2009.4.22設置
『今日からマ王』メインです。
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黒執事なパロディー 俺の可愛いご主人様 前編 R15注意
※コンユな黒執事パロです。ウェブ拍手の黒執事なコンユパロ(←カテゴリー内過去のウェブ拍手文に置いてあります)よりも長めの読みきりストーリー版です。黒っぽいコンラッドです(汗 いろいろ捏造しすぎですみません。必死に謝っておきます(汗
後編からR18予定なので注意です。
私は、大英帝国で上流の資産階級である日系貴族の渋谷家にて執事をしていた。渋谷家のお屋敷は、資産階級の象徴ともいえる荘厳で瀟洒な城だった。
渋谷家は、日系にも関わらずその当主勝馬氏とご子息でいらっしゃる長兄の勝利氏の手腕によって金融界を牛耳る一銀行家にまで成長していた。いわゆるヌーボ・リーシ ュ(新興成金)だった。
そして何を隠そう渋谷家には、もう一人の愛らしいご子息がいらっしゃる。パブリックスクールに通っていらっしゃる、俺の可愛いご主人様だ。
私は今朝も、早くから出社なさる旦那様、勝利様のお世話をし、無事に玄関先で深々と一礼をして見届ける。彼らは、そこからお抱えの運転手に出迎えられる。
私は、再び台所へ戻り、奥様のための朝食作りに取り掛かる。美容に欠かせない新鮮なフルーツは、毎朝王室ご用達のフルーツショップから取り寄せている。
奥様はテラスでのんびりと朝食を召し上がる。その後、奥様は最近城内に造園された日本庭園を散策される。その段になって、愛らしい主人がやっとお目覚めになる。
俺は、顔にこそ出さないが、逸る気持ちを胸に、台所にて彼の朝食作りに勤しむ。本来は、旦那様のご子息の分はメイド達に作らせるのだが、俺が率先して自ら作る。メイドたちが不審に思わないように、先手は打ってある。彼は食の好みが煩いから、俺が彼の食事を作るということにしてある。
彼は、子供らしい食べ物をお好みになるので、卵をふんだんに使った料理や、バターや砂糖のたっぷり入ったマフィンなどを用意する。渋みの少ないセイロンティのキャンディ紅茶や優しい香ばしさのあるルフナ紅茶を出すことが多い。もしくは、ミルクをたっぷり入れたロイヤルミルクティーだ。
この屋敷には、執事の補佐役なるフットマンのグリエ・ヨザックもいるが、ことに愛らしい坊ちゃんの世話に関しては、一切俺が面倒を見ている。時折彼から、坊ちゃんの世話をすることを羨ましがられるが、屋敷の全従者の統括を任されている執事としての私は、時にその権利を濫用している。
坊ちゃんを独占するために。
こんな邪な想いを抱いているとは、誰も気づいていない訳だが。
今朝も、寝ぼけ眼の愛らしい主人は、俺の作る朝食を美味しそうに食べる。口端についた、卵の欠片をそっとナプキンで拭ってやる。
ふいに、真っ赤になって俺を睨む、主人。
「だからぁ、コンラッド!俺は、もう子供じゃないんだから、そんなことしなくていい!」
そんなに剥きになられると、余計に苛めたくなってしまうのが、私の悪い癖です。
敢えて主人が、怒る言葉を口にする。
「すみません、坊ちゃん。それは、命令ですか?」
頬を膨らませて、そっぽを向いてしまう主人。
「坊ちゃんって言うな、コンラッド。名前で呼べって言ってるだろ、二人だけのときは。それに、命令ですか、とか言うなよな。俺はあんたに命令とかそういうのする気は無いんだから。ただの、忠告!だからっ」
本当に、お心の優しい方ですね。貴方は。
おまけに、どれだけ俺の気持ちを翻弄する気なんですか。
二人だけのときは、名前で呼べ・・・だなんて、それは、貴方が俺と個人的な関係を持ちたいということですか。思わず、自分勝手な解釈に受け取ってしまいそうになります。
本当に、隙だらけの可愛い主人だ。もう少し、言葉を選んで下さいね。
俺は、白い手袋を嵌めたまま優しく少年の頭を撫でる。
「すみません、ユーリ」
もちろん、こんなことは二人きりの時にしかしないが。一執事が、主人の頭を撫でて、名前を呼び捨てにするなど不敬にも程がある。まして、周囲に人が居る場合、彼らへの主人の評価を下げることになる。それだけは、決して避けなくてはならない。
それにしても、彼は俺が頭を撫でる度に気持ちよさそうに目を細める。どうやら、彼は私にすごく懐いてしまっているのだ。それも、その筈で彼が赤ん坊の頃から、私は彼の世話をしているからだ。
そもそも、なぜ私がこの屋敷で執事をしているかというと、今から遡る事16年前。
俺は、また職を失っていた。
母親は物心がつく頃にはいなかったので、どんな人なのかは全く知らない。労働者階級の父を持つ俺は、幼少の頃、その日の生活費を稼ぐために、父と二人で音楽屋をしていた。
各地の歓楽街を放浪し、ヴァイオリンを片手に路地で演奏をした。そこで、楽器ケースに放り込まれる小銭を頼りに生活をしていた。
傍から見れば、底辺の苦しい生活に見えたかもしれない。けれど、父は俺に金が無いながらも、百貨辞典を与え俺に世の中のありとあらゆる知識を教えてくれた。おかげで、俺は学校に通わずとも、文字を読むことも、書くこともでき、生きていくのに恥じないだけの教養を身につけられた。何よりも、父からその無条件な愛を教えられた。
俺は、父のことを今でも尊敬している。
ただ、彼はもうこの世にはいないけれど。彼は、俺が十六の頃には、顔中に深い皺の刻まれた翁になっていた。その頃から、薄々自分がおかしいと感じ始めた。
俺の身体は人とは違うと、気がつき始めた。俺の成長の緩やかさに比べ、周りの人たちの老化は著しいからだ。
けれど、結局俺は自分が何者なのか、どうしてこんな事態になっているのかも、わからないままに、成人した。成人したというか、ようやく青年の姿にになったというほうが正しいが。
幸い、俺は知識と教養があり、楽器も弾けることから執事として来てほしいという依頼が、貴族達から殺到した。
けれど、20年くらいすると、皆俺を解雇してしまう。
原因は、俺が人と違うからだ。俺が・・・・・・老けないからだ。
初めは、皆俺のことをみて、ちっとも老けなくて羨ましいなどと、軽口を叩いている。けれど、流石に20年経っても全く見た目の変わらない俺を見て、薄気味悪くなるらしい。その頃に、大抵俺は解雇される。
20年勤め上げた5回目のお屋敷から解雇をされた暑い初夏の日だった。
屋敷を追われ、石畳の上を走る馬車の中から、一人の妊婦が産気づいて苦しんでいるのが見えた。
俺は、すぐに馬車を止めてもらい、彼女をホスピタルへと連れて行った。道すがら、彼女は俺に赤ん坊の名前をまだ決めていないと言った。
そこで、俺は『7月生まれは夏を乗り切って強い子になれるから祝福される。俺の父の郷里では7月はユーリというんです』と小話をした。そうしたら、彼女はえらくユーリという名を気に入ってくれた。
無事に出産した後、彼女は俺にお礼を言い、執事として家で働いてくれないかと頼んできた。
俺は、二つ返事で承諾した。その彼女が、今のお屋敷の奥様というわけだ。そして、そのときの赤ん坊が、俺の愛らしい坊ちゃんというわけだ。
そういうわけで、俺は坊ちゃんのことを彼がまだ母親のお腹に居るときから知っている。
今のようなしなやかな少年になるまでの長い間、乳児期、幼少期から児童期まで全部お世話してきたので、俺の坊ちゃんへの愛情はひとしおという訳だ。
そして、彼も仕事で忙しくて構ってもらえなかった旦那様に取って代わり、俺のことを本当の父親のように慕ってくれている部分がある。
彼のことは、本当に自分の息子のように愛らしいと思っていた。けれど、最近その意味合いが著しく変化した自分に戸惑う。
彼のつぶらな漆黒の瞳、濡れたように黒い髪、小さな愛らしい唇。しなやかで華奢な身体、けれど健康的な小麦色の肌。そして、何よりも正義感に溢れる、身分で人を見たりしない真っ直ぐで優しい心・・・・に、気がついたら虜になっていた。
けれど、俺と彼は著しく階級が違う。埋まらない身分の差がある。どんなに、恋焦がれようと彼と結ばれることはない。
だから、せめて執事として貴方のお世話を・・・・生涯させてくださいね。貴方に一生仕えさせて下さい。
俺は、ユーリの着替えを手伝う。食卓椅子に腰掛けたままの彼の背後に立つ。そのまま、彼の身体の前に腕を回し、夜間着のシャツの釦に手をかける。するすると、器用に釦を外していく。
「さぁ、坊ちゃん。そろそろ着替えないとパブリックスクールに遅れてしまいますよ」
「だから、坊ちゃん言うな!おまけに着替えくらいもう自分で出来るよ!」
上目遣いに俺を睨む反抗的な貴方。そんな可愛らしい顔で言っても逆効果ですよ・・・いいかげん、早く気づいてください。
「すみません、ユーリ」
謝りながらも、俺はどんどん彼の服を脱がせていく。シャツの釦を全て外し、素早く上質なシルクのシャツを奪い去る。
すっかり上半身を外気に晒した彼は、肌寒さにふるっと身体を震わせる。すかさずに、俺は彼を背後から抱きしめる。俺の黒の燕尾服越しに、暖かい彼の体温を感じる。彼の髪から甘い香りが仄かに香る。昨夜のシャンプーの残り香でしょうか。 貴方は本当に全部が甘いですね。
「コンラッドっ?」
俺の行動の真意を尋ねたそうなユーリに、言い訳をする。彼の耳元に甘く息を吹きかけながら囁く。
「ほら、貴方が寒そうにしていましたから、暖めて差し上げました。一執事ごときに抱きしめられるのは不快ですか、坊ちゃん」
こんな台詞を吐けば、貴方は嫌とは言えないことを知っているのに、意地悪をして御免ね、ユーリ。
案の定、貴方はただ俺の胸の中にじっと身体を預ける。
「そ、そんな、全然不快じゃないよ・・・コンラッド・・・ただ、なんていうか照れくさいっていうか・・・・えっと・・・その・・・」
頬を真っ赤に染めて、俯く貴方。そんな愛らしい反応をしたら、思わず俺に気があるのかと錯覚しそうになる。
そんな彼に、嗜虐心が煽られた。背後から、彼を抱きしめたまま、にわかに立ち上がらせると夜間着のズボンに手を掛けてそのまま下に摺り降ろす。
俺は、主人の服を剥いで、あっさりと下着姿にしてしまう。
彼は下着姿で頼りなく俺に身を預ける。
「ちょ・・・とっ・・・もう、着替えるのは自分でやるっていってるのにっ・・・」
恥ずかしさに、目に涙を滲ませて、上半身を捻り俺を見上げるユーリ。
気がつくと俺は、片手で彼の腰をきつく抱き寄せながら、彼の顎を強引に掴み上げていた。
「コンラッド?!」
酷く驚いて掠れたユーリの声に我に返った。
!?
俺は、今何をしようとしていた?!
俺の大事な坊ちゃんに。ユーリに。
彼に衝動的に手を出そうとしていた自分にひどく焦る。
よかった・・・・。手を出してしまう前に我に返って。流石に、キスをしてしまってからでは言い訳するのも難しい。俺が、すっかり貴方に夢中なのだと、悟られてしまう所だった。
危なかった。一体、俺は何をやっているんだ。
発作的に彼にキスをしようとした自分に苛立たしい気持ちになる。
この気持ちは、墓場まで持っていくと頑なに誓った筈なのに・・・
この身分違いの恋を表に出してはいけないのに・・・。
執事という身分を盾に、彼に抱きつくことくらいで満足している筈だったのに。それなのに・・・・。
俺の欲望は、もう限界まで溢れてきてしまったのか?
「いいえ・・・。何でもありません。私はあくまで執事ですから。貴方の髪に糸くずがが付いていたので」
彼の髪の毛から、ある筈の無い糸くずを摘む振りをして、優雅な笑顔で取り繕ってみせる。
どうか、貴方にこの気持ちが見透かされませんように。
惚けたような、表情の貴方に出来る限りの優しい微笑みを見せる。
「どうか、執事としていつまでも貴方のお側に仕えさせて下さい」
すっかり、無防備で無垢な笑顔で微笑む貴方。
「うん!俺もずっとコンラッドに側に居て欲しい。だって、あんたって俺が小さい時からずっと・・・辛い時いつも側に居てくれたから・・・。いつでも、優しく抱きしめてくれるから。ずっと・・・俺の側にいて・・・・」
甘えたような鼻に掛かった声で、俺に抱きつく貴方。
俺は、その折れそうな華奢な腰をきつく抱き寄せてキスしてしまいたい衝動を必死に抑え付ける。
ただただ、優しくそっと慈愛に満ちた瞳で微笑み、頭を撫でる。
父親のような執事を完璧に演じる。
「はい、愛らしいご主人様、仰せのままに」
前編=完了
あとがき★★★
長くなりそうなので、前編と後編に分けることにしました。後編から、R18モードに入る予定です・・・(汗
※コンユな黒執事パロです。ウェブ拍手の黒執事なコンユパロ(←カテゴリー内過去のウェブ拍手文に置いてあります)よりも長めの読みきりストーリー版です。黒っぽいコンラッドです(汗 いろいろ捏造しすぎですみません。必死に謝っておきます(汗
後編からR18予定なので注意です。
私は、大英帝国で上流の資産階級である日系貴族の渋谷家にて執事をしていた。渋谷家のお屋敷は、資産階級の象徴ともいえる荘厳で瀟洒な城だった。
渋谷家は、日系にも関わらずその当主勝馬氏とご子息でいらっしゃる長兄の勝利氏の手腕によって金融界を牛耳る一銀行家にまで成長していた。いわゆるヌーボ・リーシ
そして何を隠そう渋谷家には、もう一人の愛らしいご子息がいらっしゃる。パブリックスクールに通っていらっしゃる、俺の可愛いご主人様だ。
私は今朝も、早くから出社なさる旦那様、勝利様のお世話をし、無事に玄関先で深々と一礼をして見届ける。彼らは、そこからお抱えの運転手に出迎えられる。
私は、再び台所へ戻り、奥様のための朝食作りに取り掛かる。美容に欠かせない新鮮なフルーツは、毎朝王室ご用達のフルーツショップから取り寄せている。
奥様はテラスでのんびりと朝食を召し上がる。その後、奥様は最近城内に造園された日本庭園を散策される。その段になって、愛らしい主人がやっとお目覚めになる。
俺は、顔にこそ出さないが、逸る気持ちを胸に、台所にて彼の朝食作りに勤しむ。本来は、旦那様のご子息の分はメイド達に作らせるのだが、俺が率先して自ら作る。メイドたちが不審に思わないように、先手は打ってある。彼は食の好みが煩いから、俺が彼の食事を作るということにしてある。
彼は、子供らしい食べ物をお好みになるので、卵をふんだんに使った料理や、バターや砂糖のたっぷり入ったマフィンなどを用意する。渋みの少ないセイロンティのキャンディ紅茶や優しい香ばしさのあるルフナ紅茶を出すことが多い。もしくは、ミルクをたっぷり入れたロイヤルミルクティーだ。
この屋敷には、執事の補佐役なるフットマンのグリエ・ヨザックもいるが、ことに愛らしい坊ちゃんの世話に関しては、一切俺が面倒を見ている。時折彼から、坊ちゃんの世話をすることを羨ましがられるが、屋敷の全従者の統括を任されている執事としての私は、時にその権利を濫用している。
坊ちゃんを独占するために。
こんな邪な想いを抱いているとは、誰も気づいていない訳だが。
今朝も、寝ぼけ眼の愛らしい主人は、俺の作る朝食を美味しそうに食べる。口端についた、卵の欠片をそっとナプキンで拭ってやる。
ふいに、真っ赤になって俺を睨む、主人。
「だからぁ、コンラッド!俺は、もう子供じゃないんだから、そんなことしなくていい!」
そんなに剥きになられると、余計に苛めたくなってしまうのが、私の悪い癖です。
敢えて主人が、怒る言葉を口にする。
「すみません、坊ちゃん。それは、命令ですか?」
頬を膨らませて、そっぽを向いてしまう主人。
「坊ちゃんって言うな、コンラッド。名前で呼べって言ってるだろ、二人だけのときは。それに、命令ですか、とか言うなよな。俺はあんたに命令とかそういうのする気は無いんだから。ただの、忠告!だからっ」
本当に、お心の優しい方ですね。貴方は。
おまけに、どれだけ俺の気持ちを翻弄する気なんですか。
二人だけのときは、名前で呼べ・・・だなんて、それは、貴方が俺と個人的な関係を持ちたいということですか。思わず、自分勝手な解釈に受け取ってしまいそうになります。
本当に、隙だらけの可愛い主人だ。もう少し、言葉を選んで下さいね。
俺は、白い手袋を嵌めたまま優しく少年の頭を撫でる。
「すみません、ユーリ」
もちろん、こんなことは二人きりの時にしかしないが。一執事が、主人の頭を撫でて、名前を呼び捨てにするなど不敬にも程がある。まして、周囲に人が居る場合、彼らへの主人の評価を下げることになる。それだけは、決して避けなくてはならない。
それにしても、彼は俺が頭を撫でる度に気持ちよさそうに目を細める。どうやら、彼は私にすごく懐いてしまっているのだ。それも、その筈で彼が赤ん坊の頃から、私は彼の世話をしているからだ。
そもそも、なぜ私がこの屋敷で執事をしているかというと、今から遡る事16年前。
俺は、また職を失っていた。
母親は物心がつく頃にはいなかったので、どんな人なのかは全く知らない。労働者階級の父を持つ俺は、幼少の頃、その日の生活費を稼ぐために、父と二人で音楽屋をしていた。
各地の歓楽街を放浪し、ヴァイオリンを片手に路地で演奏をした。そこで、楽器ケースに放り込まれる小銭を頼りに生活をしていた。
傍から見れば、底辺の苦しい生活に見えたかもしれない。けれど、父は俺に金が無いながらも、百貨辞典を与え俺に世の中のありとあらゆる知識を教えてくれた。おかげで、俺は学校に通わずとも、文字を読むことも、書くこともでき、生きていくのに恥じないだけの教養を身につけられた。何よりも、父からその無条件な愛を教えられた。
俺は、父のことを今でも尊敬している。
ただ、彼はもうこの世にはいないけれど。彼は、俺が十六の頃には、顔中に深い皺の刻まれた翁になっていた。その頃から、薄々自分がおかしいと感じ始めた。
俺の身体は人とは違うと、気がつき始めた。俺の成長の緩やかさに比べ、周りの人たちの老化は著しいからだ。
けれど、結局俺は自分が何者なのか、どうしてこんな事態になっているのかも、わからないままに、成人した。成人したというか、ようやく青年の姿にになったというほうが正しいが。
幸い、俺は知識と教養があり、楽器も弾けることから執事として来てほしいという依頼が、貴族達から殺到した。
けれど、20年くらいすると、皆俺を解雇してしまう。
原因は、俺が人と違うからだ。俺が・・・・・・老けないからだ。
初めは、皆俺のことをみて、ちっとも老けなくて羨ましいなどと、軽口を叩いている。けれど、流石に20年経っても全く見た目の変わらない俺を見て、薄気味悪くなるらしい。その頃に、大抵俺は解雇される。
20年勤め上げた5回目のお屋敷から解雇をされた暑い初夏の日だった。
屋敷を追われ、石畳の上を走る馬車の中から、一人の妊婦が産気づいて苦しんでいるのが見えた。
俺は、すぐに馬車を止めてもらい、彼女をホスピタルへと連れて行った。道すがら、彼女は俺に赤ん坊の名前をまだ決めていないと言った。
そこで、俺は『7月生まれは夏を乗り切って強い子になれるから祝福される。俺の父の郷里では7月はユーリというんです』と小話をした。そうしたら、彼女はえらくユーリという名を気に入ってくれた。
無事に出産した後、彼女は俺にお礼を言い、執事として家で働いてくれないかと頼んできた。
俺は、二つ返事で承諾した。その彼女が、今のお屋敷の奥様というわけだ。そして、そのときの赤ん坊が、俺の愛らしい坊ちゃんというわけだ。
そういうわけで、俺は坊ちゃんのことを彼がまだ母親のお腹に居るときから知っている。
今のようなしなやかな少年になるまでの長い間、乳児期、幼少期から児童期まで全部お世話してきたので、俺の坊ちゃんへの愛情はひとしおという訳だ。
そして、彼も仕事で忙しくて構ってもらえなかった旦那様に取って代わり、俺のことを本当の父親のように慕ってくれている部分がある。
彼のことは、本当に自分の息子のように愛らしいと思っていた。けれど、最近その意味合いが著しく変化した自分に戸惑う。
彼のつぶらな漆黒の瞳、濡れたように黒い髪、小さな愛らしい唇。しなやかで華奢な身体、けれど健康的な小麦色の肌。そして、何よりも正義感に溢れる、身分で人を見たりしない真っ直ぐで優しい心・・・・に、気がついたら虜になっていた。
けれど、俺と彼は著しく階級が違う。埋まらない身分の差がある。どんなに、恋焦がれようと彼と結ばれることはない。
だから、せめて執事として貴方のお世話を・・・・生涯させてくださいね。貴方に一生仕えさせて下さい。
俺は、ユーリの着替えを手伝う。食卓椅子に腰掛けたままの彼の背後に立つ。そのまま、彼の身体の前に腕を回し、夜間着のシャツの釦に手をかける。するすると、器用に釦を外していく。
「さぁ、坊ちゃん。そろそろ着替えないとパブリックスクールに遅れてしまいますよ」
「だから、坊ちゃん言うな!おまけに着替えくらいもう自分で出来るよ!」
上目遣いに俺を睨む反抗的な貴方。そんな可愛らしい顔で言っても逆効果ですよ・・・いいかげん、早く気づいてください。
「すみません、ユーリ」
謝りながらも、俺はどんどん彼の服を脱がせていく。シャツの釦を全て外し、素早く上質なシルクのシャツを奪い去る。
すっかり上半身を外気に晒した彼は、肌寒さにふるっと身体を震わせる。すかさずに、俺は彼を背後から抱きしめる。俺の黒の燕尾服越しに、暖かい彼の体温を感じる。彼の髪から甘い香りが仄かに香る。昨夜のシャンプーの残り香でしょうか。 貴方は本当に全部が甘いですね。
「コンラッドっ?」
俺の行動の真意を尋ねたそうなユーリに、言い訳をする。彼の耳元に甘く息を吹きかけながら囁く。
「ほら、貴方が寒そうにしていましたから、暖めて差し上げました。一執事ごときに抱きしめられるのは不快ですか、坊ちゃん」
こんな台詞を吐けば、貴方は嫌とは言えないことを知っているのに、意地悪をして御免ね、ユーリ。
案の定、貴方はただ俺の胸の中にじっと身体を預ける。
「そ、そんな、全然不快じゃないよ・・・コンラッド・・・ただ、なんていうか照れくさいっていうか・・・・えっと・・・その・・・」
頬を真っ赤に染めて、俯く貴方。そんな愛らしい反応をしたら、思わず俺に気があるのかと錯覚しそうになる。
そんな彼に、嗜虐心が煽られた。背後から、彼を抱きしめたまま、にわかに立ち上がらせると夜間着のズボンに手を掛けてそのまま下に摺り降ろす。
俺は、主人の服を剥いで、あっさりと下着姿にしてしまう。
彼は下着姿で頼りなく俺に身を預ける。
「ちょ・・・とっ・・・もう、着替えるのは自分でやるっていってるのにっ・・・」
恥ずかしさに、目に涙を滲ませて、上半身を捻り俺を見上げるユーリ。
気がつくと俺は、片手で彼の腰をきつく抱き寄せながら、彼の顎を強引に掴み上げていた。
「コンラッド?!」
酷く驚いて掠れたユーリの声に我に返った。
!?
俺は、今何をしようとしていた?!
俺の大事な坊ちゃんに。ユーリに。
彼に衝動的に手を出そうとしていた自分にひどく焦る。
よかった・・・・。手を出してしまう前に我に返って。流石に、キスをしてしまってからでは言い訳するのも難しい。俺が、すっかり貴方に夢中なのだと、悟られてしまう所だった。
危なかった。一体、俺は何をやっているんだ。
発作的に彼にキスをしようとした自分に苛立たしい気持ちになる。
この気持ちは、墓場まで持っていくと頑なに誓った筈なのに・・・
この身分違いの恋を表に出してはいけないのに・・・。
執事という身分を盾に、彼に抱きつくことくらいで満足している筈だったのに。それなのに・・・・。
俺の欲望は、もう限界まで溢れてきてしまったのか?
「いいえ・・・。何でもありません。私はあくまで執事ですから。貴方の髪に糸くずがが付いていたので」
彼の髪の毛から、ある筈の無い糸くずを摘む振りをして、優雅な笑顔で取り繕ってみせる。
どうか、貴方にこの気持ちが見透かされませんように。
惚けたような、表情の貴方に出来る限りの優しい微笑みを見せる。
「どうか、執事としていつまでも貴方のお側に仕えさせて下さい」
すっかり、無防備で無垢な笑顔で微笑む貴方。
「うん!俺もずっとコンラッドに側に居て欲しい。だって、あんたって俺が小さい時からずっと・・・辛い時いつも側に居てくれたから・・・。いつでも、優しく抱きしめてくれるから。ずっと・・・俺の側にいて・・・・」
甘えたような鼻に掛かった声で、俺に抱きつく貴方。
俺は、その折れそうな華奢な腰をきつく抱き寄せてキスしてしまいたい衝動を必死に抑え付ける。
ただただ、優しくそっと慈愛に満ちた瞳で微笑み、頭を撫でる。
父親のような執事を完璧に演じる。
「はい、愛らしいご主人様、仰せのままに」
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