、ギュンターとヴォルフラムが猛反対したけど何とか無事に二人で奄美大島に行ける事になった。
 ギュンターやヴォルフラムも一緒に来てもいいんだけど、眞魔国の重鎮が大勢いなくなると有事に困るし。というか、ごめん、それ言い訳だ。本当は、コンラッドと二人きりで来たかった。

 用意のいいことに俺は、渋谷家からスタツアする際にコンラッドの水着も用意してきた。二人して、トランクスタイプの水着に履き替えて、いざ飛び込もうというときに、コンラッドが俺の手を握ってきた。
 どくんと、心臓が激しく脈打った。
「コンラッド?」
 上目遣いにそっと彼を見ると、悪戯な表情で微笑まれた。
「水の中で貴方にはぐれるといけませんから・・・ね?」
 唯でさえ、繋いだ指先から全身が火照っていくのに、その表情とか、甘い声は反則すぎる。俺は、俯いて小さく返事するしかできなかった。
「さぁ、行きましょう」
 ウルリーケに見守られながら、俺たちは眞王廟の噴水に勢いよく飛び込んだ。


*****
 彼と繋いだ指の熱で、身体があつくて堪らない。水面から顔を出すとすぐに彼の手を離した。自分から離したくせに、少し寂しかった。

 そこは、目標どおりの場所だった。俺たちは、奄美大島の用岬海岸の浅瀬にいた。広い海岸から仰ぎ見る、小高い岬には、真っ白な灯台があった。山にも海にも囲まれた風光明媚な場所だった。海岸には、皆既日食を見ようと沢山の人々が押し寄せていた。コンラッドと二人きりになれないのは少し残念かも。

「ユーリ、ところでどうして日本の海に来たのですか?」
 考えを巡らせていると、彼が尋ねてきた。そういえば、コンラッドにはまだ教えてないんだった。ここで、皆既日食が見られることを。でも、折角だから内緒にしとこっと。だって、その方が絶対びっくりして喜んでくれそうだし。
「だって、眞魔国だとギュンターとかヴォルフラムも来るって言い張りそうじゃん。だから、日本の海にしたんだよ」
 俺が言い終わるや否や、コンラッドが俺を真剣な眼差しで見つめてきた。
「それは、俺と二人きりになりたかったっていうことですか?」
 し、しまった!皆既日食のことを隠したいがために付いた言葉が、とんでもなく地雷発言だった。コンラッドと二人きりになりたいっていうのも図星なんだけど、流石に頷けない。だって、ここを認めたら、コンラッドに変に思われちゃうだろ?!
 コンラッドは、優しいけどやっぱり俺のことが名付子だから、可愛いがってくれてるだけなんだろうし。
 二人きりになりたいなんて・・・・男から言われたら流石に引くだろ?

「いやいやあの、だから全然そうじゃなくって、言葉のあやっていうか?ギュンターもヴォルフラムも煩いじゃん!そう!!それ!!あの二人にギャーギャー言われずに海を堪能したかったの!ぜんっぜん、変な意味はないからっ」
 なぜだか、胸にちくちくとした痛みを感じながら、俺は、全力で否定した。
「そうでしたか」
 そう言って、いつものように微笑むコンラッドがなぜだか傷ついたように見えた。
 今のは、俺の気のせいか?確かめたくて、彼の名を呼んだ。
「コンラッド?」
 けれど、彼は南国の風に柔らかな髪をなびかせて、キラキラとした爽やかな笑顔で微笑んだ。
「ユーリ、ほら、少し沖のところに大きな岩があるでしょう?そこまで泳いでみませんか?」
 なんだ、コンラッドは別に、何てことないみたい。俺の気のせいだったんだ。それに、泳ぐのって楽しそう!確か、皆既日食の30分前にここへスタツアしたはずだから、食が始まるまで、まだ少し泳ぐくらいの余裕はあるよな。
「よーし、じゃあどっちが先につくか勝負だ!」
 コンラッドににっこりと微笑みかけた。
「受けて立ちますよ、ユーリ」
 彼に、悪戯にウィンクされた。またしても、胸の動悸が早くなってしまう。だけど、楽しくてたまらない!
 コンラッドにえいっと水しぶきをかけると、一目散に沖合いにある岩を目指した。


 平泳ぎで海面を掻き分ける度に、黄金色の太陽の光を宿した雫がキラキラと飛び散る。
 コンラッドといる時間は、初夏の陽射しみたいにキラキラしてる。
 幸せすぎて、夢の中にいるみたい。叫びだしたいくらいに楽しい!


 段々、目的の岩が近づいてくる。コンラッドは、俺の少し後を泳いでいた。

 突然、潮の流れが急になってきた。楽しくて浮かれていた俺に、にわかに緊張が走る。
 あれ・・・、岩を目指してるのに、全然そっちに向かっていない?潮の流れに呑み込まれてる?!

 急に、怖くなった。慌てて、必死に潮の流れと反対方向に向かって泳ぐ。それなのに、少し前に進んだかと思うとすぐまた元の位置に戻されてしまう。怖くてたまらなくて、更に必死に潮の流れに逆らう。その繰り返しをしているうちに、身体がひどくだるくなってきた。

 どうしよう・・・。手足を動かすのが苦しい・・・・。ちょっと・・・休もう。
 鈍る意識に、身を沈めた。
 
「・・・・リ・・!」
 背後から、コンラッドの声がかすかに聞こえた気がした。

*******

 なんだろう、身体がふわふわする。優しくて、甘い匂いがする。

 んっ・・・くす・・・ぐったい。

 前髪にさらさらと触れる柔らかい感触と、唇に触れる暖かい感触に身を捩る。

 俺・・・どうしたんだろう。そういえば、溺れかけてたんだ?!
 思考が戻ると同時に、ぱちんと、眼が覚めた。

 
 もうすぐ昼の筈なのに辺りは、夜明け前のように薄闇だった。調度、皆既日食の食の最大の瞬間だったようだ。
 そして、それよりも信じられない状況に、目を瞠った。

 あの目指していた岩の上にいつの間にか俺は寝かされていた。そして・・・コンラッドの柔らかい前髪が俺の前髪と混ざり合い、彼の暖かい唇が俺の唇を覆い、そこから彼の息が吹き込まれた。

 コンラッドが、人工呼吸・・・してくれてる?
 このまま俺は死んでしまうんじゃないかと思った。胸が激しく昂ぶった。心臓の拍動が、頭の中に大きく響く。胸が痛い。

 そっと唇が離されると、コンラッドは目を覚ましている俺を見て破顔して抱きついた。きつく深く胸の中に抱きしめられた。俺の心拍数はどんどん上がっていく。
「ユーリ!よかった!意識が戻ったんですね!!」
 俺を抱きしめる彼の腕に力が籠められる。水着しか着用していないので、彼の上半身が直に俺の肌に触れる。俺の肌は、見る間に櫻色に染まってしまう。

「あ、ありがとう・・・コンラッド・・・その・・・人工呼吸してくれたんだ」
 真っ赤になって、言葉を紡いだ俺に、彼は甘く瞳を細めて微笑んだ。うわ・・綺麗な顔・・・・。こんなに至近距離で見ちゃった・・・!
 彼は、俺の指を自身の指で絡めとる。節くれだった、長い指の感触にドキッとする。

 そのとき、上空にきらりと眩しい光が覗いた。完全に月に隠れていた太陽が、徐々に姿を現し始めた。そこから、どんどん光が溢れ、辺りは昼間の明るさを取り戻していく。

 その様子を息を呑んで見守った。目が離せなかった。その様が、今の自分に似ている気がしたから。

 コンラッドに人工呼吸とはいえ、キスされて、信じられないくらいドキドキした。その肌に触れられて、指を絡められて・・・・。胸が張り裂けそう。もう、いいかげんこの気持ちから目を逸らせない・・・!

 そうだ・・・・俺は自分の気持ちを隠してた。その気持ちをすっかり覆って気がつかない振りをしてたんだ。



 俺は・・・・コンラッドのことが・・・・好き。



 俺が、自分の気持ちを素直に認めたとき、太陽は眩しいほどに煌いて、その姿を惜しみなく晒していた。

「好きになって・・・よかった」
 気がついたら、うわごとの様に言葉が溢れた。俺は涙を流していた。彼の髪も瞳も声も、仕草も・・・彼の全部が好きで堪らない。そこにいてくれるだけで、幸せすぎる。

 彼の瞳もまた淡くゆらめいた。心なしか身体が震えて見えた。
「好きになって・・・・よかった」
 心の奥底から出したような彼の掠れた声が響いた。
 
 彼も俺とまったく同じ気持ちでいてくれる。
 こんなに、幸せでいいの?

 余計な説明なんていらなかった。惹かれあう二人の気持ちは、素直に重なり合う。もう、その想いを隠すことも、誤魔化すこともない。

 ようやく素直になれた二人に、甘い時が訪れる。重ね合わせた気持ちのままに、どちらからともなく接吻けを交わす。




 好きになって・・・・よかった。





あとがき★
 陶酔っぽい話になったかも(汗
 ユーリの好きでたまらないくせに、幼くてその気持ちに気づかなくて・・・・・でも、気がついたらその想いは止まらないってとこを書きたかったんです。
 コンラッドの場合は、ずっと好きな気持ちを殺してて、思いがけず相手から告白された喜びと、ようやく自分の思いを告げられたときの喜び・・・みたいなのを書きたかった・・・。 あと、無理やり皆既日食ネタを取り入れてみた。えへへ(汗
難しい(泣

 駄文にお付き合いくださってありがとうございました^^

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