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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2009/07/08 (Wed)                  ショートストーリー第十四編 Cafe Blood Castle
ショートストーリー第十四編 Cafe Blood Castle

※今日も眞魔国は平和です(^^;)甘いコンユですv




 今日は、なぜかとてつもなくすごいことになってます。

 いつもの眞魔国メンバーの男性人が、皆ギャルソン姿で国民にせっせと紅茶やらエーフェ達の作るケーキやらを給仕している。

 血盟城の晩餐の間は、本日にわか喫茶店となり、部屋に溢れんばかりの国民を、なぜか王(俺だけど)とその臣下達が自ら給仕している。シャンデリアの吊るされたお城の喫茶店ってありえないし。

 事の発端は、紅い悪魔ことアニシナさんだ。(またかとか突っ込んだらいけない)女性の地位向上のためには、男性が給仕することが必要不可欠なのだとか。

 国王とその臣下自らが、国民にその姿を指し示すべきだと力説されて、誰も彼女には逆らえなかったというわけで・・・・・今に至ります、はい。今日一日だけっていうのが救いなんだけど。

 でも、お客さんの中には可愛い町娘もいるわけで・・・、ちょっと嬉しいこともあったりして。

 二人連れの、色白で小柄な可愛らしい女の子達が俺に目配せをしてすみませんと呼びかけてくる。いかんいかん、頬が緩んでしまう。
「ご注文は何になさいますか?」
「きゃあ、陛下だ。本物よ!」
 俺が注文を聞くと、彼女達が黄色い声を出して、俺をキラキラとした眼差しで見つめてくれる。俺、もしかして今人生で一番のもて期?!

 がしっ!!
 頭に拳が当たる。

「いて~っ、何するんだよ、ヴォルフラム!」
 
 綺麗な碧い目を三角に吊り上げて、俺を睨む彼。
「この浮気者!俺というものがありながら、町娘にまで手を出すのか?」

 俺たちの様子をはらはらと見つめる女の子達。この繰り返し、もう何度目だ。
 さっきから、俺が若い女の子に声を掛けるたびにヴォルフラムが自分の客を放ったらかしてこっちに来るんだよ。

 まったく、店が回転しないよ。おまけに、客への印象が悪いよ。客って言うか、国民だけど・・・。

 店が回転しないといえば、ギュンターだ。彼は、ことあるごとに俺の白シャツ、蝶ネクタイ、黒ベストのギャルソンルックを見ては鼻血を出すので裏方に回っている。

 グウェンダルも、接客には向かないらしく・・・いや分かる気がするけど・・・眉間に皺をよせたまま低い声でぼそりとオーダーを取るので、客がびびっている。おまけに彼は一国の摂政だし。摂政から睨まれたら、堪らないだろうな・・・ははは。笑い事じゃないけど。

 村田とヨザックは、接客の鏡みたいにてきぱきと笑顔で客を捌いている。お互いに、上手く客を捌けた時にハイタッチをしたりして仲よさげに店を切り盛りしている。よかった、店を回してくれる人が居たっ!


 そうそう、コンラッドは・・・・あれ?なんだサラとずっと仲よさげにしゃべってる。あの二人って、こんなに仲良かったっけ?意外。
 
 サラは、今日のこのおかしな催し物の噂を聞きつけて遥々小シマロンから来てくれた。
 俺の視線に気づいたのか、サラが立ち上がって俺に挨拶をしようとした折に彼の身体がバランスを崩した。滑らかな金髪がふわりと宙に舞うのと同時に、彼はコンラッドの腕の中に収まっていた。

 あれ?何だろう?

 コンラッドが、自分以外の誰かを庇うのを見てほろ苦い気持ちになった。

 でも、彼らから目が離せなかった。コンラッドがサラを気遣っているその優しい瞳や、サラを抱きしめる頼もしい彼の腕の、その力の篭り具合をまじまじと見つめてしまった。

「あの、陛下?すみません、オーダーいいですか?」
 可愛らしい町娘の声で、我に返った。
「あ、ごめんね、うん、どうぞっ。このプリンケーキなんかがお勧めだよ」
 

 どうしちゃたんだ、俺。目の前には、可愛い女の子がいるってのに、コンラッドがサラと仲良くしてることのほうに気を取られちゃうなんて、変・・・だよな?



 
 その後も、サラはコンラッドをずっと側に置いて、楽しそうに話していた。コンラッドは、いつものように終始柔らかい笑顔だった。
 
 サラは、なぜか彼にその華奢な腕を回して抱きついたりした。そんなときに、偶然サラと眼が合うと、意味深な瞳でにっこりと微笑まれた。
 俺は、彼らのことが気になって、正直、給仕どころではなかった。


 




 窓から、橙色の柔らかな夕日が差し込む。
 何とか、無事に血盟城でのにわか喫茶店が終わる頃、サラがしずしずと紅い絨毯を踏み鳴らして、俺の元へ挨拶に来た。

「今日は、とっても楽しい催し物だったね。ウェラー卿がとても気さくに話しかけてくれて、すごく居心地がよかったよ」
 にっこりと微笑まれるも、なぜか胸が痛い。

「そんなに、悲しい顔しないで。ユーリ、私の本命はウェラー卿じゃないから」
 そっと耳元に口を寄せて、小さな声でサラに囁かれる。

 あれ?俺、悲しい顔してた?確かにサラにコンラッドと仲良くしてたよって言われて胸が痛かったんだけど・・・・。それに、本命はウェラー卿じゃないからってどういう意味なんだろう?

「おいっ!サラレギー!いいかげん、ユーリから離れろ!」
 ヴォルフラムに、喚かれてそっと俺から離れるサラ。去り際に、彼の瞳がひどく何かを言いたげに揺らいだ気がした。

「それでは、今日はお招きいただきありがとうございました、陛下」
 恭しく礼をすると、サラは優雅に踵を返して去っていった。






「ユーリ、キャッチボールでもしませんか?」

 喫茶店も終わり、やれやれ一息つきたいなと思っていたらコンラッドからキャッチボールに誘われた。

 そのタイミングのよさに、俺は全身で頷いた。
 俺たちは、二人でギャルソンの服を着替えに王の間に戻る。

 広い王の間には、俺とコンラッドの二人だけ。

「ユーリ、まだオーダーしても良いですか?チョコレートケーキを一つ下さい」

 唐突な彼のお願いに、困惑する。えっと、オーダーってまださっきの喫茶店の名残か?まだ、ギャルソンの服着てるしな。
 コンラッド、おなか空いてるのかな?
「え・・と、かしこまりました!待って、今厨房に戻って探してくるから・・・・・っあ!!」

 突然、彼に背後から抱きしめられる。指先で甘く髪の毛を絡めとられる。
「綺麗な、チョコレート色の髪ですね・・・ユーリ」
 
 そっと俺の髪にキスをするコンラッド。
「髪に、まだ甘いケーキの匂いが残ってる・・・」

「コンラッド?」
 只ならぬ、彼の甘い雰囲気と声に信じられないくらい胸が高鳴る。

「だけど・・・すこし、ほろ苦い・・・かな。ねぇ、ユーリ。さっき、俺がサラといる時、俺のことばかり見てくれましたね」

 ええっ、ばれてた?なんか恥ずかしいよ。
「え、う、うん。なんか、すっごく気になったんだ」

 耳元で、彼の熱い吐息が漏れる。
「俺・・・自惚れてもいいですか?」

 背中に、彼の鼓動が伝わる。驚くことに、そこは俺と同じくらいの早さで脈打っている。

「俺のことが、気になったから・・・・サラに焼きもちを焼いてくれたって思ってもいい?」

「!」
 息をするのも忘れそうだった。
 俺が、分からなかった答えが見つかった気がしたから。



 そうだったんだ、俺。あんなに、二人のほうばっかり気にしてたのは、コンラッドと仲良くしてるサラに嫉妬してたんだ。コンラッドのことが気になるから・・・。




 俺・・・コンラッドのことが・・・・好き・・・だったんだ。




 初めて気づいた、自分の気持ちに胸が締め付けられそうになる。きっと今、彼が抱きしめていてくれなかったら、力なく床に座り込んでしまった。そのくらいの衝撃だった。

 緩やかに、腕の中で俺の向きを変えるコンラッド。

「可愛いユーリ・・・俺に、チョコレートケーキを下さい」

 鼓膜を震わす甘い声に、惚けたように彼の顔を見つめる。
 彼のことが、好きなんだと自覚した途端に、彼の全てが甘く思える。


 すごい・・・・これが恋って奴・・・なんだ。


 彼のキャラメル色の甘い髪がさらりと垂れる。
 閉じられた瞳の渕を彩る砂糖細工のように繊細な睫毛。
 フランボワーズのような、淡く色づいた唇。

「ん・・・・っ」
 コンラッドの優美な顔立ちに魅入っていたら、知らない間にキス・・・をしていた。




 それは、チョコレートケーキのように甘くて、ほろ苦い・・・・忘れられない初めてのキスだった。


 

 第十四編 =完了






あとがき★★

トップ絵をギャルソンにしたら、書きたくなったSSです。
何気に、サラがユーリに片思いしてます。SS第三編『歪んだ愛』でもサラのユーリへの片思いを書いてます。良かったら、読んで下さい。
 次男が、キザ過ぎないか心配。
 二人の初チュー話になりました。

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