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2009.4.22設置 『今日からマ王』メインです。 
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2011/02/03 (Thu)                  Harlem the night★


―― ん……なんか、すっげー甘ったるい匂い……。

 嗅覚が強烈に刺激されて、瞼がピクリと痙攣する。
 目を開く前に、パシャン、と小気味のいい水音が聞こえた。

「おや、お気づきになりましたか? ユーリ様」

「は、はいっ?! コンラッド? なんか額にすっげー飾りついてんじゃん、近隣諸国のコスプレか? 踊り子さんのアクセサリーみたい。それに、何その呼び方……」

 目の前のコンラッドは、額に見慣れない装飾品を付けていた。二連になった碧いビーズの飾りで、小さな銀のコインも幾つかぶら下がっていた。

「それよりっ、ここ風呂じゃん?! やけに浅い浴槽だな。うわ、よく見たらここ血盟城の風呂じゃねーし! なんかアラビア風じゃん?!」

 コンラッドから視線を外して、辺りを見渡した。そこには、息を呑むくらいの繊細で複雑な幾何学模様がびっしりとあった。風呂を囲む白い壁、天井、入り口の何連にも連なったアーチ状の柱の全てに。部屋の四隅には、焦げ茶色の壷が置かれ、もくもくと煙を噴出している。咽そうに甘い香りの正体は、どうやらその煙らしい。

「いやいや、違うって!! そんなことより、コンラッド。どうして、風呂で裸で、おれの上に跨ってんの?」

「風呂だから裸なのでしょう? 面白いことを仰いますね」
 
 濡れた前髪の隙間から、甘く瞳を細めると、コンラッドは優しく微笑んだ。

「いや、そうだけど……いや、突っ込みどころは、そこじゃなくて、何で?! 何でおれに跨ってんの?!」

「おや、王様は、とてもウブで可愛らしい方だったのですね」

「はぁ?! 質問の答えになってねぇし……しかも、王様って何だよ?」

「ユーリ様、……相手が私ではご不満ですか?」 

 水気を帯びたコンラッドの長い指先が、じれったくおれの唇をなぞった。
 薄茶の瞳は、今まで見たこともないような甘く痺れるような色を湛えていて、ゾクリとした。

「……あなたに寵愛されたいな」

 耳元に甘く吹きかけられる吐息と美声に、一瞬思考が止まった。けれど、すぐにその妙な台詞で意識が急浮上した。

「はっ、ちょっと待った! 見えてきた、これは絶対アニシナさんのピンクの枕だろ?! おれは今、夢を見てて、これは夢なんだよなっ?! じゃなきゃ、コンラッドが大奥のドラマみたいなこというわけねーし!!」

「ユーリ様、何を仰っているのですか。私は、今宵ユーリ様の夜伽をするようにと命じられたのですが」

「よ、夜伽……ってあのえっとそれは、『1 主君のため、真面目に夜寝ないで付き添うこと。2 女が男の意に従って、不真面目に夜の共寝をすること。』だとしたら、正解は1だよな?! な、な?! コンラッドは男だし」

 先ほどから自分に向けられる甘い眼差しに、気分が落ち着かない。そんな気持ちを振り切るためにも、必死に然るべき選択肢を主張する。けれど、コンラッドは甘く微笑むだけだ。

「面白いお方だ。クイズまで出して下さるのですか。それなら、お答えしますね……」

「えっ……ぁっ……」

 パシャン、と小さな水音を立てて、コンラッドがおれを浅い浴槽に押し倒した。大きな手でおれの後頭部を優しく支え、顔が湯に浸からないように配慮してくれた。けれど、お互い何も纏っていないために、体の中心部が触れ合わさってしまう。
 繊細な場所の接触に、いくら相手がコンラッドとはいえ、気まずくて堪らない。それなのに、おれを見下ろしてくるコンラッドは、相変わらず甘く優しく微笑んでくる。
 ダークブラウンの髪は、濡れそぼり、毛先から水が滴る。間近に迫る整った顔は、水気を帯びて気後れするほど色気がある。異国情緒溢れた額の宝飾が、ジャラリと甘い音を立てた。

「あなたが、私を拒めば、ただあなたの身の回りのお世話をさせていただきます。あくまでも、あなたにお仕えしている身分ですから。けれど――」

「……っ、ぁっ……」

 唐突に甘く耳朶を噛みつかれ、何とも甘えたような声が漏れてしまう。気恥ずかしくて、体が熱くなる。

「キス……なら、許可はいらないですか?」

 いつのまにか、真上からおれを覗き込む熱っぽい瞳と目が合った。

「はっ、はい?!」

 一拍遅れて、裏返った声で返事した。
 戸惑う間にも、どんどん端整な顔が近づいてくる。淡い茶色の瞳には、長い睫毛が繊細に縁取られている。その綺麗なフォルムに、視線を奪われていたときだった。

「…んぅ…っ?!」

 唇に、何かが触れた。遠くに、水音が甘く聴こえたときにやっと気づいた。暖かくて、やわらかいそれは、コンラッドの唇だと。

「ちょ…んぅ…コンラ…いきなり、キスなんて――…ンんっ…!!」

 抵抗する隙も与えないほどに、唇は甘く塞がれてしまった。息継ぎをしようと、唇を慌てて開くと、口内に湿った舌が侵入してきた。柔らかい彼の舌が、性急に自分の舌に絡んでくる。味わったことのない感触に、ゾクリと背中が痺れた。そのとき、空いている彼の手が、湯に浸かるおれの手にそっと絡んできた。それと同時に、性急だった舌の動きが、にわかに甘く優しいものに変わった。触れるか触れないかくらいの柔らかな動きで、優しく舌をなぞられていく。

「んぅ…ぁ、だ、め…こんな、…ンっ…!」

 全然、力が出なかった。ふにゃふにゃに体が弛緩して、ただコンラッドにされるがままになってしまう。頭で考えることが出来なくなり、ただ、彼から与えられる感触だけに意識が昂ぶる。その甘くて優しい舌使いに、身体が甘く疼き始めた。

 身体の中心が、熱くてたまらない。コンラッドと重なるように触れ合っているから、どうしてもそこが反応するのが恥ずかしい。そうは思っても、コンラッドはキスをやめてくれなくて、次第におれの下半身は頭をもたげるように勃ってしまった。
 その事実は、彼に筒抜けに違いない。それでも、おれは悪あがきするように、身体を捩じらせた。
 その拍子に、唇がようやく解放された。熱に浮かされたように、コンラッドを見上げると、相変わらず甘く微笑まれた。浴室に充満する、バニラのような甘い香りが、胸を苦しくする。

「ここ、勃起してますよ? キスだけでこんなにするなんて、可愛いのに、いやらしい方だ」

 甘い顔に似合わず、卑猥な台詞に羞恥心がかき乱される。
 ドクン……と、心臓が脈打つ音が、頭にうるさく響く。
 何も言い返せないおれに、追い討ちをかけるようにコンラッドが囁いた。

「ユーリ様、本当に、ただ身の回りの世話をするだけで、よろしいのですか?」

 腰に響く美声は、誘うようにそう言った。

「コンラッド…、すごくて、もう、わかん、ね……でも、駄目だと思う……コンラッドとは、こんなことしちゃ、いけないんだと思う…のに…っぁ」

 熱に浮かされて、思考が纏まらない。コンラッドの手の中にあるそれは、甘く頼りなく震えてしまう。まるで、貪欲に快楽を求めるように。

「何が分からないのですか? ここ、私の手の中でこんなにヒクついていらっしゃいますよ? ほら、素直に認めてください」

「ば、ばかっ……、な、なんて台詞―― んぁっ…… !!」

 コンラッドの節だった手は、硬くなったおれのを包んだまま、もったいぶるように上下に動いた。

「ま、だ…返事、してないのに……、動かすな…ぅ、ぁ……っ…ン!!」

 彼の暖かい手は、優しく撫でるように触れてくる。甘くてじれったい手つきは、おれの中の熱く滾る欲望を、いっそう激しく掻き立てる。目覚めてはいけない何かが、すぐそこまで迫る思いに、戦慄する。けれど、一方で、どうしてももっと早くそこにたどり着きたくて、焦がれる気持ちも揺れ動く。

「ほら、もうそんな顔してる。すごくそそられますよ。ねぇ、ちゃんと、どうしてほしいか言ってください? ユーリ様」

「んンぁぁっ…!!」

 唐突に、熱いそれを強めに握られて、暖かい手のひらで何度も擦り立てられた。
 目を瞑る瞼の裏に、光が走った。何かのスイッチを押してしまったみたいだ。底なし沼に嵌ったように、身体がゆっくりと欲望の中に埋もれ始めた。
 瞳から、涙が溢れているらしい。甘い顔でおれを見つめてくるコンラッドが、わずかに霞んで見えたから。

「ほら、主君たるものが、いい声で啼いていないで。しっかり命令なさってくださいね、どうしてほしいか」

 穏やかな美声で、少し意地悪に囁かれるだけで、ゾクリと震えがした。
 断続的に与えられる甘い責めに、耐え切れずに先からは卑猥な液体が滴り始めた。コンラッドの手を、自分の体液で汚していることに、背徳感は否応にも煽られる。
 どんどん呼吸は乱れ、息は浅く、荒くなっていく。鼻腔に広がる蕩けそうに甘いバニラの香りに、意識が朦朧としていく。
 次第に焦点の定まらなくなった瞳で、焦がれるようにコンラッドを見つめた。

「あ、ぅ…コンラ、ド……、気持ちよく、なろ……」

 そんないかがわしい命令なんて、到底できるわけない。けれど、無意識に選んだ言葉は、よけいに気恥ずかしい。顔から火か出るというのは、こういうときのことを言うんだと身をもって体験した。

「……よかった」

 コンラッドは、少し目を瞠ったあとに、ひどく甘くて切ない顔をした。
 そのまま耳元まで唇を寄せて、甘い声で囁いた。

「よく頑張られましたね。ご褒美です」

「ぁっ…?! な、何?!ん、ぁ…っは…ンん!!」

 耳元で甘い声が聞こえたと思ったら、そのままクチュ、と舌を耳に差し込まれた。くすぐったいような甘い息遣いと、ねっとりと湿った舌の感触に、ビクン、と身体が痙攣する。射精感の昂ぶったそれは、手のひらに閉じ込められたまま、激しくきつく擦り下ろされる。

「だめ…ンぁ…っ…そんな、弄られたら…もた、ない…ぁ、うぁぁっ……ん?!」

 屹立したものを、激しく責め立てられて、今すぐにでも出したい欲求が襲った。けれど、意外にもコンラッドはそこから手を離すと、おれを横抱きにした。そのまま、風呂の縁に移動すると、おれを上半身だけうつ伏せにして、寝そべらせた。そのせいで、おれは無防備に臀部まで晒してしまう。
 すぐに、おれの上に折り重なるように、熱い素肌が密着してきた。

「もっと、気持ちよくして差し上げます。両手が使えるようになりましたから」

「…っ、ぁ……っ」

 甘い吐息が、耳朶を擽った。びくっと、肩が震えたとき、コンラッドの長い指先で乳首を抓られた。

「ここも、好きなんですね。そんなにビクビクして……素敵な反応ですよ、ユーリ様」

「……っ、ぁ、コンラッド…、その、呼び方やめろ、よな……ユーリ、って…ぁ…呼んで?」

  コンラッドの動きが止まった。それは、一瞬の静止なのに、なぜか胸が押しつぶされそうなほど甘さと熱を含んでいた。その雰囲気に呑み込まれていると、視界がぐらついた。気がつくと、おれはコンラッドを見上げる体制になっていた。

「ユーリ……明日からは俺だけ相手して」

「あ、相手って…っぁ、くすぐった…や、やめっ…ンン…ぅ」

 コンラッドは、おれの両腕を持ち上げると、脇を舐めた。恥ずかしさとくすぐったさが綯い交ぜになって、頬がカッと熱くなる。抵抗するものの、その声はとても弱弱しい。
 コンラッドの舌は、滑らかに皮膚の上を移動して、胸の尖りまでたどり着く。舌先を尖らせて、そこを突かれたり、甘く唇に含んだり、吸いついたり……を繰り返される。丁寧なのに情熱的な責めに、甘く身体が戦慄(わなな)いた。
 滲んだ視界の縁に、熱っぽい眼差しのコンラッドが見えた。額の銀貨だけが、悪戯におれの熱い皮膚を冷たく擽る。

 それなのに、わざとなんだろうか。コンラッドは、おれを仰向けにさせてから、一度もそこに触れてくれない。甘く疼くそれは、どんどん熱を持っていき、我慢できなくなる。

「こ、コンラッド…ぁ、も、もう…さ、触って……っ」
 
 自分の声が、卑猥に浴室に響く。
 けれど、甘くて必死な懇願は、コンラッドの穏やかな笑い声に流されてしまう。

「もう、触っているでしょう?」

「…ぁっ…!」 

 悪戯な指先に、敏感に立ち上がった乳首をきつく摘まれた。

「ここだけじゃ、満足できないのですか?」
 
 揶揄する声さえ甘くて、腰に重く響く。困った人だ、と微笑むとコンラッドはおれの手を取り、その甲に柔らかい口付けを落とす。
 そのまま手首、腕、鎖骨…と順番に唇で皮膚を辿られる。鎖骨から、コンラッドの舌が、再びゆっくりと皮膚を擽るように下りてくる。臍の辺りまでたどり着くと、焦らすようにその周りを舐めてくる。本来なら、くすぐったいはずのその場所は、焦らされ尽くされて、脳髄が痺れそうなほど感じてしまう。

「あ…もう、おねがい…ぁぁ…さ、触って…擦って……っ」

 もうどうかしてしまいそうなほど、体中が熱くて、たまらない。我慢できなくて、自分の手で屹立したそれを握ってしまった。けれど、すぐにその手はコンラッドに絡め取られてしまう。

「いけませんよ、ユーリ。王が自慰をするなんて……いやらしすぎますよ」

 コンラッドは、少し意地悪に微笑んでくる。けれど、その薄茶の瞳も甘く澄んでいて、惚けたように見つめてしまう。そのほんの一瞬だった。

「ああっ…!!ン、そ、そんなことしちゃ、だ、め…ぁ…!!」

 浴槽が浅いせいで、硬く立ち上がったそれは、湯の中からいやらしく顔を覗かせていた。あろうことか、それをコンラッドに咥えられた。

「ン…っ、どう、して? 擦ってほしいのでしょう? 私の唇で、たっぷり扱いて差し上げます」

「な、そ、そんなっ、う、ぁ、あぁぁっ…!!」

 ただでさえ、焦らされすぎて、敏感になっていたそれを、甘く激しく唇で覆われ、時にきつく吸われてしまう。
 水の揺れる音と、コンラッドの唇から漏れる卑猥な音が、浴室に響いて鼓膜に纏わり着いてくる。思わず空気を吸い込むと、甘いバニラの香りが肺いっぱいに広がって……。
 触覚も、聴覚も、嗅覚も、全部気持ちよくて、甘くて、気がふれそうになる。

「ぁ、だ、めっ、そんなに吸わないで…ぁ、も、だ、だめ…、で、出ちゃう、から……っ!!」


******


 草木も眠る丑三つ時、血盟城の台所に、妖しい影がひとつあった。

「なんちゃって、きゃー、いやーん、陛下ったら、エロ可愛いですー」

 それは、翌日の朝食の下準備をしているメイドであった。
 けれど、彼女の手には、お玉ではなく筆が握られていて、台所のテーブルの上にはノートが広げられていた。

「陛下がどこかの国の王になって、ハーレムを囲うとしたら……やっぱり、ウェラー卿にご奉仕されててほしいもの。複数責めもいいなぁと思ったんだけど、やっぱり、二人でいちゃついてほしいしね。陛下トトは、ウェラー卿の一点買いだしね。うん、よし。今日はここまで書いたし、そろそろ寝ましょ」

 ノートを抱えて、浮き足立つメイドを、廊下から見つめる男がいた。

「くっ、ギュンユにしなさい……」

 ぼそり、とつぶやくと灰色の髪の男は、気配を消して去った。 

 

 

 

★あとがき★

わぁ、すごいパラレルだ。コンラッドが丁寧にご奉仕している感じが伝われば嬉しいです。そんでもって、キャラ崩壊してますよね。オイ。
内容がなくてすみません。まぁ、毎度のことですが(汗)
アラブのハーレム風な感じが出ていたら嬉しいです。
最後まで書ききれなくてすみません。苦情があれば受け付けます^^;

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